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2000年度の総括

2000年度の活動 

 


研究会活動


○オスマン文書研究会

 オスマン文書研究会は、来年度の国際会議を視野にいれ、今年度のテーマを「イスラーム法廷文書」に定めて活動を行った。イスラーム法廷は、時代・地域をとわず、イスラーム世界に存在しており、そこで作成された法廷文書は、時代・地域によって様々に変化するイスラーム社会を映し出す鏡となりうるからである。その目的で、「イスラーム法廷制度・法廷文書とイスラーム社会研究」と題したシリーズを設定し、オスマン文書研究会の活動の一環として研究会を開催した。今年度は4回の研究会を実施し、6名(秋葉淳、松田俊道、柳橋博之、清水保尚、三浦徹、Muhammad 'Afifi)が報告を行なった。まず、イスラーム法廷制度と法廷文書の検討という観点からは、マムルーク朝時代のエジプトに関する報告(松田)、オスマン朝時代のエジプトに関する報告('Afifi)が得られた。時代や地域によって、イスラーム法廷制度やイスラーム法廷がどのように変化していくか、といった観点では、イスラーム法廷制度が確立する以前のイスラーム法の解釈と適用について、15世紀頃までのアンダルスやマグリブに関する報告(柳橋)と、16世紀末のオスマン朝のイスラーム法廷が財務行政に果たしていた役割に関する報告(清水)、さらに、19世紀オスマン朝のタンズィマートとよばれる改革で、司法に加えられた改革に関する報告(秋葉)が得られた。同じイスラーム法廷で作成された記録簿の記載内容が時代によって、どのように変化していくか、という興味深いテーマは、三浦報告により扱われた。来年度も引き続き、地域間・時代間のイスラーム法廷文書の比較研究を行い、その機能と変化に焦点をあてていく予定である。

●第1回
(イスラーム法廷制度・法廷文書とイスラーム社会研究シリーズ 第1回)
日時:2000年6月10日(土)
場所:東京大学文学部アネックス会議室
発表者:秋葉淳(東京大学・院)
題目:タンズィマート初期におけるオスマン帝国のシャリーア法廷・カーディー制度の改革
概要:1839年11月からはじまるタンズィマート改革初期の2年半の間に、オスマン朝政府が、シャリーア法廷(イスラーム法廷)とカーディー制度の問題をどう捉え、どう改革しようとしたのかを、さらには、その改革が、主に財政的な理由から1841年4月より修正を余儀なくされていくプロセスが、トルコのオスマン文書局に所蔵される文書によって、たいへん詳しい形で明らかにされた。タンズィマートによる司法改革の主な動機の一つとして、法廷収入の政府による直接管理の意図があったことが、特に強調された。

●第2回
(イスラーム法廷制度・法廷文書とイスラーム社会研究シリーズ 第2回)
日時:2000年7月22日(土)
場所:東京大学文学部アネックス会議室
発表者:松田俊道
題目:マムルーク朝時代の法廷文書
概要:マムルーク朝のイスラーム法廷文書であるシナイ半島のセント・カトリーヌ修道院文書の中で、死を間近にした人、あるいは死去した人の財産処分のために作成された文書の割合が多いことに注目し、法廷文書を用いて、マムルーク朝時代の財産相続の実態が考察された。さらに、当時の叙述史料に記述された理論的な相続手続きと、上の実態が比較検証され、相続のための文書を作成するイスラーム法廷と、財産を処分する財産没収庁の役割について考察された。

●第3回
(九州史学会シンポジウム イスラーム法廷の世界)
(イスラーム法廷制度・法廷文書とイスラーム社会研究シリーズ 第3回)
日時:2000年12月10日
場所:九州大学
発表者と題目:
1.柳橋博之 フィクフとカーディーの法−マーリク派を中心に
2.清水保尚 オスマン朝における財務行政からみた法廷の役割
3.三浦徹 イスラーム法廷と地域社会:裁判官、公証人、住民
概要:本発表は、九州史学会のシンポジウム「イスラーム法廷の世界」として行なわれた。
 まず、柳橋は、クルアーン、スンナ、イジュマーの規定が存在しない、「イジュティハードの対象となる事案(ムジュタハダート)」についての判決は拘束力を有しない、という通説を、アンダルスやマグリブで見られた「裁判慣行(アマル)」を検討することによって、事実は逆であり、判例に拘束力を与えようとする、ないしは判例を統一しようとする試みではなかったか、という可能性を示唆した。これにより、従来の説では、イスラーム法の地域社会への適応、イスラーム法の柔軟性の例とされた、アマルの解釈に疑問をなげかけた。また、カーディーとムフティーの管轄の違いについての示唆もなされた。
 つぎに、清水は、イスラーム法廷で作成された記録簿に記帳された財務関係文書の控えの検討によって、16世紀末というオスマン朝の大混乱時代に、アインターブ周辺のムカーターの請負形態が、どのように変化したかを考察した。特に同じムカーターの徴税権を法的に保証する勅令や勅許状が複数発行され、権利を争う訴訟当事者が再三、イスラーム法廷に出廷し、その度に前の判決が覆るという興味深い事例を紹介した。
 最後に、三浦は、同一のイスラーム法廷の、異なる時期の記録簿の比較検討という、世界でもまだほとんどなされていない試みを行なった。具体的には、ダマスクスのサーリヒーヤ法廷の18世紀と19世紀の記録簿を、記録方法、記録内容、訴訟当事者、代理人、証人、訴訟、社会経済関係、売却、賃貸借の観点から比較した。19世紀の記録簿の方が、対象物件の来歴を詳細に記録する傾向や、「ワキール(法廷代理人)へのみせかけの訴訟」が18世紀の記録簿にはみられない点など、多くの興味深い指摘がなされた。

