グローバルCOEプログラム 死生学の展開と組織化
東京大学大学院人文社会系研究科グローバルCOE研究室

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Nick Zangwill 教授講演会


    
【日時】 2007年12月5日(水) 17:30より
【場所】 本郷キャンパス法文2号館 哲学研究室
【講演者】 Nick Zangwill
(ニック・ザングウィル, Durham University教授)  
【講演テーマ】
Indirect Consequence and Love, Life and Death
【主催】 東京大学グローバルCOEプログラム
「死生学の展開と組織化」
【共催】 哲学会
【言語】 英語

オーガナイザー:一ノ瀬正樹
東京大学大学院人文社会系研究科
グローバルCOE「死生学の展開と組織化」
哲学研究室


「Nick Zangwill教授講演会の報告」
 去る2007年12月5日夕刻に、東京大学文学部哲学研究室にてNick Zangwill教授講演会が死生学セミナーとして開催された。Zangwill教授は現在英国ダラム大学教授であり、音楽美学、倫理学、心の哲学など幅広い主題を射程に収め、旺盛に研究を発表している。著書として、The Metaphysics of Beauty (Cornell University Press, 2001)やAesthetic Creation (Oxford University Press, 2007)などがある。Zangwill教授は2006年度にも東京大学を訪れ講演を行ってくれており、今回再びの講演会開催となった。今回は”Indirect Consequence and Love, Life and Death”という表題のもと、功利主義を代表とする「帰結主義」の倫理学と、「常識道徳」、つまり常識的な直観を重視する道徳観との異同という問題を、シェイクスピアの『リア王』のコーデリアの行為を例として用いながら、詳細に論じてくれた。教授は、一見すると、間接的に良い結果をもたらすものを善いとする「間接的帰結主義」は「常識道徳」と合致するように思われるかもしれないが、必ずしもそうではなく、帰結主義は常識と両立しない指令を導くことが原理的にありえる、と論じる。そして、やはり常識道徳をまずは重んじることが倫理学の基盤となるべきだ、とした。これに対して、この二つの道徳はそもそも論じようとしている問題の次元が異なるのではないか、といった質問が出た。さらには私自身、倫理学はいわゆる「道徳的葛藤」が生じたときの処方箋として求められているのであり、そして道徳的葛藤は常識的な直観では解決できないからこそ葛藤となるのだから、常識を重んじるというだけでは倫理にはならないのではないか、と質問した。Zangwill教授はこうした質問に丁寧かつ真摯に答えてくれた。すなわち、常識道徳が道徳的葛藤の即座の解決にならないとしても、それは帰結主義などの道徳理論でも同様であって、やはり多様な視点を交えながら複線的に検討してゆくしかない、といった趣旨の示唆を与えてくれたのである。生と死の問題へと収斂する私たちの倫理というものの本来的に複雑なありようについて、改めて思いを深くし、今後の研究に対する大いなる刺激を受け取った一日であった。
                            文責:一ノ瀬 正樹(当COE事業推進担当者)  
    
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