「スーフィズム研究動向」第4回研究会報告書

[報告者]東長靖

さる7月4日(土)午後1時〜5時、東京・四谷の上智大学において、表記の研究会が催され、22名の参加者を得て、熱心な討議が行われました。今回もこれまで同様、異なる専門分野と専門地域を持つ研究者の間の共通理解を形成するため、読書会形式で行いました。取り上げられたテキストと発表者は以下の通りです。

  1. Th. Zarcone, "L'Iran," A. Popovic & G. Veinstein(eds.), Les voiesd'Allah, Paris: Fayard, 1996, pp. 309-321.
    山口昭彦さん・東京大学
  2. A. Schleifer, "Sufism in Egypt and the Arab East," S. H. Nasr(ed.), Islamic Spirituality II: Manifestations, New York: Crossroad, 1991,pp.194-205.
    大塚和夫さん・東京都立大学
1に関しては、「サファヴィー朝期を挟んで、3つの時期に分けてイランにおけるスーフィズムの歴史を辿り、主な教団を紹介し、最後にイランにおけるスーフィズムの特徴を指摘」(レジュメより)したもので、要領よく多くのタリーカの情報が盛り込まれていますが、発表者からは
  1. 社会状況との関係の説明が不十分である
  2. サファヴィー教団自身の説明が欠落している
というコメントがありました。その後の議論も活発に行われましたが、本研究会では何度も話題になっている、そもそもスーフィズムとは何なのか、タリーカとは何なのか、といった本質的な問題について、さまざまな意見が述べられました。この問題は、7月20日の全体集会におけるセッションでも、再び取り上げる予定ですが、議論百出で、共通理解はいまだにないのが現状だと、予め申し上げておきたいと思います。
2に関しては、全訳に近い詳細なレジュメが用意され、近現代を中心としたエジプトのスーフィズム像が描かれました。発表者からは、筆者が文中で用いる不用意な用語や概念(たとえばモダニズムやパトロン・セイントなど)が厳しく指摘されました。タイトルと異なり、実際にはほとんどエジプトしかとりあげられず、他のマシュリク地域の考察がほとんど見られないことも問題とされました。この後の議論は、エジプトに固有な問題が多く出されたため、他の地域を専門とする参加者にはやや理解しにくいものとなったきらいがあり、学際的な研究会を運営していくことの難しさが再認識されました。

事務連絡においては、5-a主催の「聖者信仰研究会」との合同研究合宿を昨年度に続いて開催することも確認され、8月末頃が予定されている旨、報告されました。教授クラスから修士の学生までの幅広い世代の参加が、本研究会の活力の源となっていることも申し添えたいと思います。