グローバルCOEプログラム 死生学の展開と組織化

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ワークショップ 《現代フランス哲学と生命論》

【日時】 2007年10月19日(金) 13:30より
【場所】 東京大学 山上会館 201・202議室
【講演者】 ピエール・モンテベロ(トゥールーズ第二大学教授)
【コメンテーター】 鈴木泉
        (東京大学大学院人文社会系研究科 准教授)
【主催】
東京大学グローバルCOE 「死生学の展開と組織化」
【言語】 フランス語
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2007年10月19日午後1時半から午後4時まで、山上会館において、ピエール・モンテベロ教授(トゥールーズ第二大学)を招いて、ワークショップ「現代フランス哲学と生命論」を開催した。モンテベロ教授は、1994年にメーヌ・ド・ビランに関する大部の博士論文 La decomposition de la pensee (Millon) を刊行されたあと、2003年には、ラヴェッソン・タルド・ニーチェ・ベルクソンを主たる対象に「自然の哲学」としての「もう一つの形而上学」をめぐる好著 L'autre metaphysique. Essai sur Ravaissonn, Tarde, Nietzsche et Bergson (Desclee de Brouwer)、昨年秋にはその続刊にあたる Nature et la subjectivite (Millon)を刊行した、現在のフランス哲学において、主にフランス哲学を素材としながら、独自の自然哲学の構想のもと、生命・身体と主観性に関して考察を深めている中堅どころの哲学者であると言うことが出来る。私は、死生学研究の一環として、死というよりは生・生命に関する原理的考察を進めるために、現代フランス哲学を主たる素材にした研究会「現代フランス哲学と生命論」を来年度から開催する予定であるが、その予告編といった意図をもって、この分野に関する最適の哲学者であるモンテベロ教授を招聘し、実質的な議論を行うべくワークショップ形式の研究会を開催することにした。
 教授は、現代フランス哲学を代表する哲学者であるドゥルーズに関する著作 Deleuze, philosophie du paradoxe (Vrin) を執筆中とのことだったので、その一部を講演して頂いた上で、その内容および教授の仕事全体に対して私がコメントを寄せ、それをもとに議論を行った。
 1時間半ほどの講演「いかに自然を思考するか」は、基本的には、ドゥルーズ&ガタリの主著『千のプラトー』の(基本的概念が極めて風変わりな仕方で提示される)「道徳の地質学」の明晰な読解を行い、ドゥルーズの自然哲学の意義を解明するものであった。ドゥルーズ(&ガタリ)の思考は、本邦でも一時期ジャーナリスティックな仕方で話題にはなったものの、フランスを含めて未だ本格的な読解すら進められていないが、教授は諸概念の地図を明晰に取り出した上で、その思考の非人間主義的な側面の重要性を的確に浮き彫りにして、極めて興味深いものであった。構造主義や生命科学の進展を背景に、人間が自然や社会の一部でしかないという事実をもとにした思考が精力的に繰り広げられた現代フランス哲学のブームが去った後、様々な形での人間主義の回帰が見られるように思われるが、人間は自然によって形成された存在でしかなく、だからこそ、他の異なる存在へも生成し得るという意味での非人間主義を説くドゥルーズ(&ガタリ)の思考の重要性を浮き彫りにする教授の読解は貴重なものであり、同じく非人間主義的な思考について短いエッセーを書いたことのある私としても大きな刺激を受けると共に共鳴するところが大きかった。そこで、この点を中心に、ドゥルーズ哲学総体の解釈に関する論点も含めて30分ほどのコメントと議論を行った。その後、本研究科の鶴岡賀雄教授や塚本昌則准教授を含む20人程の参加者の皆さんから、ドゥルーズの方法論的側面やその言語論の意義づけ、さらにはミシェル・アンリといった同時代の哲学者の思索との関連等々いった的確かつ重要な質問が続出し、ついつい休憩を取ることも忘れて計3時間もの間充実した時間を過ごすことができた。
 死生学研究の中心的な成果とこのような特異な思考とがどのように切り結ぶのか、ということは今後の課題ということになろうが、その作業は上述の研究会で展開することにしたい。

文責:鈴木 泉(人文社会系研究科准教授 哲学)



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