●第4回
(イスラーム法廷制度・法廷文書とイスラーム社会研究シリーズ 第4回)
日時:2001年1月27日(土)
場所:東京大学文学部アネックス会議室
発表者:Muhammad 'Afifi(カイロ大学文学部)
題目:オスマン朝時代のエジプトにおけるイスラーム法廷の状況への基本的見解−−ワクフ制度への言及もあわせて
概要:アフィーフィー氏の報告は、オスマン朝時代エジプトのイスラーム法廷制度の概観であり、内容も多岐にわたった。例えば、マムルーク朝からオスマン朝へと体制が移行する過程で、エジプトの司法制度がどう変化したか、オスマン朝の下での、司法制度の運営やそれに関わる官吏たち(カーディーや廷吏など)の職務がどうだったかが紹介された。とりわけ、イスラーム法廷を介して行なわれていた、ワクフ運営に関する様々な法的抜け道が、具体的な実例に則して紹介された。報告の後の時間を利用して、カイロの主法廷記録簿(17世紀初頭)の講読も行なわれた。


○ペルシア語文書研究会

ペルシア語文書研究会は3回の研究会(7月1日、10月21日、12月2日)を行った。いずれの研究会でも質の高い報告が得られ、また参加者の間で活発な議論がおこなわれたが、扱う文書の種類がラーホールの宗教施設一覧、イランの商人の遺言状、ジャーミーの自筆書簡集、イラン西部に関するオスマン朝の検地帳と、ややまとまりを欠いた感があるのは否めない。来年度には、どの地域・時代にも共通するタイプの文書を中心に扱うことで、それぞれの地域の文書の書式や内容を比較検討するという当初の目標を達したい。今年度はまた、ペルシア語文書研究会の活動の一環として、ウズベキスタン共和国より東洋学研究所主任研究員のアサーム・ウルンバーエフ氏を迎えて3回(11月28日、29日、 12月1日)にわたって中央アジア関係写本史料研究セミナーを実施した。そこでは、写本史料とともにワクフ文書の読解の手ほどきが行われた。このセミナーには関西、東京、九州から10数名の大学院生、研究者が参加し、好評を博した。
 

●第1回
日時:2000年7月 1 日(土)
場所:東京大学文学部アネックス小会議室
報告者:露口哲也
題目:文書史料の地方史史料的特殊性──19世紀パンジャーブにおけるある文書に基いて
概要: スィク王国期(1799-1849)ラーホールにおいて作成されたこの都市のムスリムの宗教施設の一覧表が材料として取り上げられた。この未公刊かつ十分な紹介もなされていないこの文書は、この都市の当時の行政区分に従って、そこに存在した聖者廟、モスク、スーフィーの修道場、パーインダ(?)が一覧表として纏められたもので、上記王国期末期の作成と目される、極めて珍しい種類のものである。宗教施設に関する統計的データを提供し、ラーホールの都市史研究上、非常に重要な史料であることが確認された。また、文書解読の技術的側面では、ペルシア語で書かれていながら、ヒンディー語、パンジャービー語の術語を含むなど、ラーホール史に関する十分な知識が不可欠であり、地方史史料としての特殊性を持っていることが指摘された。

●第2回
日時:2000年 10月21日(土)
場所:京都大学文学部羽田記念館
報告者:山口昭彦
題目:オスマン検地帳にみる18世紀初頭イラン西部諸地域の都市と農村−−その規模と若干の特徴
概要:オスマン朝が1723年から30年にかけてイラン西部一帯を占領した際に各地で作成した検地帳を利用して、イラン西部地域における集落の規模やその配置に見られる傾向を明らかにした。取り上げられたのはマラーゲ、アルダラーン(コルデスターン)、ハマダーンの三つの地域に関する台帳であった。はじめに史料の由来や書式等について簡単に紹介し、その後、税目・税額から見た集落の特徴、およびそれらの地理的配置に見られる傾向を都市と農村に分けて検討した。その結果、都市に関しては、規模が納税者20人から1500人と幅があること、農業や手工業、および商業からなる経済活動が行われていたこと、大規模な都市は幹線道路沿いにあることが、明らかとなった。一方、農村の規模は納税者1人から400人程度であるが、100人を超える大規模村落は例外的であった。これらの大規模村落は大都市周辺および幹線道路沿いに分布し、手工業や商業など非農業活動が存在したと考えられることが指摘された。

