【日時】 |
2007年8月2日(水) 16時〜17時40分 |
【場所】 |
本郷キャンパス法文1号館 219教室 |
【講演者】 |
Gary Laderman (ゲイリー・レイダーマン, エモリ大学教授)
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【講演テーマ】
"Death in the United States: Past, Present, and Future" |
【主催】
東京大学グローバルCOE 「死生学の展開と組織化」 |
【協力】 南山大学 日米教育委員会(フルブライト委員会)
フランス国立科学研究所(CNRS)
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【言語】 |
英語 | |
2007年8月2日、16:時より約2時間、本郷キャンパス法文1号館219教室で、“Death in the United States: Past, Present, and Future”と題して、Gary Laderman教授による講演が行われた。Laderman教授はアメリカ合衆国アトランタ市近郊のエモリ大学で宗教学を講ずる学者で、現代アメリカの葬儀の歴史の研究でよく知られている。The Sacred Remains: American Attitudes Toward Death, 1799-1883 (Yale University Press, 1996)、Rest in Peace: A Cultural History of Death and the Funeral Home in Twentieth-Century America (Oxford University Press, 2003) などの著書がある。
この度の講演はこれまでの研究を総括しつつ、アメリカ合衆国の葬儀の歴史の全体を展望しようとしたものである。アメリカ合衆国における葬儀のもっとも大きな変容は19世紀の後半、南北戦争期以後に起こった。この時期に死体を装飾するエンバーミングの手法が確立し、現在のアメリカ的な葬儀の原型が成立する。それに続く変動は1960年代以降に起こっている。
この時期、Jessica MitfordによるThe American Way of Death (Simon & Schuster, 1963) が刊行され、商業化された葬儀のあり方が激しい批判を浴びたが、それは葬儀の大勢に変容をもたらすものではなかった。しかし、この時期、多様な民族集団がそれぞれの仕方で葬儀を行う傾向が強まり、葬儀の多様化が進行することになった。将来のアメリカ合衆国の葬儀のあり方はこ多様化の中から見えてくることになるだろう。以上が講演のあらましである。
これに対して、日本、東アジア、ヨーロッパ、アメリカ合衆国における葬儀や葬祭業や墓地の変容に関心をもつ聴衆から、いくつかの問いが投げかけられた。東アジアやヨーロッパにおいては、20世紀末から21世紀初頭にかけて、大きな葬儀の変容が進行しており、19世紀の都市化に伴う変容よりもドラスティックなものと受けとめられているが、アメリカ合衆国との事情の違いはどこにあるかが討議された。東アジアでは火葬の普及や親族構造の変容や政治体制の変化が重なり、複雑な変容が進行していることも確認された。
この分野も死生学の重要な一分野であり、今後もこうした集いや交流を研究プログラムに組み込んでいきたい。なお、この講演会を開催するにあたって、南山大学、日米教育委員会(フルブライト委員会)、フランス国立科学研究所(CNRS)からご協力いただいたことを付記しておく。
文責:島薗進 (本COE拠点リーダー)