ユダヤ・イスラーム宗教共同体の起源と特性に関する文明史的研究

各研究班の目的

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研究班Aは、古代東地中海におけるユダヤ教、キリスト教、ローマ帝国という3つの組織体の共同体理論を比較考察し、異邦人キリスト教とラビ・ユダヤ教の共同体論形成の歴史的展開をローマ帝国との関係に着目して明らかにする。焦点となるのは3つで、ユダヤ教が啓示法ハラハーの思想を形成するにあたっての宗教的思想的要因の分析、啓示法ミシュナの編纂を促したローマ帝国の役割、ローマがキリスト教化したのちにユダヤ自治を破棄する思想的根拠とキリスト教の共同体論との関係についての考察である。



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研究班Bは、イスラエルのガリラヤ地方にあるテル・レヘシュ遺跡の発掘調査を実施して、西暦1,2世紀のローマ時代の集落がユダヤ人のものか否かを識別することを目指す。当時の古代ユダヤ社会が宗教的戒律を浸透させることで生活様式に変容をもたらしたことが、出土遺物分析によってかなりの程度実証されているため、これまでの当遺跡の出土遺物からもかなりの高い確率で、ユダヤ教徒の集落であるとする見解が有力となっている。今後そのような出土物がさらに出てくれば識別への有力な証拠となることが期待される。発掘を再開するにあたって、場所の選定と作業の進展、これまでの成果報告書の作成が初年度の主たる目標となる。



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研究班Cは、イスラームが啓示法(シャリーア)の宗教として成立するに至る歴史と、先行する一神教の自治を生かす形で庇護民を許容したウンマ理論の形成史との関係を考察して、イスラーム統治下におけるラビ・ユダヤ教とキリスト教諸派を含めた国家・宗教関係の特徴を浮き彫りにすることが課題である。先行するユダヤ啓示法体制がシャリーア体制の成立に果たした歴史的因果関係が実証できるかに期待したい。