文化資源学研究専攻の概要

文化資源学とは?

文化資源学は、2000年春に生まれたばかりの新しい研究専攻です。大学院のみで、学部に対応する専修課程を持ちません。文化経営学、形態資料学、文字資料学の3コースから成り、文字資料学コースはさらに文書学、文献学の専門分野に分かれます。

コース
専門分野
課程
文化経営学コース 文化経営学専門分野 修士・博士
形態資料学コース 形態資料学専門分野 修士・博士
文字資料学コース 文書学専門分野 修士・博士
文献学専門分野 修士・博士

この構成は、つぎのように発想されました。われわれの前には、あるいは過去には、「形態=かたち」と「文字=ことば」の膨大な蓄積があります。それらがつくりだす文化は、社会との関係をつねに変えてきました。この関係を研究し、これからのより望ましい在り方を求めることが「経営学」にほかなりません。「かたち」と「ことば」の文化に通じて、はじめて「文化経営」が成り立つという発想です。決して、はじめに「文化経営」ありきではありません。

形態=かたち」を対象とする既成の学問分野としては、本研究科では美術史学と考古学がありますが、おそらく、そこからは無数の「かたち」が追いやられているはずです。写真、映画、テレビ、漫画などの視覚文化はもちろん、人間の身体がつくりだすさまざまな芸能をも、ここでは視野に入れようとしています。

文書は書かれた「ことば」、文献は書物になった「ことば」であり、多くの人文社会系の学問は、もっぱらそれらの「ことば」を相手にしてきました。しかし、学問の進展は領域の細分化をもたらし、また、情報伝達技術の発達は、「ことば」とそれを伝えるメディアとの関係を希薄なものに変えました。

たとえば筆で記された写本、木版技術を用いた和本、活版印刷による洋本、今日開発の進む電子本、という具合にメディアが変わっても、『源氏物語』は『源氏物語』、『神曲』は『神曲』、テキストは同一だと見なされがちですが、実は、「ことば」はそれを伝える「かたち」に強く縛られています。いわば「ことば」の物質的側面に目を向けようと考えています。

文化資源学 Cultural Resources Studies」は、こうしたさまざまな「ことば」と「かたち」を手掛かりに、文化の根源に立ち返って見直そうとする姿勢から生まれました。多様な観点から新たな情報を取り出し、社会に還元する方法を研究しようとするものです。根源の対極に現実があり、具体的には、博物館、美術館、図書館、資料館、史料館、文書館、劇場、音楽ホール、文化政策、文化行政、文化財保護行政などの過去・現在・未来を考えることも、ここでの重要な課題です。


特色1〜さまざまな連携

こうした目的を達成するために、文化資源学研究室はふたつの特色を持ちます。ひとつは、文化資源学の領域横断的な性格を反映させて、人文社会系研究科の他の研究室とゆるやかにつながっていることです。現在は、考古学、美術史学、美学、国文学、中国文学、フランス文学、西洋古典学、日本史学などの多彩な研究者が参加しています。

さらには、学内外のさまざまな研究機関とも連携しています。学内機関としては史料編纂所総合研究博物館東洋文化研究所と連携し、教育にあたっています。とくに史料編纂所は2004年度より協力講座「史料解析学」を設けて、編纂所教員3人がそれぞれ文化資源学研究室で開講しています。学外機関としては国立西洋美術館国立国文学研究資料館と協力関係にあり、インターンシップなどの実践的教育を行っています。

特色2〜開かれた研究室

もうひとつの特色は、社会人・外国人に対して大きく門戸を開いていることです。それは、大学を社会に向かって開こうとする意志表示にほかなりません。募集人員の半数が社会人ですから、結果として、国籍・年齢・職業・キャリアなどが多種多様な構成員による研究室が実現しています。社会人学生には図書館や美術館や劇場などの文化施設を職場としている者があり、それらは単なる学生の所属先にとどまらず、研究室を含めた相互の関係がインターネットのように築かれつつあります。高校から学生を受け入れ、社会へ送り出すという大学のこれまでの常識的な役割が、ここではまったく通用しません。社会人が大学に逆流し(リカレント教育)、反対に、学生が在学中から社会の現場に出る(インターンシップ)という仕組みを積極的に構築していきます。社会人のみなさんへ