グローバルCOEプログラム 死生学の展開と組織化

〒113-0033東京都文京区本郷7-3-1
Tel 03-5841-3736
Fax03-5841-0259
お問い合わせはこちら
http://www.l.u-tokyo.ac.jp/shiseigaku/
HOME
概要
構成
今後の予定
活動報告
出版物
お問合せ先
関連サイト
内部用
HOME活動報告 > 生の哲学の彼方 ベルクソン「道徳と宗教の二源泉」再読

生の哲学の彼方 ベルクソン「道徳と宗教の二源泉」再読

         
【日時】 2007年10月1日18(木) 10:00〜18:00
【会場】 東京大学本郷キャンパス法文二号館
教員談話室
【共催】
東京大学グローバルCOE 「死生学の展開と組織化」
ベルクソン『創造的進化』刊行百周年記念国際シンポジウム実行委員会
【後援】
在日フランス大使
ベルクソン哲学研究会
【言語】 フランス語
poster

・プログラム(PDFファイル)

 アンリ・ベルクソンの三つ目の主著『創造的進化』が刊行百周年をむかえた2007年、世界各地でこれを記念する学会が開かれたが、日本でも10月16日から20日にかけて、東京と京都で計三回の大がかりな国際シンポジウムが開催された。この企画と連動する形で、本G-COEでは、研究プロジェクトに深く関わりのある四つ目の主著『道徳と宗教の二源泉』を主題とするワークショップを開催した。(10月18日午前10時から午後6時まで、本郷キャンパス法文二号館教員談話室。ベルクソン『創造的進化』刊行百周年記念国際シンポジウム実行委員会との共催、フランス大使館・ベルクソン哲学研究会の後援。)
 『二源泉』(1932年)は、晩年のベルクソンが、独自の生命論的視点から道徳と宗教の本質を捉え返し、「閉じた道徳」・「静的宗教」と「開いた道徳」・「動的宗教」という二つの類型をもとに幅広い主題に関して思索を繰り広げた哲学的遺著とでも言うべきものである。前世紀後半における生命科学の爆発的な発展や社会構造の大きな変化、さらには宗教のさらなる世俗化といった事情を考慮しても、この古典が問いかけるところは今なお大きい。そこで、人間の生と死に対する私たちの考えを根底から支えるような道徳と宗教の本質に関するベルクソンの思想の意義を掘り返すことによって、死生学研究に関して原理的場面から幾ばくかの寄与を行う、というのが主たる目的であった。また、日仏間の実質的な議論の場を創出することも目的の一つであった。
 そこで、日本側五人の研究者が発表を行い、フランス側の研究者が予め送られていた原稿に対するコメントを述べるという、ワークショップ形式を設定したが、80名ほどの聴衆の熱心な参加も手伝い、目論見通り密度の高い議論が展開された。島薗進研究拠点リーダーによる開会の挨拶の後、第一セッション(司会は鈴木泉)においては、杉村靖彦氏(京都大学)による「田辺元の『二源泉』読解??京都学派の哲学におけるベルクソニスム「受容」の一例として」と岩田文昭氏(大阪教育大学)による「宗教史における『二源泉』」の二つの発表がなされ、これに対し現在のフランスにおけるベルクソン研究を率いるフレデリック・ヴォルムス教授(リール第三大学)が熱のこもったコメントが寄せ、若干の議論の後、さらなる議論は全体討議に持ち越された。午後の第二セッション(司会は塚本昌則准教授)においては、瀧一郎氏(大阪教育大学)による「『二源泉』とアナロジーの美学」に対し、若手の俊英アルノー・フランソワ氏(リール第三大学)が骨太なコメントを寄せ、両者で重要な議論が交わされた。続く第三セッション(司会は杉山直樹学習院大学准教授)においては、本研究科の鶴岡賀雄教授による「神秘主義の歴史の中の『二源泉』」と中村弓子氏(お茶の水女子大学)による「哲学者のモラルと『道徳と宗教の二源泉』」の二つの発表がなされ、これに対するフランソワ氏からのコメント、病気で出席の適わなかったジャン=クリストフ・ゴダール教授(ポワチエ大学)からの文書によるコメントを受けた若干の質疑の後、全体討議(司会は安孫子信法政大学教授)に移り、フロアからの熱心な質問を中心とした討議が行われた。閉会後、場所を工学部に移して懇親会を催し、立花政夫研究科長による挨拶の後、ワークショップの熱気そのままに議論が続けられた。
 日本側発表者の発表の密度の濃さ、フランス側コメンテーターの真摯な応答、そして通訳者(藤田尚志(日本学術振興会)・谷口薫(四国大学講師)両氏)の八面六臂の活躍もあり、親密な空気の中、実質的な議論が繰り広げられ、充実した場を作り出すことができた。死者の共同体といった問題を初めとして、死生学研究にとって重要な問題が無数に議論されたが、その議論の詳細は、近く刊行される日仏二カ国語版のアクトをご覧頂きたい。

文責:鈴木 泉(人文社会系研究科准教授 哲学)



シンポジウムの様子 シンポジウムの様子 シンポジウムの様子


HOME活動報告 > 生の哲学の彼方 ベルクソン「道徳と宗教の二源泉」再読

All rights reserved. © 2002-2008