ポスター発表(責任在席時間 奇数:14:40〜15:55 偶数:15:55〜17:10)
安藤 新樹(京都大学大学院文学研究科)
眼球運動,サッケード,視覚的持続,測定方法,神経疾患
サッケード(衝動性眼球運動)速度の異常を検査することは、眼球周囲の障害や脳中枢の神経疾患の検査に役立つ。しかし臨床現場においてこの速度を簡便に測定できる方法はなかった。そこで人の知覚特性を用いた簡便な測定方法を開発した。暗闇で眼球運動の軌跡上に点滅光を提示すると、眼球運動の速度に比例して点列の見え方(インターバル)が変化する。このインターバルを測定することでサッケード速度を算出することができる。
山崎 校(立命館大学文学研究科)
拡大・縮小運動など放射状に移動する運動は、水平または垂直方向へ移動する平行運動よりも見かけの移動速度が速くなる。この速度過大視は、放射運動に伴う奥行きの知覚により生じると説明されている。そこで放射、平行運動ともに静止奥行き手がかりである空間周波数勾配を刺激に付与した条件での両運動の見かけの速度を測定したので、その結果を報告する。
藤本 清(関西学院大学大学院文学研究科)
biological motion,induccd motion,motion capture,motion coherence
歩行者を画面中央で足踏みするように提示したとき,歩行とは逆方向の背景の動きを知覚することがある.この現象を実験的に調べるために,光点歩行者をRDC(random-dot cinematogram)に重ね,RDCのコヒーレンス閾を測定した.その結果,冒頭の観察とは逆に,歩行と同方向に動きが誘導される被験者もいることが分かった.経験などの高次の要因が影響している可能性が考えられる.
伊藤 暢章,佐藤 隆夫(東京大学)
両眼視差,奥行き相殺,ランダムフェイズ・ステレオグラム,色度正弦縞
これまでの両眼立体視研究では用いられてこなかった奥行き相殺手法という方法をつかい,色情報が奥行き知覚の成立に寄与するかどうか調べた.刺激は両眼間で位相差のある輝度正弦縞と色度正弦縞を合成して用いた.その結果,奥行き知覚において,色情報は大きな効果をもつこと,それは運動知覚におけるはたらきより大きいこと,また,色情報と輝度情報は加算的というよりは相補的にはたらくことがあきらかになった.
中塚 麻記子(大阪市立大学大学院文学研究科)
奥行き知覚,絵画的手がかり,水平線
絵画平面上での奥行き知覚に影響を及ぼす奥行きの絵画的手がかりには,様々なものがある.本研究では,画面内での水平線の呈示が奥行きの絵画的手がかりとして有効であるかどうかを調べた.実験では,画面中央に水平線,様々な位置に標準刺激・比較刺激が配置され,大きさの主観的等価点から見えの奥行きが間接的に測定された.その結果,水平線が呈示された場合には,より上方にある対象がより遠くに知覚されることが示唆された.
上田 智巳(大阪市立大学文学研究科)
多義図形,順応効果,遠近法
von Grunau, Wiggin, & Reed (1984)は,多義図形知覚における順応効果は先行刺激が写真(箱)でテスト刺激が線画(Necker cube様の図形)の場合にも生起することを示し,この結果は順応が遠近法の方向に特化された処理において起こることを示唆するとしている.本実験では,先行刺激として遠近法を示さないものを用いた場合に,順応効果が起こるか否かが検討された.
谿 雄祐,佐藤 隆夫(東京大学)
カフェウォール錯視,両眼立体視,恒常性
カフェウォール錯視は、平行線が歪んで見える錯視として数々の研究がなされている。しかし、この図形に伴う奥行き感についての研究はなされておらず、今回はここに着目した。すなわち、両眼立体視を用いて奥行き感を操作し、錯視量の変化を調べたのである。その結果、奥行きによる大きさの変化と、錯視による大きさの変化はそれぞれ独立であることがわかった。今後は、両者が相殺するような奥行き量を設定するなど、さらに詳細な実験を行いたい。
菅沼 睦,横澤一彦(東京大学)
曲線追跡,奥行き,三次元構造,面知覚
曲線追跡(curve tracing )の3次元特性を検討した.オブジェクト内に奥行き変化を与えた刺激(実験1)と,オブジェクト間に奥行き差を与えた刺激(実験2)を作成し,2次元的な刺激における曲線追跡との比較を行った.実験1では,オブジェクト内における奥行き変化によって三次元的な刺激における曲線追跡は遅延された.一方,実験2ではオブジェクト間の奥行き変化によって曲線追跡は促進された.
