05  倫理学

1 研究室活動概要
 人間存在、価値、道徳意識、行為等に関する学的反省を行う倫理学の研究は、古今東西の先人の思索の跡を踏まえ、これを手懸かりとして深められる。倫理学専修課程の講義・演習も倫理学の基礎理論の考察を目指したもののほか、西洋の倫理思想を対象とするものと、日本の倫理思想を対象とするものとがあり、教授4名、助教1名から成る専任教員の専門分野も多岐にわたっている。専任教員の他、他大学から出講して頂いている先生方(各年度5-6名程度)の協力のもとに、西洋と日本の主要な倫理思想を対象とする多彩なカリキュラムの編成が可能になっている。
 教養学部から進学する学生数は、近年増加傾向にある(2006年度4名、2007年度13名)。また、学士入学してくる者もいる(2006年度1名)。学科全体としてみれば、学生、院生あわせて50名ほどの学科だが、学生、院生の研究テーマも、古代ギリシャ哲学や古代ユダヤ教からヨーロッパにおける現代の先端的な社会哲学や倫理学まで、また、古事記から儒教、仏教、国学、さらに近現代の日本思想に至るまで、まことに多彩である。そして、教員と学生、院生双方に言えることであるが、本研究室の特徴として西洋思想の研究者と日本思想の研究者の間での対話が要求され、現に行われているという点が挙げられる。
 倫理学研究室では、年一回『倫理学紀要』を編集、発行しているが、これは、専任教員ばかりでなく、博士課程在籍中の院生の研究成果を発表する場となっている。また、文部科学省科学研究費に基づく複数の研究会が組織されている他に、本専修課程の卒業生を中心に「倫理学研究会」が組織され、年一回の定例会が行われており、そこでは倫理学の専門的な研究者のみならず社会人をもまじえた活発な研究交流がなされている。

2 構成員・専門分野
(1) 専任教員の氏名・専門分野・在職期間
教授 竹内 整一
   専門分野 倫理学原理論・日本倫理思想史
   在職期間 1998年4月-現在

教授 関根 清三
   専門分野 西洋倫理思想史・旧約聖書学
   在職期間 1994年6月-現在

教授 菅野 覚明
   専門分野 倫理学原理論・日本倫理思想史
   在職期間 2005年1月-現在

教授 熊野 純彦
   専門分野 倫理学原理論・近現代西欧倫理思想
   在職期間 2007年4月-現在

助教 朴 倍暎
   専門分野 倫理学・日本倫理思想史
   在職期間 2003年4月-2008年3月

(2) 2006~2007年度の助教の活動
 朴 倍暎
   在職期間 2003年4月-2008年3月
   研究領域 近世の日本の儒教倫理・近現代の日韓比較思想・生命倫理
   主要業績
  (著書)
   『儒教と近代国家―「人倫」の日本、「道徳」の韓国』講談社、2006年7月、1頁-204頁。
   (論文)
   「儒教思想における普遍と特殊―伊藤仁斎と李退渓との比較を中心に」『国士館哲学』第11号、国士館大学哲学会、2007年3月、1頁-10頁。
   「荻生徂徠における道」『思想史研究』第7号、日本思想史・思想論研究会、2007年3月、45頁-57頁。
   「「誠」について」『倫理学紀要』15輯、東京大学大学院人文社会系研究科倫理学研究室、2008年3月、1頁-16頁。
   「荻生徂徠における「明徳」の意味―『大学章句』の「明徳」との比較を中心に」『比較思想研究』第34号、比較思想学会、2008年3月、103頁-108頁。
   (学会発表)
   「荻生徂徠における「明徳」の意味―『大学』の「明徳」との比較を中心に」比較思想学会第34回大会、愛知学院大学、2007年6月。


3 論文等題目
(1) 2006、2007年度 卒業論文題目一覧
 2006年度
  「『道徳感情論』における自然の概念」
  「“The Language of Morals”とのつながりからみる“Moral Thinking its levels, method, point”」
  「九鬼周造と時間」
  「アダム・スミス『道徳感情論』における共感論」
  「ハイデッガーとシュトラウス―近代的ニヒリズムと自然権―」
  「ショーペンハウアーにおける愛の概念」

     2007年
      「『日本霊異記』の編纂意図」
  「清沢満之の〈宗教〉における主体と他者との繋がり」
  「ヘーゲル哲学の原理」
  「二宮翁夜話に読む天道と人道」
  「坂口安吾の思想遍歴~不条理を乗り越えた安吾がたどり着いた境地とは~」
  「『弁道』『弁名』にみる荻生徂徠の制度」
  「国木田独歩の「驚異」志向について」
  「『大和小学』に現れたる闇斎思想の研究―『小学』との差異を中心に―」
  「E.レヴィナス『全体性と無限』における〈ことば〉について」


(2)2006、2007年度 修士論文 執筆者・題目一覧
 2006年度
  福士壮太郎 「『愚管抄』における無私」
  <指導教員>菅野覚明
  矢島壮平 「アダム・スミス『道徳感情論』における行為の動機付けと「真の徳」」
  <指導教員>関根清三
  宮村悠介 「世界はいかにして与えられるか―カント哲学における実体概念と関係概念―」
  <指導教員>熊野 純彦

     2007年度
      木澤景 「『往生要集』における同行」
  <指導教員>菅野覚明


(3)2006、2007年度 博士論文 執筆者・題目一覧
 2002年度
  (甲)
  宮下聡子 「ユングにおける宗教的倫理の可能性」
  <主査>関根清三<副査>竹内整一・菅野覚明・熊野純彦・佐藤康邦




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