●ペルシア語文書研究会主催 中央アジア関係写本史料講読セミナー
日時:2000年11月28日(火), 29日(水), 12月1日(金)
場所:京都大学文学部羽田記念館
講師:Assam Urunbaev (ウズベキスタン東洋学研究所)
概要:事前に配布された写本および文書を参加者が音読および日本語訳を行い、磯貝健一氏の通訳により、Urunbaevがその訳に講評・解説を加えるという形式で行われた。テキストは第1回および第2回が、Sharaf al-Din Yazdi, Zafar Namaのタシュケント写本、及びロンドン大英図書館写本の第一次ホラズム遠征およびアンカラの戦いの部分、第3回がウルンバーエフ氏将来中央アジア未公開ワクフ文書写真版であった。大学院生から専門研究者まで、関西学院大学、京都大学、京都橘女子大学、甲南大学、神戸大学、帝塚山学院大学等、関西の諸大学の他、九州大学、東京大学等遠隔地からと幅広い参加者を得た。世界的権威によるセミナーにより、中央アジアのペルシア語史料の文体や独特のタームに関する知見がえられたのは大きな収穫であった。

●ペルシア語文書研究会 京都大学文学部羽田記念館共催
日時:2000年12月2日(土)
場所:京都大学文学部羽田記念館
報告1:Christoph Werner(バンベルク大学)
" Merchants' Testaments: Vasiyatnames as a Source on Religious Life in Late
19th Century Iran"
イランのワクフ庁テヘラン支部に所蔵されている未公刊の3通の遺言状に基づき、19世紀後半のタブリーズの3人の商人の宗教生活、および社会経済的背景を明らかにした。従来、これらの遺言状が本格的に分析されたことはなく、また、これらの遺言状以外に、中産階級上部に属すると考えられる商人についての情報を得るすべはない。彼らの遺言状は極めて実際的なものであり、葬儀の費用、5分の1税等の支出すべき金額が書かれている。従来の家族ワクフと非常に近い関係にあることが指摘された。
報告2:Assam Urunbaev (ウズベキスタン東洋学研究所)
「『自筆書簡集(Majmu`a-yi Murasalat)』にみえる各種税制用語─15世紀ホラーサーンの税制におけるそれらの意味について─」(ロシア語、通訳あり)
15世紀の文人ジャーミーの書簡集は、別名ナヴァーイー・アルバムと呼ばれるもので、ティムール朝の宰相アリー・シール・ナヴァーイーが受け取ったジャーミーの自筆の書簡を冊子にして保管したものである。ジャーミーは文学者、思想家として高名であるが、当時のティムール朝の高官の尊敬をもあつめていたため、生活上の問題を抱えた人々に、官僚への取りなし、口利きを依頼される場合が多く、税制に関しても豊富な内容を含んでいる。税の術語をまず、単独の税と税の集合に分類し、さらに単独の税をイスラーム法で認められている正税と認められていない税に分類し、一つ一つの術語に詳細な解説を加えた。



○アラビア語写本研究会

アラビア語写本史料研究会では、昨年度に引き続きヒラール=サービー(1056年没)著『カリフ宮廷の儀礼』を精読し、アラビア語写本史料を扱うための問題点や作品に現れる重要な用語などについて議論を重ね、日本語訳注の作成を進めた。今年度は、活字本の元となったアズハル図書館所蔵写本の写真をエジプト・アラビア語写本研究所から入手することができたため、より詳細に検討することができた。12年度は17回にわたって研究会を催し、活字本77-118頁(写本106-163頁)について検討を進めた。前年度までとあわせて、作品全体の約8割について作業を終えた。また、本研究会が中心となってエジプトよりアイマン・フアード・サイイド氏の招聘し、3回のアラビア語写本セミナーと2回の公開講演会を実施した。いずれも写本の物質としての側面やテキスト以外の文字情報の重要性について理解を深める意義深い機会となった。

●月例研究会

第17回 2000年4月8日 報告者:矢島洋一
第18回 2000年4月23日 報告者:谷口淳一
第19回 2000年5月21日 報告者:清水和裕
第20回 2000年6月4日 報告者:村田靖子
第21回 2000年6月24日 報告者:近藤真美
第22回 2000年7月15日 報告者:矢島洋一
第23回 2000年8月3日 報告者:谷口淳一
第24回 2000年9月3日 報告者:清水和裕
第25回 2000年9月16日 報告者:村田靖子
第26回 2000年10月7日 報告者:近藤真美
第27回 2000年10月29日 報告者:矢島洋一
第28回 2000年11月23日 報告者:谷口淳一
第29回 2000年12月17日 報告者:村田靖子
第30回 2001年1月8日 報告者:清水和裕
第31回 2001年2月3日 報告者:近藤真美
第32回 2001年2月18日 報告者:近藤真美
第33回 2001年3月17日 報告者:矢島洋一

