02 考古学
1.研究室活動の概要
(1)研究分野の概要
東大考古学研究室はその伝統のひとつに東アジアの考古学があり、アジアの中で日本文化をとらえるという視点をつねに重視している。そのほか、人文社会系研究科内の常呂実習施設や韓国朝鮮文化研究室、あるいは東大内の総合研究博物館、新領域創成科学研究科、埋蔵文化財調査室などに、日本近世、朝鮮半島、北アジア、西アジアのような考古学分野ないし生態系史研究などの関連分野の教員がおり、連絡・協力を保ちつつ幅広い研究教育活動を進めている。
(2)専攻としての活動
長期継続している北海道における調査では、北見市常呂町トコロチャシ遺跡での調査を常呂実習施設と考古学研究室の共同調査として継続して実施している。日本列島北辺を東北アジアの中に位置づけるという研究課題の一環でもある。
大貫を代表とする科研費課題は06年度が最終年度であり、本研究室所蔵の中国遼寧省牧羊城遺跡出土資料の再整理を研究室の教員、院生が参加しておこない、最近問題となっている弥生時代年代論を議論する際の大陸側の基礎データを提供した。
特定領域研究中の大貫を代表とした一課題として、常呂実習施設とともに、東京大学とサハリン国立大学との日露国際共同調査をサハリンのセディフ1遺跡でおこなった。
大貫を代表として07年度より始まった科研費課題では新領域創成科学研究科、常呂実習施設とも協力して、東京大学とロシア極東国立博物館との国際共同調査をアムール川下流域のマラヤ・ガバ二遺跡で実施した。
佐藤を代表とする科研費課題の一環として、常呂実習施設の協力の下、研究室および新領域創成科学研究科の学生らとともに06年は北海道富良野市東麓郷1遺跡、07年は北見市吉井沢遺跡において発掘調査を実施した。
(3)研究室としての活動
2006年4月公開セミナー「後期旧石器時代研究の最新の成果」、同11月公開研究発表会「異系統土器の出会い -土器研究の新しい可能性をもとめて-」、2007年2月「第八回北アジア調査研究報告会」、同2007年5月公開セミナー「後期旧石器時代の地域編年とその比較」。
『東大考古学研究室研究紀要』は2006年度の21号、2007年度の22号と順調に刊行された。既発行分については国立情報学研究所のWEBサイト上で随時公開を行い、研究者の閲覧の便宜をはかっている。
(4)国際交流
考古学研究室が窓口となり、オックスフォード大学考古学研究所長クリス・ゴスデン教授との間で、07年度より東京大学とオックスフォード大学の考古学・人類学関係分野を中心に研究交流を促進する内容の合意文書が取り交わされた。
他に、訪問された多くの外国人研究者の中に、吉林省文物考古研究所所長宋玉彬、吉林大学辺疆考古中心陳全家教授、レディング大学スティーブン・マイズン教授、ロシア科学アカデミー極東支部ニコライ・クラーディン教授の名前をあげることができる。
2005年10月に研究室のホームページを開設しており、ここに記した情報の多くもそこから得ることができるようになっている。
2.構成員 ・専門分野
(1) 専任教員
今村啓爾 日本先史考古学・東南アジア考古学 (現在に至る)
大貫静夫 東北アジア考古学 (現在に至る)
佐藤宏之 日本先史考古学・民族考古学 (現在に至る)
(2) 2006〜2007年度の助教の活動
安斉正人
在職期間 1978年4月~2008年3月
研究領域 先史考古学・理論考古学
主要業績
(著書) 『人と社会の生態考古学』柏書房、2007
『前期旧石器再発掘-捏造事件その後-』同成社、2007
『縄紋時代の社会考古学』同成社(共編著)、2007
『現代考古学事典-縮刷版-』同成社(編著)、2006
『旧石器時代の地域編年的研究』同成社(共編著)、2006
(論文) 「円筒下層式土器期の社会」『縄紋時代の社会考古学』27-58頁、同成社、2007
「『ナイフ形石器文化』批判(前編)」『考古学Ⅴ』1-32頁、2007
「”縄紋式”階層化社会の一事例」『生業の考古学』56-72頁、同成社、2006
「『神子柴文化』の新解釈」『考古学Ⅳ』1-16頁、2006
(3) 2006〜2007年度に受け入れた内地研究員・外国人研究員
2006年度
外国人研究員 鄭 仁盛 ・ 金 正培
PD 高橋 健
3.卒業論文題目等題目
(1) 卒業論文題目
2006年度
静岡県域における縄文期土石錘について
茨城県における縄文時代の網漁撈
縄文時代の福井県及び石川県における漁業について
千葉県北部出土縄文期の錘具について
縄文時代のかごの研究
2007年度
南関東のフラスコ形瓶
広島県・岡山県における縄文時代の漁網錘について
縄文時代に於ける山陰の土錘・石錘について
埼玉県における縄文時代の網漁撈
漢書における地理概念の算定方法についての考察
北海道の後期旧石器時代における原産地遺跡の一様相
石材の補給と消費からみた旧石器時代の居住行動
千曲川水系の円筒埴輪
(2) 修士論文題目
2006年度
多可 政史 スコータイからアユタヤ期におけるタイ陶磁器研究の諸問題
<指導教員>今村啓爾
初鹿野博之 縄文後期前葉土器の地域性と型式設定
<指導教員>今村啓爾
有松 唯 カスピ海南岸域における鉄器時代文化の変容と展開
<指導教員>西秋良宏
角道 亮介 西周時代諸侯墓の研究
<指導教員>大貫静夫
古澤 義久 韓半島東・南部地域新石器時代早・前期土器研究
<指導教員>大貫静夫
榊田 朋広 9~12世紀の北海道東北部における文化集団動態の研究
<指導教員>熊木俊朗
中村亜希子 戦国秦漢期の瓦に関する考古学的研究 -山東省を中心として-
<指導教員>大貫静夫
2007年度
田中 眞司 塞ノ神式土器から轟B式土器へ
<指導教員>今村啓爾
森 岬子 北海道における円筒系土器文化の終末
<指導教員>熊木俊朗
(3) 博士論文題目
2006年度
(甲)
郭 素秋 彩文土器から見る台湾・福建と浙江南部の先史文化
<主査>今村啓爾<副査>大貫静夫・佐藤宏之・熊木俊朗・吉開将人
高橋 健 日本列島における銛猟の考古学的研究
<主査>熊木俊朗<副査>大貫静夫・今村啓爾・佐藤宏之・宇田川洋
(乙)
後藤 直 朝鮮半島初期農耕社会の研究
<主査>大貫静夫<副査>今村啓爾・佐藤宏之・早乙女雅博・田村晃一
西村 昌也 紅河平原とメコン・ドイナイ川平原の考古学的研究
<主査>今村啓爾<副査>大貫静夫・佐藤宏之・青柳洋治・小川英文
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