立元 公子(大阪大学人間科学部適応認知行動学講座),篠原一光,三浦利章(大阪大学人間科学部)
Change Blindness,フリッカーパラダイム,ISI,遠近感,反応時間,画面呈示回数
フリッカーパラダイムを使用してRensink.et.al(1995)の追試を行った。ISIを変化させ、画面中のアイテムの変化の仕方を3種類(出現・消失、移動、拡大・縮小(遠近方向))に分けてそれぞれが変化検出にどのような影響を及ぼすか反応時間と画面呈示回数から分析した。結果、ISIが長いほど反応時間は延びたが、画面呈示回数はほぼ変化しなかった。また変化の種類では、拡大縮小の変化の中で遠近感が感じられたものが最も早く検出されたが、遠近感無しだと最も検出が遅かった。
光松 秀倫,横澤一彦(東京大学)
変化の見落とし,視覚探索,文字配列,背景,項目数効果
部分的に異なる2枚の風景画像にブランクをはさみ,繰り返し継時提示するとき,画像相違部分の検出時間は著しく長くなる。この現象は,変化の見落としと呼ばれる。本研究では,様々な実験変数の統制がとりやすい文字配列画像を用いて,変化検出時間に対する背景の有無による影響と項目数の影響を調べた。その結果,背景の有無による影響はなく,項目数を増加すると,検出時間が線形に増加することが明らかになった。
神谷 信一郎(東京大学),佐藤 隆夫(東京大学)
反転図形,運動情報,NPN3極型波形
臨床でよく用いられている反転図形を応用して、運動情報による格子状刺激を提示して視覚誘発電位を測定した。その結果、反転図形誘発電位に特異的なNPN3極型脳波が現れ、ノイズを加えるに従いその潜時が増大した。このことから、運動情報の違いにより形態が知覚されるということと、図形弁別の困難化がNPN3極型脳波の潜時に影響を与えることが示唆された。
内田 英子(ATR人間情報通信研究所/サンフランシスコ州立大),四倉達夫(ATR知能映像通信研究所 / 成蹊大),山田 寛 (ATR人間情報通信研究所 / 日本大),森島 繁生 (ATR知能映像通信研究所 / 成蹊大),大谷 淳(ATR知能映像通信研究所),赤松 茂(ATR人間情報通信研究所)
顔面表情,自発的表出,意図的表出,動的変化,高速度カメラ
人間の非言語的なコミュニケーションの中でもっとも主要なソースとなる顔面表情に焦点をあて、意図的なコントロールを受けたものと、なんらかの情動喚起に伴い自発的に現れるものとの違い、特に動的な変化の違いを実験的に検討した。具体的には、24名の被験者の顔面表情の変化を次の2条件下で高速度カメラにより撮影した。1つが意図的表出(動作教示)条件、もう一つが自発的表出条件である。意図的表出条件では、Ekman & Friesen (1978) の FACS (Facial Action Coding System) をベースとした顔面動作教示に従って、被験者に6つの基本表情を演じさせた。一方、自発的表出条件では、Gross & Levenson (1995) により標準化された情動喚起映像(喜び、驚き、怒り、悲しみ、嫌悪、恐れ) を提示し、被験者に自然な表情を自発させた。高速度カメラ(250フレーム/秒)で撮影した顔面表情の動的変化(特徴点の変位)を、画像解析ツールを用いて測定した結果、これまでの通常のカメラ(30フレーム/秒)では捕らえられない顔の非線型な変化を捕らえることができた。
和田 有史・野口 薫(日本大学)
時間知覚,S効果,Kappa効果,物理的な力の表象,重みづけモデル
本研究は重みづけモデルを検証した.重みづけモデルとは,S効果(Kappa効果)において”物理的な力の表象”が時間評価に対して重みづけ的に働くと仮定するモデルである.実験の結果は,円に対する重力と,上に牽引する力の表象が時間知覚に影響することを示しており,重みづけモデルを支持した.
