21世紀COE研究拠点形成プログラム 生命の文化・価値をめぐる「死生学」の構築
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公開シンポジウム  生死をめぐる同意と決定
第二部「生き死にの選択」

日時2004年12月12日(日)13:00-17:00
場所東京大学法文2号館 1番大教室
パネリスト 鈴木利廣(明治大学、法学・医療裁判)
清水哲郎(東北大学、哲学・医療倫理)
鎌江伊三夫(神戸大学、医学・医療における意思決定)
麻生享志(東京大学COE研究員、哲学・医療経済)
司会加藤尚武(鳥取環境大学学長、哲学・応用倫理)
poster
・『思想』 2005年第8号 No.976に関連する論文が掲載されました。
  さらに『死生学研究』 第六号にも掲載が予定されています。
  詳しくはこちらをご覧下さい。

2004年12月11日(土)・12日(日)の二日間にわたって行われた国際シンポジウム「生死をめぐる同意と決定」の第二部は、より実践的見地から具体的な議論の展開をめざして、東京大学本郷キャンパス文学部一番大教室にて開催された。シンポジウム全体の狙いは、医療的意思決定とその周辺を論じることにあり、この第二部は、日本人研究者によるパネルディスカッションという形で、実践的な問題を討議した。さらに詳しい内容の報告は後ほどシンポジウム報告書を刊行し、そこで行う予定である。

 第二部「生き死にの選択」(Choices about Life and Death) 最初に一日目とのつながりをつける紹介を一ノ瀬正樹助教授が行った。 一番目の提題は、医師でもある鎌江伊三夫氏が、いわゆるEBM(evidence-based medicine)についての大変に的確な解説を与え、その利点と難点とが公正に分析された。議論中において、一日目の報告に対する多くの言及がなされ、理論と実践との接点が浮き彫りにされた。

次に清水哲郎氏が医療哲学として、主に患者側の観点に立って報告を行った。医療現場での意思決定は当事者たちが共同で行う「合意」であると主張し、多くの哲学的見地を援用して議論を展開、二重結果論ではなく相応性論の適用可能性という問題が提起された。

三番目に鈴木利廣氏(弁護士でもある)が、医療裁判の専門家として、日本のいくつかの代表的な医療裁判のあらましを紹介した。自己決定権を重視する観点からの提題であったが、多くの困難があることもあわせて指摘し、問題の重さを実感させた。

最後に、本プログラム研究員の麻生享志氏が、「医療経済の見地から」ということで提題を行い、医療費の地域差や疾病構造の変化など医療に特有の現象を具体的に検討した。医療経済と市場原理との微妙な緊張関係をあぶり出し、医療政策論を展開した。

 提題後、パネリスト間の討議を経て、フロアを交えたディスカッションが行われた。医師や医学生など、現場に接する参加者からの質問も多く出て、加藤尚武氏(鳥取環境大学・学長)の、もう一人の提題者ともいうべき濃密なかつ軽妙な司会ぶりによって、議論は大いに盛り上がった。倫理学の熊野純彦助教授が閉会の辞を述べ、二日間の討議は終了を迎えた。

シンポジウムの様子 シンポジウムの様子 シンポジウムの様子

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