●アラビア語写本史料研究会主催 アラビア語写本講読会
実施日:2000年7月18日(火)、21日(金)、22日(土)
場所:京都大学文学部羽田記念館講演室
講師:Ayman Fu'ad Sayyid(元エジプト国立図書館館長)
概要:アラビア語写本を扱ううえでの問題点が、主として写本学(codicology)の立場から講じられた。1日目は、アラビア文字書体の展開について、『コーラン』の書写に用いられた書体に焦点を当てながら解説がなされた。2日目は『コーラン』写本の変遷が、形態面を中心に論じられた。3日目は写本学の見地からアラビア語写本を構成する物質(材料)ならびに本文以外に書きこまれた情報の2点について詳しい説明がおこなわれた。各回とも講義形式で進められたが、説明終了後に1時間内外にわたる質疑応答がおこなわれた。また写本の実例がスライドとOHPで提示され、そのうち一部は出席者にコピーが配布されていたため、問題点を具体的に理解することができた。参加者は毎回10名以下と少なめであったが、関東や九州からの参加者もあった。特に3日目に扱われた草稿写本や写本上の種々の記録については、活発な質疑と応答が続けられ、参加者の関心の高さがうかがわれた。

●アラビア語写本史料研究会主催「アイマン・フアード・サイイド氏九州講演会」
実施日:2000年7月24日(月)
場所:九州大学箱崎文系キャンパス 文学部大会議室
講演者:Ayman Fu'ad Sayyid(元エジプト国立図書館館長)
題目:イスラーム時代エジプト史の史料
概要:当初は初期イスラーム時代からマムルーク朝時代に至るエジプト史の史料が扱われる予定であったが、時間的な制約からファーティマ朝時代に重点を置いて話が進められた。ファーティマ朝時代を3期に分けたうえで、各時期に著された史料の特徴が王朝史と関連づけて説明された。また、ファーティマ朝下のエジプトで著された書物は多くが散逸してしまったので、後代の著述家による引用を収集して原型を復元するという作業が重要であるという指摘があった。
 講演はアラビア語でおこなわれ、司会の大稔哲也氏(九州大学)が通訳も担当した。オスマン朝時代の研究者やヨーロッパ史研究者などさまざまな分野の専門家が約20名出席し、講演後の質疑応答では「イスラーム時代」にオスマン朝時代以降が含まれていないことに対する疑問や、ファーティマ朝時代の史料の残り方の特徴に関する質問などが提出されるなど、意見の交換が活発におこなわれた。

●アラビア語写本史料研究会主催「アイマン・フアード・サイイド氏東京講演会」
実施日:2000年7月27日(木)
場所:東洋文庫 3階講演室
講演者:Ayman Fu'ad Sayyid(元エジプト国立図書館館長)
題目:アラビア語写本学序説
概要:約20名 の参加者を迎えておこなわれた。アラビア語写本の写本学的研究は文献学的研究に比してたち遅れているということが指摘されたあと、アラビア語写本を構成する物質(材料)および本文以外の文字情報の2点について、実例を示しながら詳しい説明がおこなわれた。講演はアラビア語でおこなわれ、三浦徹氏(御茶の水女子大学)が司会を谷口が通訳を務めた。質疑応答では、質問者の求めに応じて聴講認定書(イジャーザ)に関してさらに詳細な説明がおこなわれたほか、自分が取り組んでいる写本のコピーを持参して質問をする出席者も見られた。



○ムガル史料研究会

ムガル史料研究会では、2回の研究会(4月25日、8月8日)を開催し、露口報告と山根報告を得た。ムガル期のインド史史料にはペルシア語が中心ながら多岐の言語が使用されており、その理解には多角的な共同研究が必要であることが確認された。またムガル朝に関するペルシャ語史料である『アーラムギール・ナーマ』の講読会を週1回のペースで行った。

●ムガル史料研究会 第1回
日時:2000年4月22日
場所:青山学院大学
発表者:露口哲也
題目:『タヘキーカーテ・チシュティー』のムガル史料としての可能性
概要:
  ムガル期のインド史史料は、ペルシャ語のそれを中心としながらも、多岐の言語に亘るものである。本発表は、そのなかで最も重要であると目されるが、19世紀以降歴史叙述が始まるという点、純粋なその史料とは言い難いウルドゥー語史料のこの方面の研究における可能性を巡って、『タヘキーカーテ・チシュティー』を題材に検討したものである。
  『タヘキーカーテ・チシュティー』は、ヌール・アフマド・チシュティーによって1860年代初頭( 初版1867年 )執筆され、インド亜大陸北西部の都市ラーホールの地誌、広義のその地の歴史という実質を備えたものであるが、発表者は、まず、ここでウルドゥー語史料とは何を指すかの理解、その中での当史料の位置付けを得るため、当時著された史料の一般的傾向に光を当て、そこには一つには叙述内容の平易化( ペルシャ語→ウルドゥー語 )、もう一つにはその射程の変化( 全体史→地方史 )が窺えることを指摘した。いわば、これに英領支配の現実を重ね合せれば、19世紀半ばの当言語による歴史叙述の出現の必然性も浮び上がりそうであるが、当史料も一応はそうした趨勢の中に位置づけられるものである。
  次に、発表ではこの書の内容を紹介した。ただ、その特長の一端は章だてから既に明らかであり、序に続いて、1)ヒンドゥー時代、2)イスラーム諸王伝、3)スィク教徒の時代、4)聖者とスーフィー伝、5)タキヤと墓廟の数々、6)マリー(ヒンドゥー教徒の墓標)と非イスラーム僧、7)諸庭園、8)村落の数々と諸建築物……という具合である。しかも、著者の序文にある通り、各々の項目では、例えば墓廟を取り挙げれば、単にそこに眠る人物の伝記に終始しているのみならず、その系譜、系譜上の著名人の紹介、代々のサッジャーダ・ネシーン、出身社会集団、後裔の有無とその詳細、或いは、その施与地及びその詳細、施与に至った経緯やその過去の変遷、または、その収入と支出、その受益者の子細等々と、極めて盛りだくさんで、多彩にして数々の情報に溢れたものである。すなわち、ここでウルドゥー語史料とは、こうした内実のものを指しているのである。
  そこで、こうした史料の評価ということになるが、その同時代性という点では英領期初期のものでありながら、この場合にはラーホールに集中した記述であるが、その点に限り過去に溯って、年代記その他から得られる情報を補って余りあるものがあることが指摘できよう。殊にその集中した情報量から特定地域の過去の再構成には打って付けで、その点では、この方面でのムガル史理解に資する十分な基礎を提供しうるものであるといえよう。また、これは社会史的資料の宝庫であるが、これを適用するにはその時代性の点からもかなりの慎重さが要求される。が、これがかつての社会的営みの現実であれば、極めて有効な史料となり得る可能性を秘めているが、その有効活用には、ムガル史料というものを如何に捉えるか、またこれにあたる我々の姿勢自体が大きく関わるものであるといえよう。

