伝統都市イデアの生成と変容に関する比較類型的研究


研究グループ発足にあたって

このたび吉田伸之氏の科研とともに、私が研究代表者として申請した「都市イデアの生成と変容に関する空間論的研究」(基盤研究A)が採択され、新たな研究組織「とらっど3」が発足したことは、たいへん喜ばしいことではありますが、むしろわれわれに託された期待の大きさを考えると、身の引き締まる思いを禁じ得ません。吉田科研と緊密な連携をとりつつ、メンバーのみなさまの積極的なご参加を得て、充実した成果を出したいと思います。どうぞよろしくお願いします。

私の申請した科研のテーマは現在企画中の『シリーズ伝統都市』の第1巻「都市イデア」に直接関連したものです。科研申請書には次のように記しました。「都市の建設や改造は、意識的か否かにかかわらず、特定のイデア(公権力の視覚化、宗教的理念、市民的な共同空間理念など)にもとづいて具現される。また構築された都市で時間をかけて形成された空間や社会には複数の都市イデアが積層・共在する。すなわち都市をイデアから読み解くことは、都市に関わる諸権力、時代精神、社会・文化的諸位相を総合的に捉えうる新たな方法を開発することにつながる」。「都市イデア」という語はいまだ十分に熟した言葉ではありませんが、この共同研究を通して、少しずつ堅固なものに鍛え上げていきたいと考えています。

今年度はその第1弾としてフランスを取り上げ、都市イデア論研究をスタートします。具体的には私と加藤玄氏を中心に南西フランスの中世都市バスティードの調査研究を実施します(9/11~9/25)。またメンバーの松本裕氏も渡仏し、近代以降のパリの都市イデア論的研究を進める予定です。ご興味のある方はぜひご参加ください。今年は吉田科研もフランスを対象とした研究が進められることになっており、この点でも有機的な連携がとれるものと期待しています。(伊藤毅)

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