13  中国思想文化学

1.研究室の活動の概要
 中国思想文化学専修課程の学科としての淵源は,明治10年の本学の創立時にまでさかのぼることができる。専修課程としては,当初の「支那哲学」から,「中国哲学」,「中国思想文化学」と二度の名称変更を経て現在に至っている。講座については,平成6年の文学部制度改革にともなって,教授3名,助教授2名,助手1名の定員から構成される「中国思想文化学」大講座となった。平成7年に大学院が部局化されると,「アジア文化研究」専攻「東アジア」コース「思想文化」専門分野に移行した。
 研究の分野は,中国の殷周時代~中華人民共和国に至る思想史で,方法的には哲学・哲学史的研究だけでなく,社会史を背景にした思想史的研究,中国文化と他文化との比較文化論的研究,など多岐にわたっている。平成19年度の教員は,教授3名,准教授2名、助教1名であり、他に非常勤講師を3名委嘱した。大学院は,基幹講座としての文学部の本大講座と,協力講座としての東洋文化研究所東アジア大部門の思想・宗教分野とからなり,他に教養学部などから若干名の教員の協力を仰いでいる。平成4年度より毎年2名のティーチング・アシスタントを大学院生から募り,学部学生の手ほどきをしてもらっている。なお,助手(平成19年度より助教、以下同じ)1名体制にともない,平成8年度からは嘱託1名を委嘱している。
 外国人研究員については,毎年数名を受け入れている。留学生も積極的に受け入れており,現在,東アジアを中心に3名(博士課程3名,修士課程0名)が在籍,テューター制度もうまく噛みあって学生間の国際交流が盛んである。日本人大学院生は,博士課程進学後に大部分の者が海外に留学する。平成19年度後期の時点では,中華人民共和国へ1名が留学中である。また,博士課程在籍中に学術振興会特別研究員に選抜される事例も多い。大学院在籍中に博士論文を提出する者が,近年は毎年2-3名いる。
 研究室全体で支えている学会として中国社会文化学会があり,中国語中国文学・東洋史学・教養学部などの教員とともに役員として運営に参加している。また,大学院生を中心に「中国哲学研究会」(昭和48年~)が組織されて月例会を開いてきたが,平成2年より『中国哲学研究』を発行して助手・大学院生の研究発表の場としている。
 本研究室では,漢籍の語句用例検索ソフト導入など,従来から研究・教育活動におけるコンピュータの利用を積極的に図ってきた。平成12年以降では四庫全書や古今図書集成他のCD-ROMを購入して活用している。その後も各種媒体の導入やコンピュータネットワークの構築等を通じて,中国学電脳化の環境整備を進めている。


2.構成員・専門分野
 (1)専任教員
     佐藤愼一 教授 東アジア思想文化専門分野 (近代中国思想史)
     川原秀城 教授  同           (東アジア思想史・中国朝鮮科学史)
     張 啓雄 教授  同           (東アジア近現代国際関係論)※2007年度のみ
     小島 毅 准教授 同           (儒教史・東アジア王権論)
     横手 裕 准教授 同           (道教史・中国三教交渉史)

 (2)助手・外国人教師等の活動
  助手
 安大玉
  在職期間 2003年4月~2007年3月
  研究領域 東アジア科学史
  主要業績
   (学会発表)「アストロラーブの東伝と朝鮮の簡平渾蓋日晷」、前近代における東アジア三国の文化交流と表象、国際日本文化研究センター、2006年10月
         「17 世紀西洋実用幾何学の東伝と徐光啓の数学観」、第17回アジア数学史セミナー、東京大学数理研、2006年11月
         「明末におけるユークリッド『原論』の漢訳について」、第19回アジア数学史セミナー、東京大学数理研、2007年2月

  助教
 水口拓寿
  在職期間 2007年4月~現在
  研究領域 東アジア科学史
  主要業績
     (単著)『風水思想を儒学する』、風響社、2007年11月
     (共編)小島毅・水口拓寿編『宋史禮志二譯注』、科研「王権理論班」(課題番号17083004)刊、2007年7月
     (共訳注)長谷部英一等6名『朱震亨『格致餘論』全訳注』、朱震亨読書会刊、2007年9月
     (口頭発表)「風水はなぜ迷信視されたか-中国の場合」、明治大学古代学研究所公開シンポジウム「東アジアの風水思想」、2007年10月

  外国人教師等
  該当者なし

3.卒業論文等題目
 (1) 卒業論文題目
   2006年度
   「王安石の経済倫理思想-学統及び正統性の検証-」
   「張介賓の脾胃論にみられる医易思想について」
   「『魏書』霊徴志について」
   「現代中国語におけるアスペクト動詞”過guo”の意味、機能について-”過guo1”、”過guo2”の各用法と”了le”との比較を通して-」
   「『神』および『入神』をめぐって-王安石・張載・朱熹-」
   「インターネットに見る中国古典の浸透について」
   2007年度
   「『孝経』における死生観」

 (2) 修士論文題目一覧
   2006年度
    近藤愛「『*〔生+目〕自命出』の研究」
    <指導教員>中島隆博
    朴尚輝「近代朝鮮における『自主』の概念-金允植を中心として-」
    <指導教員>佐藤慎一
    田中有紀「宋代雅楽の思想的研究」
    <指導教員>川原秀城
    黄崇修「中国鬱病史の研究-朱丹渓学派の鬱説を中心として-」
    <指導教員>川原秀城

   2007年度
    松浦由美「近世日本の『異姓不養』論について-『理』と『気』の対立に関する考察を中心に-」
    <指導教員>小島毅

 (3) 博士論文題目一覧
   2006年度
    井ノ口哲也「後漢経学研究序説」
    <主査>川原秀城<副査>小島毅・横手裕・林克・李承律
    安大玉「『天学初函』器編の研究」
    <主査>川原秀城<副査>岡本サエ・古川麒一郎・長谷部英一・陳捷
    辛炫承「劉宗周の学問世界とその周縁-劉宗周思想と明末江南知識人たちの交流を中心に-」
    <主査>小島毅<副査>川原秀城・横手裕・岸本美緒・馬渕昌也

   2007年度
    石井剛「『戴震の哲学』をめぐる思想史-劉師培と章炳麟を中心に-」
    <主査>川原秀城<副査>佐藤慎一・小島毅・村田雄二郎・中島隆博




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