グローバルCOEプログラム 死生学の展開と組織化

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「死生学」と「応用倫理」


竹内整一(「応用倫理」WG座長)

2002年度より新設された「応用倫理教育プログラム」は、現代技術・現代社会の高度の発展により、これまでにはなかった新しい問題群・学問域として登場してきた「応用倫理」問題を研究・教育するための特別プログラムです。同年に発足した21世紀COE「死生学の構築」プロジェクトは、同プログラムともともとかなりの部分でその対象・関心領域を共有しておりますので、今後とも、両者は人的・組織的にお互いに連携・協力しあいながら進めて行くことにいたしました。

「応用倫理」は、あれこれ焦眉の危機的な課題に応えられるよう社会的に強く要請され、この四半世紀、日本をはじめ世界各国で精力的に展開されてきており、かなりの成果・実績を収めてきております。しかしとはいえ、いまだ確固とした学問方法として定着しているわけでありません。なにぶん、例えば臓器移植や遺伝子操作、体外受精、クローン、等々といった技術がもたらす問題は、(わが国の応用倫理学の先駆者の一人、加藤尚武さんの言葉をかりれば)「倫理や哲学の古典をいくら読んでも前例がない。定説がない。過去の言説や伝統にいくら問いかけても、答えがあるはずがない。歌舞伎の台詞を使えば「お釈迦さまでもご存じない」」(『見えてきた近未来/哲学』ナカニシヤ出版)といったような問題だらけだからです。そこでは、最先端の自然科学の知と人文・社会科学の知とが、これまでにない新たなかたちで統合・融合されることが求められています。

そのことを確認したうえでのことですが、かといって、その最先端の現代的課題は、決して“現代”のみから解けるわけではないこともまた言わずもがなの事実です。「応用倫理研究会」の演習で講師の小松美彦さんは、「「生命・倫理・学」の陥穽と限界」というテーマで、最近の「応用(生命)倫理学」が基本的に条件整備や交通整理に終始しており、それがたんなる法律づくり・科学的なリスクチェックと同義語化してきていることを批判的に指摘しておられました。問いが目前の“現代”にのみ限定されすぎたところで、これまでの文化・文明の膨大な蓄積が無視されてきていることへの警鐘としての発言でした。問題はつまり、とりわけ人文・社会科学的にいえば、それらの問いのすべてが結局は、「いのちとは何か」「尊さとは何か」「価値とは何か」、そして「人間とは何か」といった問いに帰着せざるをえないということです。要は、いかにそれらを自然科学の提出する最先端の知と十分かみ合う(=統合・融合する)かたちで展開できるか否かということだろうと思います。

現代技術・現代社会の高度の発展により見えにくくなってきた、「死」と「生」のあらたな枠組みを問う、この「死生学の構築」(正式には、「生命の文化・価値をめぐる「死生学」の構築」)もまた、基本的にはまったく同様の学的要請を受けていることはいうまでもありません。「死生学の構築」プロジェクトと「応用倫理教育プログラム」とが連携・協力して営まれるべきゆえんです。具体的には、カリキュラム編成での連携やシンポジウム・研究会の共同開催などのかたちで進めていく計画です。




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