●ムガル史料研究会 第2回
日時:2000年8月8日
場所:青山学院大学
発表者:山根 聡(大阪外国語大学)
題目:ムガル期のウルドゥー語史料について


図書収集

今年度もアラビア語図書、ペルシア語図書、トルコ語図書という中東の主要3言語の図書収集を精力的に行った。アラビア語図書1084点、ペルシア語図書826点、トルコ語図書506点(含むオスマントルコ語図書)を購入し、アラビア語・ペルシア語については昨年の倍以上の購入数となった。トルコ語についても、貴重な『サルナーメ(年報)』類も含め、昨年以上の成果をみた。また、中央アジア諸語はバシキール語、タタール語、カラカルパク語、カザフ語、ウズベク語など多様な言語による図書148点を購入した。

こうした収集は、従来通り、現地滞在中の研究者の協力をえて実施した一方、インターネットも積極的に利用した。近年のインターネット・ビジネス普及により、従来型の書店が扱わなかったような図書(そこには中東・中央アジア・中国などの現地出版図書も含まれる)を専門に扱うサイバー書店が出現している。今年度、6班では、試験的にこうした書店からの購入も行い、価格や納入時期の点でその有用性を確認した。今後の問題は品揃えであろうが、インターネット上の店舗数の増加によりそれも解消されよう。

CD-ROM 等新しい媒体での「出版物」の購入も積極的に行った。例えばペルシア語のCD版『ナマーイェ(索引)』はイラン国内で出版された学術雑誌・新聞・文化科学関係出版物の全タイトルを収録したもの。今年度はイラン暦1378年(199/3〜2000/3)分を試験的に購入した。来年度は、継続的・遡及的に購入を続ける予定である。

以上の収書活動に加えて、今年度は中国回族関係文献という貴重なコレクションもえることができた。これは、5班で活動中の「回儒の著作研究会」と協力して中国雲南省においてイスラーム関連の古籍の残存状態に関する現地調査を実施したもので、同時に同地におけるイスラーム関連史料収集を行った。この結果、古籍を撮影したデジタルデータの他、125点の貴重なイスラーム関係中国語資料が収集された。

収集された図書の整理・データベース化は迅速に行われており、図書の検索はWeb上で可能になっている。蔵書数の増加にともない、東洋文庫内の新プロ閲覧室は2室に増やされた。この開架閲覧室では、収集図書の自由な利用が可能である。

主な収集図書について

●アラビア語図書資料の収集
今年度は、レバノン、シリア、エジプトで収集を行った。アラビア語出版の中心地で、近年、史料の校訂出版が盛んなベイルートにおいて、元好朗子氏(米国インデイアナ大学大学院、在レバノン日本大使館専門調査員)の協力を得て、歴史・文学関係の史料と研究書を中心に大規模な収集を行った。また、エジプトでは、中町信孝氏(東京大学大学院後期博士課程、エジプト留学中)の協力により、サウジアラビアの出版物を中心に収集した。シリアでは99年度に続いて三浦徹氏(5班)が新刊を中心に補充の収集を行った。収集総点数は1084点。一部例示すると、クトゥブ・アルディーン・ムハンマド『メディナの歴史』、アーリフ・エフェンディ・ラマダーン訳『オスマン朝法令集』、マフムード・アルアルナウート『アルバニアのアラブ文書』、ムハンマド・アリー・アルサーイス『イスラーム法学の歴史』、イブン・アブー・ヤアラー・アルファッラー『ハンバル派人名録』、アル・ラーズィー『サナアの歴史』、イブン・イスハーク『預言者伝』、『ヒジュラ暦3世紀末までのアンダルスのマーリク学派』、『11世紀末から12世紀末までのダマスカスとエルサレム・ラテン王国』など。

