2-a Sikainga氏研究会

(2班・3班共催、於:国立民族学博物館地域研究企画交流センター、10月14日)

[報告者] アフマド・スィキンジャ (Ahmad Alawad M.Sikaingat)
(オハイオ州立大学歴史学科助教授)
[報告テーマ] "Social Networks and Solidarity among the Railway Workers of Atbara, 1924-1948"
(スーダンの鉄道労働者における社会的ネットワークと連帯:1924〜48年のアトバラのケースから)

 報告の冒頭でスィキンジャ氏は、中東・アフリカにおける労働史研究の重要性を指摘した上で、「労働史=労働組合史」であってはならない、として従来の研究史の欠陥を指摘し、「普通の労働者」の生活に迫り、「労働者」を歴史的・文化的文脈に位置づけ直す作業の必要性を強調した。ついでこのような視点に基づいて、鉄道網の要衝に位置し、20世紀のスーダンの労働運動の中心となってきた「鉄と火の町」アトバラの歴史が具体的に分析され、英植民地行政の戦略、「労働者」と出身農村の絆、労働者クラブや雑誌などを介しての「労働者文化」形成の問題、などの論点が提示された。これに対し参加者からは、中東・アフリカにおける「労働」概念の問題、イスラームの役割、運輸以外のセクターの労働者の状況、スーダンの労働運動とアラブ諸国・アフリカ諸国の労働運動との関係、宗主国における政権交代の影響、国際共産主義運動の路線転換の影響、等の諸点について質問・コメントが寄せられ、活発な討論がおこなわれた。