ケア・支援の社会学、医療社会学、福祉社会学などを専門とする(なお、私の研究分野を含む、この領域の導入的教科書の一つとして共編著『よくわかる福祉社会学』がある)。研究の出発点として、家族介護を中心に、介護・ケアという行為の特性と、それに対する社会的支援のあり方を、インタビュー調査などの質的方法を通じて明らかにすることに取り組んできた。

 その後、特に認知症(dementia)という現象に注目するようになり、現在は、介護・ケアという活動領域を含みつつ、それを超えた認知症の排除や包摂の問題、病いや障害の語り、当事者との共同の有り様、認知症概念の日常生活への効果などの課題に取り組んでいる。以上の研究プロセスについては、二つの単著『認知症社会の希望はいかにひらかれるのか』(2020年)、『認知症家族介護を生きる』(2007年)を参照して欲しい。また、ケア・介護研究を足場に、より実践志向の強い社会政策・社会福祉や看護学の研究者、血友病・薬害HIVの当事者などとの共同研究にも取り組んできた(その成果の一つに共著の『被災経験の聴きとりから考える』)。

 そうした研究の中での社会学のスタンスや発信のあり方を考えていくことも課題としている。演習では、現場の具体的な課題と社会学理論や方法との接点を考えることを中心に、文献講読や各自の具体的テーマの探求を行う。

井口 高志(いぐち たかし)准教授