06  宗教学・宗教史学

1 研究室活動概要
 本専修課程(宗教学研究室)における研究は宗教についての経験科学的研究であり、現在の研究活動は、教授3、准教授1、助教1、計5名の教員を中心として行われている。研究分野としては、世界宗教史、日本宗教史、宗教思想史(中近世および近現代ヨーロッパ、古代イスラエル・オリエント、近現代日本)、宗教調査(現代日本の諸宗教、宗教民俗)、などをカバーしている。方法論的には、宗教現象学、宗教社会学、宗教民俗学、宗教人類学、宗教史学などである(詳しくは、教授・准教授については本書第III部を、助教については後述を参照のこと)。また毎年数名の非常勤講師を迎えることにより、欠けている分野を補っている。
 本専修課程では助教と院生の協力により毎年『宗教学年報』を刊行している。これには毎号教員、院生、研究室OBなどの研究論文・書評・研究ノートなどが掲載される。併せて『年報別冊』も刊行されるが、これは本研究室の同窓会(本専修課程創設時の主任教授、姉崎正治教授の雅号により嘲風会と称する)誌的な性格をもち、OB(留学生を含む)の随想や近況を伝えるもの、また研究室の現況報告、修士論文の要旨、卒業題目一覧などが常時載せられて研究室とOBとの交流が実現している。また嘲風会は年に2回、学術大会時と年末に開催されるほか、随時講演会や研究会を持つことがある。
 このほか、駒場からの進学者、大学院新入生の歓迎と研究室内の親睦を兼ねて、東京近隣の宗教施設の見学を含む一泊二日の研究室旅行が恒例となっている。
 本専修課程の最近の傾向として、駒場からの進学者が比較的多いこと(2005年度13名、2006年度19名)と外国からの留学生と外国への留学生が多くなっていること(2007年現在では、それぞれ6名と2名)、などの点もあげられる。これらの傾向は、研究室の活性化、また宗教研究の活性化や国際化のためには喜ばしいことである。

2 構成員・専門分野
 (1) 2006-2007年度の在職者と専門分野
 島薗 進:近代日本宗教史・宗教理論研究・比較宗教運動論(1987年4月〜)
 鶴岡 賀雄:西洋神秘思想、近現代宗教思想(1998年4月〜)
 市川 裕:一神教の世界宗教史、ユダヤ教、ヘブライ語(1991年4月〜)
 池澤 優:中国宗教研究・祖先崇拝・生命倫理(1995年4月〜)
 村上 興匡:近現代日本の宗教習俗(1997年4月〜2007年3月)
 高橋 原:ユング心理学・近代日本の知識人宗教(2007年4月〜)
 (2) 2006-2007年度の助手・助教の活動
 村上 興匡(2006年度):
 「都市葬祭業の展開と葬儀意識の変化」『東京大学宗教学年報』23号。
 「本土復帰と沖縄葬墓制の変容 : 那覇周辺地域における墓地の現状(現代沖縄の死者慣行にみる「本土化」と「沖縄化」日本宗教学会第65回大会パネル発表

 高橋 原:(2007年4月〜):  「神話としての『ゲド戦記』―傷と竜と全体性―」『神話と現代』、リトン。
 「東京大学宗教学科の歴史―戦前を中心に」『季刊日本思想史』72号。
 「近代の肖像―危機を拓く 姉崎正治(1)-(3)」『中外日報』27017, 27019, 27020号。

