01  言語学

1.研究室活動の概要
(1)研究分野の概要
 言語学は,世界の言語を実証的かつ理論的に研究する学問である。本研究室では,特定の理論・言語に偏ることなく,過去の文献資料も含めた世界の多種多様な言語を自分の手で調査・研究し,その一次資料から一般化を図るという基本姿勢を貫いている。
 言語を教科書から学ぶのと,自分で未知の言語を調査し分析するのは全く別のことである。後者の方法を身につけるには,学部段階から教育・訓練が不可欠である。当専修課程は,言語学の基礎的な考え方を学ぶだけでなく,音声学を修得し,言語の調査・分析を行なう能力も身につけることのできる国内でも数少ない課程の一つである。

(2)大学院の専攻・コースとしての活動
 現在の教員数は,教授3名,准教授1名,助教1名である。この他,学部・大学院の共通講義として毎年異なる非常勤講師を他大学から迎えている。加えて大学院教育では,韓国朝鮮文化研究室の教員をはじめ,本学の留学生センター,および新領域創成科学研究科(音響音声学)の教員による講義も開講している。
 教養学部からの言語学専修課程への進学者数は最近は10名前後で,大学院修士課程へは,本専修課程卒業者のほか,他大学出身者や外国人留学生も入学している。博士課程はそのうちの約半数が進学するが,外部にも門戸を開いている。課程博士が数年前に生まれて以来,博士課程大学院生の間では博士論文を書く態勢が定着してきている。

(3)学会・研究誌・ホームページなどに関する研究室としての活動
 教員と大学院生の研究発表の場として,1979年以降『言語学論集』を毎年刊行している。最も関係の深い学会は日本言語学会であり,教員が委員を務めるほか,博士課程の大学院生が大会で活発に研究発表をしている。その他,研究テーマによっては日本語学会や日本音声学会で発表することもある。両学会とも本研究室の教員が役員を務めている。
 また,1998年度以来,京都大学の言語学研究室と交流演習を実施して成果をあげている。院生が毎期1人ずつ相手校で発表をし,教員・院生の批判を受けるというものである。
 当研究室では,1998年以来,ホームページを立ち上げ,これらの研究室活動の情報を日本語と英語で広く提供している。そのURLは次のとおり:http://www.gengo.l.u-tokyo.ac.jpそこでは,『東京大学言語学論集』の目次と要旨も見ることができる。

(4)国際交流の状況
 本研究室は外国人留学生が多く,アメリカ,韓国,中国,マレーシアなどの学生が日本語や自分の母語の研究を進めている。日本人にとっても良い刺激となっている。
 逆に,日本人の大学院生が,現地調査ないし留学のために長期に渡って海外に出ているケースも少なくない。研究室としてもこれを積極的に勧めている。
 また,外国人研究員も随時迎え入れている。さらに,科学研究費などで海外の研究者を招待した時には,院生・学生に向けての講演会も開催している。

2.構成員・専門分野
(1)専任教員の氏名・専門分野・在職期間
 上野 善道(教授):日本語アクセント論 1981年4月~現在
 熊本  裕(教授):イラン語学 1989年4月~現在
 林   徹(教授):チュルク語学 1997年4月~現在
 西村 義樹(助教授→准教授):認知言語学 2004年4月~現在
 内海 敦子(助手→助教):バンティック語(インドネシア)等 2006年4月~2007年3月

(2)助教の活動
 内海 敦子(うつみ あつこ)
  在職期間 :2006年4月~2007年3月
  研究領域 :記述言語学,北スラウェシの少数民族言語,バンティック語とタラウド語(オーストロネシア語族),意味論
  論  文 :
   (2006.6)「タラウド語の音声・音韻と語彙における世代差」『言語研究の射程』,ひつじ書房. pp. 151-170.
   (2007.9) Basic Morphology of Verbs and Adjectives in the Talaud Language, 『東京大学言語学論集26』, pp. 73-113.
  研究発表
   (2007.10)「タラウド語の音声と音韻」言葉のミステリー研究会:東京大学.
   (2007.11)「バンティック語とタラウド語のヴォイスシステムの比較―使役動詞を中心に―」日本言語学会 第135大会:信州大学.
   (2007.12)「オーストロネシア諸語における方向表現とダイクシス」中国語と周辺言語におけるダイクシス研究会(科学研究費基盤研究(B)課題番号19320058):東京大学.

  フィールドワーク
   2007年8月:インドネシア北スラウェシ州において言語調査(学術振興会科学研究費若手研究(スタートアップ),課題番号:18820007)

 (3) 外国人教師の活動
   なし

 (4) 内地研究員・外国人研究員
  2006年度
   内地研究員  1名
   外国人研究員  1名
  2007年度
   内地研究員  1名
   外国人研究員 0名


3.卒業論文等題目
 (1) 卒業論文題目一覧
 2006年度
  「旧約聖書諸法典における、法的事例設定に係わる条件節」
  「携帯メールにおける顔文字の多義性と会話中の役割」
  「<黙説>レトリックの分類と比較」
 2007年度
  「ツッコミ分析―関連性理論の立場から―」
  「民話テキスト資料におけるハワイ語所有形」
  「日本手話―音声言語と通じる態―」
  「ナイジェリアン・ピジンのイボ語、エフィック語による影響についての考察」
  「日本祖語の音節について」
  「明治開化期文学に見る外来語音韻論―西洋道中膝栗毛を中心に―」
  「1960年代~2000年代の歌謡曲における日本語リズムの変化について」
  「アレゴリ諷喩の理解について」
  "Japanese-English-Urdu Code-switching in Classroom Context"

 
 (2) 修士論文執筆者・題目一覧
 2006年度
  ‘内原 洋人 "Cherokee Phonology and Verb Morphology"
  <指導教員>林 徹
  ローザ マーク (Mark ROSA) "Kaida Writing in the Yaeyama Islands"
  <指導教員>上野善道
  渡邊 績央 「日本語の難易文」
  <指導教員>菊地康人

 2007年度
  鍛治 広真「エウェン語における色彩を表わす語彙について」
  <指導教員>林 徹
  新永 悠人「奄美大島湯湾方言の格標識」
  <指導教員>上野善道
  早田 清冷「『滿洲實録』モンゴル語の存在を表す動詞bayi-, bü-, a- について」
  <指導教員>林 徹

 
 (3) 博士論文執筆者・題目一覧
 博士論文(甲)  2007年度
  孫 在賢「韓国語諸方言アクセントの記述研究」
  <主査>上野善道<副査>熊本裕・林 徹・西村義樹・福井玲
 博士論文(乙)  2006年度
  塩原 朝子「スンバワ語の文法」
  <主査>上野善道<副査>熊本裕・林 徹・湯川恭敏・大角翠




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