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近藤 和彦


上野の森美術館「18世紀ヴェネツィア」展について
5月27日(日)まで
開催情報+割引券は、www.sankei.co.jp/event/1127/beneti.html

2001. 5. 16
わが談話室より転載します。

 1) 神話・宗教画より、世俗の場面を描いた絵、そしてバロックの
 奇想画のほうがおもしろい。とくにイギリスから grand tour で訪れた
 ジェントルマンどら息子たちが、観光記念写真のように持ち帰った
 カナレット。彼の青い空と大運河およびアドリア海の水面があまりに
 すばらしく、∴渾名 Canaletto.

  ロンドンの顧客たちがついに彼をイギリスに招待してテムズ川や
 田園を描かせていますが、しかし、もっとずっとおもしろいのは、今回
 出展されていないが、ロンドン・シティの街並みはそのままに道路を
 すべて水で浸して、ゴンドラを浮かべた絵。要するに、カナレットが
 世界資本主義の新しい中心ロンドンを、地中海資本主義の中心
 ヴェネツィア風に表象した capriccio.
 どうせ18世紀ヴェネツィア、 その奇想と銘打って企画するなら、
 それくらいのおもしろさを演出してほしい、西洋美術史の先生方よ!

  そのカナレットの絵いくつかは、こちら↓
 www.l.u-tokyo.ac.jp/~kondo/PictureGallery.html

 2) そのカナレットの使用したというカメラ・オブスクラも展示されて
 います。川島さんの訳した『カメラ・オブスクラ年代記』(朝日選書)
 を想いつつ観察しましたが、光線のぐあいで、磨りガラスに全然
 イメージが浮かばない。

  6月2日から京都市美術館で開催とのことですが、川島さん、
 展示法によろしくご助言を!


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