 (3) 2006-2007年度の外国人教師の活動
 なし
 (4) 2006-2007年度に受け入れた内地研究員・外国人研究員

 佐藤憲昭
 兵頭晶子
 金鍾瑞
 尹鍾甲
 池映任
 ジェフ・グレーブス
 ジョシュア・イリザリ
 マルコ・ゴッタルド


3 卒業論文等題目
 (1) 卒業論文題目
 2006年度
 「オタクと宗教の関係性」
 「疑似科学と宗教」
 「日本人の遺体観」
 「宗教になれなかった哲学としてのショーペンハウアー哲学」
 「禅問答(笑)に関する一考察―無意味なコミュニケーションの手段性と目的性―」
 「ヴィジュアル系と宗教性」
 「心、カネ、そして信じるもの―現代資本主義に対する宗教心理学的分析―」
 「システムとしての人神祭祀」
 「人間という機械、機械という人間」
 「宗教と預言」
 「現代日本における自殺と自殺予防」
 「興隆するイスラーム無利子金融の理想と現実」
 「出羽三山の山伏修業体験塾にみる『修業ブーム』」
 2007年度
 「よしもとばなな作品における「宗教性」」
 「近年のブームとしての「スピリチュアル」に関する考察」
 「便宜的信従に覗く、近世末期の普遍性―政治的普遍性と宗教的普遍性―」
 「さびしい自殺―後期漱石作品における死生観」
 「「新しい歴史教科書」に関する考察」
 「宗教的儀礼における貨幣の意味」
 「宗教と近代国家」
 「近現代トルコ政治史から見る世俗主義とイスラーム」
 「生長の家の教団史・教祖自伝に関しての諸考察」
 「戦死者顕彰の供犠論的検討」
 「ケルト宗教におけるキリスト教の受容と神話の変容」
 「日本における中東・イスラーム研究とオリエンタリズム―本質主義をめぐる問題―」
 「台湾タイヤル族の宗教と現代」
 「大乗仏教思想―空と慈悲」
 「信じることを余儀なくされるという弱さを人は生まれながらにして持つことについて」
 「企業理念―どのように生きるのか―」
 「マックス・ウェバーの宗教比較と「プロテスタンティズムの論理と資本主義の精神」についての考察」
 「1960〜70年代アメリカ合衆国におけるキリスト教と東洋宗教」


 (2) 修士論文題目
 2006年度
     志田雅宏「ナフマニデスのトーラー註解と論争の関係性」
     <指導教員>市川裕
     渡辺優「ジャン・ド・レリー (1534-1613) における自己/他者のイメージ―「カルヴィニズムとカニヴァレスク」序説」
     <指導教員>鶴岡賀雄
     岡田エミ「霊性と世俗の接点としての非暴力—チベット亡命政府と日本山妙法寺の非暴力運動を事例に—」
     <指導教員>島薗進
     木戸口宣子「QOL概念の「曖昧さ」に関する一考察―「生活」の地位向上」
     <指導教員>鶴岡賀雄
     河原井彩「自分の死後を選択する人々―現代日本における墓の選択とその意味付け」
     <指導教員>島薗進
     ムスリン・イーリア「鴨長明と吉田兼好の文学における死—死生学の立場からの一考察−」
     <指導教員>鶴岡賀雄
     谷内悠「現と虚の狭間で—日本神話理解のための分析哲学解釈—」
     <指導教員>池澤優
 2007年度
     稲田久美子「日本のキリスト教と「日本」」
     <指導教員>鶴岡賀雄
     新里喜宣「沖縄社会と民間宗教者の現代的展開」
     <指導教員>島薗進

 (3) 博士論文題目
 2006年度
      (甲)星野靖二「近代日本における宗教概念の展開—宗教者の自己理解を中心に」
      <主査>島薗進<副査>黒住真・苅部直・磯前順一・深澤英隆
 2007年度
      (甲)佐々木中「ラカン、フーコー、ルジャンドルにおける宗教と主体の形成をめぐる探究」
      <主査>鶴岡賀雄<副査>島薗進・池澤優・西谷修・竹沢尚一郎
      (甲)冨澤かな「「オリエンタリスト」のインド論―18世紀末イギリスの他者と宗教」
      <主査>島薗進<副査>鶴岡賀雄・市川裕・高島淳・松村一男
      (甲)津曲真一「瞑想意識の集中と弛緩─ロンチェンパ著『大究竟禅定安息論』の研究─」
      <主査>市川裕<副査>鶴岡賀雄・池澤優・斉藤明・長野泰彦
      (甲)大田俊寛「グノーシス―模倣の神話学」
      <主査>鶴岡賀雄<副査>市川裕・池澤優・大貫隆・深澤英隆




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