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リンク・著作権をどう考えるか


2000年3月14日登載/4月6日/6月3日/7月28日更新 近藤 和彦
 
   旧臘14日に自分のホームページ(ウェブサイト)を開設して、数ヶ月。なかなかおもしろい経験を重ねています。インターネットという公共圏(public sphere)へのかかわりが、ぼくの性に合っているのかもしれない。

  ところで、じつはこのウェブサイトを構築する時点から、いやそれ以前から気になっていたのは、著作権(これは私的権利)とインターネットの本質的にもつ公共性(publicness)との関係でした。手書きおよび活字の文化では、この二つは悠長に分けて考えることができました。コピーは、オリジナルより劣化し、あるいはパロディや本歌取りと認識されつつ笑いの対象となり、また時間的に必ずいちじるしく遅れたからです。

  ディジタル情報の世界では、しかし、コピーはオリジナルと一見して区別がつかないし、また瞬時に再生産できる(逆に、もし不都合なら瞬時に抹消/隠匿することもできる)。さらにオリジナルはどんどん更新しているのに、コピーのほうは過去のある時点の状態を保存したまま、といった事態も十分にありうる。一種のグーテンベルク革命につぐ知のあり方の大変革がいま進行中なのかも知れない。5月の日本西洋史学会大会(於大阪外国語大学)では 「21世紀の歴史学」 というシンポジウムが開かれたようですが、この問題もきちんと討論されたかな?

  いくつか参照したなかには、小倉利丸氏や、加藤哲郎氏のような見解もあります。ネチケット一般については、こちら。 とはいえ、もっとも有益なのは、東北大学文学部の後藤 斉 氏の議論と方針 * でした。後藤氏は関連する法規や研究などを包括的に検討しつつ、結論として、

     リンクは自由である !
           印刷媒体での言及も自由である !
           引用は公正な慣行に従って !
           無断複製は違法である !

という明快なスローガンを掲げておられます。たいへん説得的です。
 * ここに行き着いたのは、加藤哲郎氏の 政治学が楽しくなる、インターネット宇宙の流し方
  のお陰です。
 * なお、後藤氏の よいウェブページを書こうとする人のためのヒント へもリンクします。

  もし、ぼくが補うとしたら、リンクとは「引用」というより reference の元来の意味、すなわち参照註/典拠をしめす行為でしょう 。ただし、これまでのメディアでは考えられなかったほど迅速で first-hand な参照をうながす註であるというところに、インターネット/ハイパーテキストの威力があります。今後、上で refer した後藤氏の見解にしたがうことにします。

  ただし、依然として著作権およびニセモノという問題は消えたわけではありません。この点については検索デスクを運営しておられる浅井勇夫氏による検索の視点 #19 をご覧ください。

  なお、以上は、ぼくにとっては以下に再録する1999年12月の掲示板におけるやりとりへの遅まきながらの解答、ということになります。また、Q&Aでおこなわれている公共圏の二面性をめぐる議論への側面からの contribution でもあります。


  → Home    → Useful Links     → 発言・小品文   → 
       mailto: kondo@l.u-tokyo.ac.jp東京大学 西洋史)



                       1999/12/27 (月)   10:54     FK

                      遅ればせですが、HPおよびBBSの開設、おめでとうございます。

                      私見ですが、人文系の研究者(特に近藤先生くらいの世代の方)で、
                      こういったぺージ、特にこうした掲示板などの双方向性を志向した
                      試みをなさっている方は、まだ少ないのではないのでしょうか。
           【後略】
 

                       1999/12/25 (土)    15:07     サイトの主       Re: 掲示板開設 → 新しい公共圏

                      > このホームページが、歴史学などの積極的な意見交換の場として発展することを
                      > 心から期待しております。
                      というメッセージをいただきました。
                      HP開設、掲示板設置については初歩的なことからたいへんお世話になりました。

                       ところで e-mail としていただいた文章も、公共性のあるものは差し支えない
                      範囲でこの掲示板に出してよろしいでしょうか? もちろん personal なことは避けて、
                      名は頭文字で表記? インタネットを活用して、新しい「論議する公衆」が生まれ
                      つつあるような気がしています。
 

                       1999/12/25 (土)    11:53    サイトの主         ご挨拶
           【前略】
                        なお、すでに他の刊行物に載ったぼくの発言や短評をサイトに再掲載している
                      場合、最新のものがやや少ないではないかと思われるかもしれません。それぞれ
                      の刊行物の編集権・著作権を考慮してのことですが、新しい問題でもあり、
                      どう 考えるべきか、お知恵を拝借できればと思います。


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