●ペルシア語図書資料の収集
イラン滞在中の八尾師誠氏(東京外国語大学)と深見和子氏(東洋文庫非常勤職員)の協力をえて収集を行った。アリー・フォルーヒー他『ギーラーンのアルメニア人』、イーラジ・アフシャール・スィースターニー『イラン諸都市の名称における研究』、プーラーン・ファッロフザード『イランと世界の文化人女性百科事典』、アボルハサン・ナジャフィー『民衆ペルシア語辞典』、パルヴィーズ・アフシャーリー『ガージャール朝の宰相たち』など全826点。加えて『ナマーイェ(索引)』をはじめCD-ROM形式での出版物の収集も行った。

●トルコ語図書資料の収集
高松洋一氏(6班研究協力者)の選書により、現代トルコ語の新刊書を中心に購入した。メフメト・オズ『15-16世紀のジャニク県』、ジヤー・ウイグル『オスマン朝古文書にみるパレスチナ問題とシオニズム』、フセイン・オズデエル『16世紀の記録に見るアンテプの社会経済状況』、オスマン・ハムディ『1873年当時のトルコの民族衣装』、アイテン・セゼル『アタチュルク時代における外国人学校(1923-1938)』など。昨年度までに購入した雑誌の欠号なども今年度補充された。また、オスマン・トルコ語の出版物としては、19世紀オスマン朝で刊行された年報(サルナーメ)類が若干、補充された。トルコ語図書の購入総数は506点。

●中央アジア諸語資料の収集
従来、中央アジア諸語資料は、現地の出版状況の把握や郵送・送金に問題が多く、その収集が難しい分野であったが、サイバー書店の出現により状況はかなり改善された。バシキール語の『バシュコルト文章語の歴史』、トガン『予言と思うなかれ(書簡、アピール、演説)』;タタール語のヴァリエフ『トカイの魂』、ガズィゾフ編『イスラームの基本』、マルセル・ガリエフ『著作集』4巻本、ベドゥレッディノフ『世界で唯一のサトゥムシュ村』、ダウレトシン『テュルク・タタールの宗教文化史』;カラカルパク語の『カラカルパク語詳解辞典』4巻本;カザフ語のアウルバエフ『命の河』、アフメトフ、シャグバエフ共著『文学を知る(述語辞典)』、エレウケノフ 『カザフ書籍史』、ジャルムハメドウル『コジャ・アフメト・ヤサヴィーとトルキスタン』、スマグルウル、コジャエフ、オワザククズ共著『アブライ・ハン』、『カザフ語方言辞典』2巻本;ウズベク語のファイズィエフ『ティムール家の系譜』、『ティムールの建築遺産』、『シハービッディーン・ムハンマド・アンナサヴィー、スルタン・ジャラールッディーン・マングベルディ』、ラッザーコフ『ウズベキスタンの綿花栽培史』、トゥルスノフ、ウルンバエフ、アリエフ共著『ウズベク文章語の歴史』、ニェマトフ、ラスーロフ『ウズベク語体系語彙論論集』など、全148点が今年度購入さらた。

●中国ムスリム関係文献資料
 新彊ウイグル自治区のウイグル語出版物については、同地に滞在された梅村坦氏(中央大学)の協力で141点がもたらされた。中国語のイスラーム関係資料は、資料収集に派遣した黒岩高氏らの努力で貴重な125点がもたらされた。一部をあげると、『阿拉伯書法芸術賞析』、『聖訓経』、『中文択解古蘭経』、『古蘭経分類全編』、『布哈里聖訓精華』、『中国回族典籍叢書』、『伊斯蘭勧善故事経』、『伊斯蘭経信仰問答』、『蘭州回族與伊斯蘭教(第九輯)』、『至聖遺属注釈』など。(詳細は、6班WebPage 派遣報告参照)

 

コンピュータ利用


インターネット利用:アラビア文字文献総合データベース計画


6班では、東洋文庫所蔵のアラビア語、ペルシア語、オスマン・トルコ語、ウイグル語などアラビア文字系図書について、オリジナル・スクリプトを用いた所蔵データベースの構築に取り組んできたが、それぞれほぼ完成し、平成12年度7月には東洋文庫所蔵アラビア語・ペルシア語図書データベースのWeb 上での公開に至った。

http://www.l.u-tokyo.ac.jp/IAS/6-han/bs/Arabic(Mac)2.html 
http://www.l.u-tokyo.ac.jp/IAS/6-han/bs/Arabic(Win).html)

これは、利用者側のコンピュータがMacintosh かWindows であるかを問わず検索可能なシステムで、アラビア文字を直接入力して図書検索ができるという点で世界的にみても画期的な検索システムである。同じく、アラビア文字を用いるオスマン・トルコ語の蔵書カタログについても、2001年3月に公開予定である。

