21世紀COE研究拠点形成プログラム 生命の文化・価値をめぐる「死生学」の構築
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ジョン・ノース教授 死生学連続講義
古代ローマ人の死生観とその変容
――共和政期の宗教伝統は、帝国成立に至る政争と対抗する新たな諸宗教運動の出現によって、いかに変容していったか――

講演者 : ジョン・ノース教授 (ロンドン大学UCL歴史学科)
場所  : 東京大学 本郷キャンパス 文学部法文1号館 214・314教室

第1回 「共和政期ローマにおける祭司と法」
     Priests and Law in Republican Rome
第2回 「キケローと共和政期における占い」
     Cicero and Republican Divination
第3回 「前44年のルペルカーリア祭のカエサル」
     Caesar at the Lupercalia of 44 BCE
第4回 「ポルタ・マッジョーレの地下バシリカ」
     The Underground Basilica at the Porta Maggiore
特別講義
第5回 「異教的諸宗教の歴史における選択・機会・変化」
     Choice, Chance and Change in the History of Pagan
     Religions
・第1〜第4回の内容はこちらをご覧下さい。
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 「共和政期の宗教伝統は、帝国成立に至る政争と対抗する新たな諸宗教運動の出現によって、いかに変容していったか」、これを全体テーマとして、古代ローマ人の死に対する考え方、祖先との関係、来世への憧憬という死生学の中心問題を探求することであった。5回の講義では、古代ローマの政治体制と宗教制度との関係、代表的知識人の「宗教」に対する捉え方、国家祭儀の宗教的意味と政治との関わり、新興の宗教集団にみられる死後の生命に対する新たな観念が、それぞれ取り扱われた。

 そして最終回の講義は、特別講義として位置付けられ、死生観あるいは宗教に対する考え方がまさに変化するそのあり方を包括的に提示して問題提起を行ない、コメンテーターを交えた討論で締めくくられた。帝政期に、従来知られた諸要素が結びついた結果、ローマ宗教に新たな変化が生まれようとする多元的状況が描写された。コメンテータのイスクラ・ゲンチェーヴァ教授は、3世紀のバルカンの状況との対比を提示して理解を助け、また新潟大の葛西康徳教授は法制史的意義に言及され、ともにローマ宗教の議論の枠を大きく広げてくれた。(当日配布要旨作成:中西恭子)

 ノース教授の現在の問題関心が包括的に提示され、各回とも異なるディシプリンと視点によって、通説に対する批判と新たな解釈が提示されたため、極めて刺激的な講義となった。また、40名から50名の研究者、学生などが本学と他大学から参集し、毎回、質疑応答が十分行われた。

シンポジウムの様子 シンポジウムの様子

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