21世紀COE研究拠点形成プログラム 生命の文化・価値をめぐる「死生学」の構築
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死生観と心理学

日時2003年 9月14日(日)10:00-12:00
場所東京大学経済学研究科 第1教室
話題提供島薗進(東京大学)*
金児暁嗣(大阪市立大学/社会心理学)
杉下守弘(東京福祉大学/認知神経科学)
辻敬一郎(中京大学/実験心理学)
司会横澤一彦(東京大学)**
*拠点リーダー  **事業推進担当者
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・趣旨

最初の話題提供者である島薗進氏(本プログラム拠点リーダー)の講演は、「死生観の心理学の可能性――ケア実践的知/歴史文化研究/実証科学――」と題し、〈死生学〉と心理学の関係を鳥瞰し見取り図を描くものであった。特に現代の死生観を研究するにあたり、歴史文化研究と心理学の接点を捉えてゆく重要性を示唆した。

次に、金児暁嗣氏の講演は「宗教観と死への態度」と題され、社会心理学の立場からわれわれの持っている死への態度(死観)の形成に関するプロセスと要因の分析をするもので、氏がこれまで洗練してきた「オカゲ」と「タタリ」の観念を中心に、浄土真宗の死観を加味しつつ、宗教観と〈死生学〉の関連を問うものであった。

そして、杉下守弘氏は神経心理学の立場から見える生と死の一風景に関して話題提供があった。幽体離脱や臨死体験といった現象に対する近年の心と脳に関連する研究の可能性を問いながら、宗教や哲学における議論・認識との距離を意識しつつ、批判的なスタンスも含み込んで、問題提起をした。

最後に、辻敬一郎氏が「生命観へのアプローチ――基礎心理学の立場から――」と題した報告を行った。死生観を心理学の研究テーマとすることの困難性の背後にある要因に関して反省的な分析をしつつ、それを克服するための中継地点として生命観を取り上げることの意義、そして生命観の形成過程などについて取り上げた上で、心理学の領域連携の重要性について示唆があった。

講演後の質疑応答では、現代社会における新しい死のかたちの問題や、死生観における普遍主義と(文化)相対主義、生や死の体験主体としての意識の問題、〈死生学〉に内在する評価や価値に関する反省的認識などについて意見交換が行われた。

総じて、多様な議論が展開され非常にヴォリュームのあるシンポジウムとなったが、それは(司会の横澤一彦氏が指摘していた)心理学という領域・方法の多様性を改めて如実に感じさせるもので、ある意味で「異質なもの」が交叉することによって、参加者に「今後」の問いを突きつけるようなシンポジウムであったと総括できるだろう。

シンポジウムの様子 シンポジウムの様子 シンポジウムの様子

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