このように、アラビア文字を用いる蔵書検索システムそのものは、技術的には、今年度、完成をみたといえる。今後の課題は、この技術を利用して、複数の機関に所蔵されているアラビア文字文献の総合データベースを構築すること、そして、最終的には全国の図書館に散在するアラビア文字文献のユニオンカタログを作成することである。このアラビア文字総合データベース計画は、今年度、具体的な一歩を踏み出した。

総合データベースの構築にあたっては、ふたつのデータ蓄積方法が用いられる。第一は、6班(東洋文庫)で開発されたアプリケーション・ソフトをもちいて、直接にデータを蓄積する方法である。すでに参加機関間でデータは共有されており、新規入力に際しては他機関に所蔵されていない図書のデータのみを入力する形をとる。これにより入力の手間は大幅に削減される。今年度は、東京大学東洋文化研究所のアラビア語・ペルシア語図書、および、東京外国語大学のペルシア語図書についてこの方法での入力作業がすすめられた。3機関のデータを統合した「総合データベース」は今年度中に公開予定である。

第二の方法は、国立情報学研究所の「国立大学等図書館総合目録(NACSIS-CAT)」上に蓄積されているアラビア語やペルシア語図書のローマ字転写データを「再利用」し、アラビア文字文献総合データベースに加える方法である。NACSIS-CATのローマ字転写は米国議会図書館方式に統一されているが、この転写はオリジナルのアラビア文字と必ずしも1対1に対応するものではない。しかし、特殊な変換プログラムを用いれば自動変換は不可能ではない。6班ではアラビア語言語学の研究者の協力を得てこの変換プログラムの開発にあたり、実用可能な変換プログラムをほぼ完成させた。現在は国立情報学研究所からローマ字転写データの提供をうけ、実験を重ねているところである。

こうした進展をうけ、平成13年2月9日に第二回アラビア文字総合データベース連絡会を開催した。参加機関は東洋文庫、東京大学、京都大学、東京外国語大学、大阪外国語大学、上智大学、アジア経済研究所、国立情報学研究所など。アラビア文字文献総合データベース計画への参加希望機関は、それぞれの機関の事情に応じて第一ないしは第二の方法を選択することが可能であることが確認された。今後に向けての議論では、NACSIS-CAT の多言語化の方針へ質問が集中した。国立情報学研究所のNACSIS-CATは、すでにUCSコード(国際符号化文字集合:Universal multiple-octet coded Character Set)への対応を開始しており、キリル文字や中国語簡体字の利用が可能になっている。さらにアラビア文字対応も技術的には可能といわれるが、具体的なめどはたっていない。連絡会では、NACSIS-CAT におけるアラビア文字の扱い方がどうあることが望まれるか、研究者サイド・図書館サイドの意見を取りいれて検討し、NACSIS-CATとアラビア文字文献総合データベースの連動を視野に入れて活動を進めていく必要があるという点で意見の一致をみた。その実施にむけて13年3月より6班と国立情報学研究所では、アラビア文字対応ワーキンググループの活動を開始させることになった。このワーキンググループにはアラビア文字文献の所蔵数の多い機関にも加わっていただき、方向性を定める努力を行っていきたい。
 