續木 大介(日本大学文理学部心理学科),山田寛(日本大学文理学部)
ニューラルネットワーク,表情空間,恒等写像学習,表情認知
表情認知研究において,人間の基本6表情を定量化し,二次元平面・三次元空間上にマッピングする表情空間という概念が提唱されている.本研究では,主に工学の分野で用いられている可塑性を持つ情報処理システムであるニューラルネットワークを検証用ツールとして採用し,表情記述のためのパラメータを入出力とした場合に算出される中間層のアウトプットより,表情空間を求める.
吉嵜 志保(九州大学大学院人間環境学研究科),蒲池みゆき(九州大学大学院人間環境学研究科,ATR,学振),箱田裕司(九州大学大学院人間環境学研究科),赤松茂(ATR)
視線,顔の表情,評定実験
本研究は,画像合成で作成した顔表情刺激を用いて,視線の変化が表情の認知に与える影響について検証した.4種の表情(真顔,幸福,悲しみ,怒り)それぞれに0°,15°,30°,45°の4種の視線を合成した顔を刺激画像とし,その顔から認知される感情の強度について評定実験を行った.被験者は,それぞれの表情に対して「幸福」「悲しみ」「驚き」「怒り」「嫌悪」「恐れ」「軽蔑」の7種類の感情強度を評定した.その結果,視線の変化が表情認知に影響を与えることが示された.
木村 貴彦(大阪大学大学院人間科学研究科),篠原一光,三浦利章(大阪大学人間科学部)
奥行注意特性,実際空間,ラバーバンド特性
被験者と固視点までの奥行距離を複数設定し,奥行注意特性について検討した.Posner et al.(1978)によるCost・Benefitパラダイムを用い,被験者はターゲットが先行手掛かりの前後どちらに出現したかを反応した.Benefitは遠くの固視点程増大し,手掛かり依存性が高まる事を示唆した.また,注意のラバーバンド特性(Miura,1994)とは逆の様相を示した.これは,被験者の動態・静態,固視点数と刺激数の多さによると考えられた.
十河 詠子,和田裕一(東北大学大学院情報科学研究科)
視覚探索,探索勾配,系列探索,視覚的持続,課題依存性
Horowitz & Wolfe (1998) は,系列的視覚探索課題において,探索項目の位置が課題遂行中に変動する場合と固定されている場合とでは,探索勾配に大きな違いがみられないことを報告している.本実験では,このHorowitz & Wolfeの知見に関して,課題の種類(位置判断課題と色判断課題)ならびに探索領域の大きさ(視角約4.2°×4.2°,6°×6°,9.5°×9.5°)を操作して追試を行った結果を報告する.
光藤 宏行(千葉大学大学院自然科学研究科)
透明視,視覚探索,検出課題,図形条件,並列段階
知覚的透明視の成立が視覚探索に影響を及ぼすかどうか検討した.ターゲットとディストラクタは正方形で構成された十字形であり,被験者は正方形の位置関係によって定義されているターゲットの検出課題を行った.ターゲットが透明視の成立する図形条件のとき探索は容易であり,透明視が成立しないように正方形の位置を少しずらすと探索は困難になった.これは透明視が視覚系の並列段階で成立していることを示唆している.
