21世紀COE研究拠点形成プログラム 生命の文化・価値をめぐる「死生学」の構築
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ジュリアン・サヴァレスキュ教授公開講演研究会
The Ethics of the Enhancement of Human Beings

日時2005年6月30日(木)17:00-19:00
場所東京大学医学図書館3階 333教室.
共同主催上廣倫理財団
共催哲学会
講演者 ジュリアン・サヴァレスキュ教授
(オックスフォード大学)
・内容紹介(英文)

 COE主催のサヴレスキュ教授の講演研究会は2003年6月に続いて、二回目である。教授は、オックスフォード大学において上廣倫理財団が運営する実践倫理の研究所のUehiro Chairでもある。

 さて、今回の講演のテーマは、人間の能力の「増進」(Enhancement)についてであった。「増進」とは「治療」と対比される概念である。身近な例としては、スポーツにおけるドラッグの使用、ニコチンやカフェインによる意図的覚醒、バイアグラによる性的増強、などがある。こうした「増進」は今日では遺伝子レベルでの操作としても実現可能になりつつある。サヴレスキュ教授は、この問題に対して、積極的に「増進」を追求すべきだ、というかなり大胆な立場を明確に提示した。すなわち、道徳の目的は人間の幸福であるとする功利主義的観点に立って、反論への応答を試み、他者を害しないといった一定の合理的な制限をつけた上で、「増進」を促進すべきであると結論づけたのである。あまりに衝撃的な主張であり、多くの聴衆はその前衛性にとまどいさえ覚えたというのが正直なところだが、見かけの過激さではなく、議論内部の説得力が学問的には問われなければならないわけで、質疑の時間には、「増進」以外の他の方法で代替可能ではないか、生物学的決定論に与することにならないかなど、いくつかの当然の疑問が議論された。きわめて刺激的な講演会であり、この機会がCOE「死生学の構築」の射程をさらに拡張し、一層の充実化を促していくことは間違いない。サヴレスキュ教授と上廣倫理財団に深く感謝するとともに、今後も「死生学の構築」とのさらなる研究協力が望まれるところである。

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