派遣・招聘研究者

●「雲南省のイスラーム関連資料調査・収集」派遣隊

→ 出張報告書

派遣:黒岩高(東京大学・院)・佐藤実(京都大学非常勤研究員)
目的:雲南省のイスラーム関連資料調査・収集
期間:2000年8月20日〜9月25日
活動:
8月20日 上海着
8月21日 上海図書館及び小桃園清真寺を訪問、清真寺内にて古老四名と会談。
8月22日 浦東清真寺、滬西清真寺を訪問。浦東清真寺においては、主任(マスジドの管理)楊氏および教長(教育担当、アホン)郭氏と上海市浦東地区の回族の概況とイスラーム関連文献の所蔵状況について会談。礼拝堂及び書庫参観。滬西清真寺においては白潤生教長(上海伊斯蘭教会会長)と会談し、雑誌『上海穆斯林』1・2号の寄贈を受ける。書庫を閲覧。清真寺内の宗教道具店にて書籍購入。
8月23日 昆明着。宿舎(雲南大学招待所)にて待機。順城街にて書籍購入。
8月24日 現地協力者と会談、日程調整。順城街清真寺、南城清真寺、永寧清真寺を訪問。順城街において書籍購入。
8月25日 雲南大学図書館において文献所蔵調査
8月26日 現地協力者の案内により、通海県の各清真寺、納家営清真寺着、古城清真寺、古城新寺(ジャフリーヤ)参観。古城清真寺にて文献撮影。現地の古老と会談。
8月27日 データ入力、整理。宿舎にて古籍撮影
8月28日 雲南大学図書館にて雑誌閲覧。宿舎にて古籍撮影。
8月29日 宿舎にてイスラーム関連古籍撮影。
8月30日 データ入力・画像整理
8月31日 通海県再訪。納家営清真寺前宗教道具店にて書籍購入。古城新寺にて現地の古老と会談、文献撮影。
9月1日 河西県大回村訪問、文献撮影。順城街にて書籍購入。
9月2日 南京着、三山街清真寺(浄覚寺)参観。三山街清真寺内宗教道具店にて書籍購入。
9月3日 劉智墓参観、太平路清真寺参観
9月4日 南京図書館古籍部にて文献閲覧。清涼山 訪問。
9月5日 上海着
9月6日 データ入力・画像整理
9月7日 松江清真寺参観。データ入力・画像整理。
9月8日 帰国
概要:
本出張は、イスラーム地域研究6班および5班の研究活動の一環として行われた。主な目的は、購入可能なイスラーム関連図書の収集および中国ムスリム知識人関連古籍の所蔵状況に関する調査・複写である。参加人員としては、6班の派遣による黒岩高(東京大学大学院博士課程)、佐藤実(京都大学非常勤研究員)のほか、任意随行者として仁子寿晴(日本学術振興会特別研究員)と安藤潤一郎(東京大学大学院博士課程)が参加した。収集及び調査活動の対象とした地域については、雲南省(昆明市・通海県)を中心としたが、旅程途上に在する上海市、南京市においても簡単な活動を行った。なお、雲南省での活動については雲南大学が受入先となった。ついては、活動受入に尽力いただいた高発元氏(雲南大学党委員会書記)、現地協力者として様々な便宜を図って下さった馬利章氏(雲南大学外国語学院アラビア語研究室主任)、肖芒女史(雲南大学機関紙『思想戦線』編集員)に心より感謝の意を表したい。以下に、購入可能だったイスラーム関連図書について報告する。
 現在の中華人民共和国における出版状況と郵便事情については、1997年に派遣された梅村隊の簡潔な報告があり(6班Web Page 参照)、今回の派遣の際にもこれらの状況について大きく変わった点は認められなかった。そこで、ここでは重複を避けイスラーム関連図書を購入することのできる箇所につき、今回訪問した限りにおいて紹介する。
 上海・昆明・南京等の各都市においては通常の書店においてイスラーム関連図書を購入できることはきわめて稀であろう。今回の出張においても、念のため比較的大規模な書店・古書店を訪ねてみたが、はかばかしい成果は得られなかった。それゆえ、清真寺付設、あるいは付近の宗教道具店を探し当てることがこれらの都市でイスラーム関連図書を購入する近道であるように思われる。
 まず、上海については小桃園清真寺、浦東清真寺、滬西清真寺の三箇所の清真寺を訪問した。上海には大規模な回族街がないためか、前二者の清真寺に付設の宗教道具店にはあまり多くの書籍を置いておらず、唯一、滬西清真寺付設の宗教道具店のみがまとまった数の書籍を販売していた。
 次に、昆明市においては、南城清真寺、永寧清真寺、順城街清真寺の三箇所の清真寺を訪問したが、前二者については付近には宗教道具店は開かれていない。一方、順城街清真寺はかなり大規模な回族街に面していることもあり、計4箇所(清真寺内1・外3)のうち3箇所の宗教道具店がまとまった数の書籍を販売している。また、梅村氏によって紹介されているように出版社における書籍の入手は困難であるのが通例である。しかし、昆明市内にある雲南民族出版社購買部には当出版社の出版したものに限らず、民族・宗教関係、地方志、民族関係の雑誌のバックナンバーが豊富にあり、一見の価値がある。南京では参観した太平路清真寺、三山街清真寺(浄覚寺)のいずれの清真寺にも宗教道具店が付設されていた。だだし、書籍の数は非常に限られている。
 なお、購入された書籍のリストおよび、本調査のもう一つの目的であった「中国ムスリム知識人関連古籍の所蔵状況」についての詳細な報告は、6班WebPage において公開されているので、参照いただきたい。
 

●Assam Urunbaev
所属:ウズベキスタン共和国科学アカデミー東洋学研究所主任研究員
期間:2000年11月25日〜12月8日
活動:
11月28日 第1回「中央アジア関係写本講読セミナー」講師(於:京都大学)
11月29日 第2回「中央アジア関係写本講読セミナー」講師(於:京都大学)

12月1日  第3回「中央アジア関係写本講読セミナー」講師(於:京都大学)
12月2日 研究会にて「『自筆書簡集(Majmu`a-yi Murasalat)』にみえる各
種税制用語─15世紀ホラーサーンの税制におけるそれらの意味について─」と題する報告(於:京都大学羽田記念館)
12月7日 東洋文庫を訪問。6班収集のペルシア語および中央アジア関係文献
を見学。東洋文庫講演会にて「『自筆書簡集(Majmu`a-yi Murasalat)』にみえる各種税制用語─15世紀ホラーサーンの税制におけるそれらの意味について─」と題する報告

●Ayman Fu'ad Sayyid
所属:元エジプト国立図書館館長(Mudir li-l-Dar)
期間:2000年7月17日〜29日
活動:7月18日 第1回「アラビア語写本講読会 」講師(於:京都大学)
   7月21日 第2回「アラビア語写本講読会 」講師(於:京都大学)
   7月22日 第3回「アラビア語写本講読会 」講師 於:京都大学)
   7月24日 講演「イスラーム時代エジプト史の史料」(於:九州大学)
   7月27日 講演「アラビア語写本学序説」(於:東洋文庫)