永井 淳一,横澤一彦(東京大学)
負のプライミング,親近性,同定課題,マッチング課題,注意
負のプライミングの大きさは、刺激の親近性が高い方が大きくなるのか、あるいはその逆なのか。2つの先行研究では相反する傾向が報告されているため、本研究では両者の実験課題の相違(同定課題/マッチング課題)、並びに刺激の提示方法の相違に注目し、同一の刺激を使用してこれら2つの要因の影響を検討した。その結果、先行研究における結果の不一致は、2つの要因の組み合わせによって生じていたことが示唆された。
久保寺 俊朗,佐藤 隆夫(東京大学)
masking,facilitation,direction,motion,detection
中心視に提示したガボールパタンの検出閾は、両側に同じガボールパタンを提示することで低下する。このような検出閾の低下は、空間周波数や方位が等しいときに最大となることが知られている。本研究ではガボールパタンの搬送波をドリフトさせて検出閾を測定した結果、この検出閾の低下が運動方向に関しても選択性を示すことを見出した。
海老原 直邦(富山大学人文学部),加藤奏(富山大学大学院人文科学研究科)
記憶イメージ,精神物理学的関数,刺激変化範囲,re-perception
同一刺激系列に対する知覚および記憶イメージの精神物理学的関数型を比較することをとおして,記憶イメージの性質を実験的に検討してきた。知覚的判断による精神物理学的関数式のベキ指数値と記憶による判断で得られたベキ指数値の大きさの関係は,刺激系列の変化範囲(幅)によって異なることが分かった。これまで行なってきた実験の一部を紹介したい。
河原 純一郎(広島大学教育学部)
注意の瞬き(attentional blink),空間スイッチ,課題スイッチ,視覚マスキング
2つの標的を連続して短時間内(100-500ms)に呈示すると,1つめの標的は正確に同定できるにも関わらず,2つめの標的は見落とされやすい(注意の瞬き,attentional blink).従来の研究では,注意の瞬きが起こるには,第2標的への逆向マスキングが不可欠とされてきた.しかし,本研究では,第2標的への逆向マスキングがないときでも,注意の瞬きを起こす要因があることを見いだした.2標的間の空間的あるいは特徴/課題スイッチが標的同定に及ぼす影響について考察する.
多屋 頼典(岡山大学文学部心理学教室)
両眼立体視,反応潜時,時間的ずれ,空間的ずれ,不応期
PuLfrich 現象はこれまで「指標の輝度が両眼で違っていることから反応潜時の違いがもたらされ、それが奥行きに変換される」と説明されてきたが、両眼での指標像の時間的・空間的ずれを操作して検討した結果、運動に反応する系の不応期特性が重要であるらしい結果を得た。
中谷 勝哉(近畿大学教養部)
長さの残効,間隔時間,単純残効/随伴性残効
随伴性残効であるMacColough効果が長期の時間間隔をおいても持続するばかりか,一定の時間間隔をおいた方が増大したという知見を,森和彦氏から昨年の日心でうかがった。そこで試しに,間歇提示による長さの残効という事態で間隔時間を12分までのばしたところ,従来の知見からは予測できないほど大きな残効が得られた。間歇提示による残効は果たして単純残効なのだろうか?
川島尊之(東京大学)・柏野牧夫(NTTコミュニケーション科学基礎研究所)・佐藤隆夫(東京大学)
音源定位,両耳間強度差,Binaural sluggishness,運動音の知覚
Grantham (1984) は両耳間強度差の変化に対する検出感度が低域通過型の特性を持つこと,つまり両耳間強度差の速い変化に対して,より感度が悪化することを示した.しかし彼の測定は両耳系ではなく単耳系の限界を示している可能性が残る.そこで比較可能な条件で単耳・両耳それぞれの振幅変調に対する感度を測定し,直接両者を比較することで測定の妥当性を検討した.その結果Granthamの測定と同様,実際に両耳系が両耳間強度差の変化に対して低域通過型の特性を持つことを確認した.
永山 ルツ子(日本学術振興会,広島大学)
顔認知,表情分析,人物同定,空間周波数
顔認知の研究では,表情分析と人物同定がそれぞれ独立したメカニズムによって処理されていると考えられている.両者の独立性を検討するために,プライミングパラダイムを使って,顔判断に及ぼすプライム刺激の表情や人物および空間周波数情報の影響について調べた.その結果,表情判断には低域周波数情報が,既知性判断(すなわち人物同定)には中間域周波数成分が重要であることがわかり,異なる周波数情報を利用している二つのメカニズムの存在が示唆された.しかし,結果を細かく見てみると,既知性が高い顔ほど表情判断が容易となる傾向が認められた.このことは,表情分析過程と人物同定過程が完全に独立なものではなく,何らかの関連(依存性)を持っている可能性を示唆している.
林 美恵子(生命工学工業技術研究所),小川香織(大阪市立大学文学部)
視覚探索,探索非対称性,視線方向,注意
視線行動は,人間同士が社会的なシグナルを伝達するのに役立つノンバーバル・コミュニケーションの中の一つである.本研究では,目の写真を刺激とした視覚探索課題を用いて,視線方向,すなわち「目が合う」ことがいかに優位に扱われるかを調べた.実験の結果,顔が正面,斜めのいずれの向きでも,観察者と目が合っている目標刺激は,目が合っていない目標刺激よりも速く探索されるという探索非対称性が見いだされた.
藤田 尚文(高知大学教育学部)
知覚された距離,運動によって再生された距離,updating,熟達した運動技能
サッカー選手にターゲットめがけてボールを蹴ってもらうことによって、知覚された距離と運動によって再生された距離の関係について調べた。実験1では16mから32mまでの距離にあるターゲットにボールを蹴らせた。被験者は液晶シャッターつきのゴーグルをつけ、蹴った瞬間にシャッターがおりるようになっている。測定したのは被験者がボールを蹴ることによって再生した距離と、蹴った後にボールの落下地点を推定した距離である。再生距離と推定距離はいずれも提示距離のきれいな一次関数で16mのときに過大評価、32mのときに過小評価となり、両グラフは極めて似ていた。このことから再生距離は提示距離からのシステマティックな逸脱をしているが、被験者は、提示距離と再生距離の関係を正しく認知していたといえる。実験2〜実験4省略。
野澤 晨(聖心女子大学)
Gibsonの順応,Kohler・Wallachの変位理論,Blakemore・Suttonの空間周波数残効
図形形態の順応の問題は最近また取り上げられ初めているが、殆どの研究が空間的interactionの効果が混在する可能性のある残効測定のみを行い、順応過程そのものを測定していないところに問題がある。本研究では3次元運動図形により3次元空間における傾斜面の順応過程の測定を試みたので、その結果を報告したい。
大塚 聡子(東京大学)
周辺視野における運動からの奥行き知覚について検討した.実験では,様々な偏心度に・運動視差量が等しい刺激,・相対運動知覚が等しくなるよう調整した運動視差刺激を提示した.知覚される奥行き量を比較した結果,相対運動情報を奥行きに変換する機能は偏心度とともに減衰することが示唆された.
中村 浩(札幌医科大学心理学教室)
両眼立体視,大きさの恒常性,Muller-Lyer 錯視
両眼立体視している二つの対象の内、一方を奥行き運動をさせると、その対象は手前に来ると小さくなり、奥に行くと大きくなるように見える。これは大きさの恒常性と同様の働きによるものと思われるが、この両眼立体視における大きさの恒常性の特徴について、Muller-Lyer 錯視の一方の線分だけを奥行き運動させ、最も手前に来たときのPSEを求めるという方法によって調べてみた。
村上 郁也(NTTコミュニケーション科学基礎研究所)
運動視,錯視,眼球運動,方向選択性,両眼分離視
動的ランダムノイズへの順応後に静的ランダムノイズを呈示すると、周辺の非順応領域にある静的ランダムノイズがゆらゆら動いて見える (ジター錯視)。順応刺激に運動方向のバイアスを与えると、順応後に生じるジター錯視の方向が影響される。順応時に互いに直交方向のバイアスを与えたふたつの順応刺激を左右眼に分離呈示することによって、認知的手がかりを排除しても、明らかに方向選択性のあるジター錯視が得られることがわかった。
丸谷 和史,佐藤 隆夫(東京大学)
運動視,運動定義運動,逆転運動視,極性
本研究では、以下の2点について検討した。(a)運動定義運動の運動知覚において麦島 & 佐藤 (1998)が主張するような「線」の移動に基づく運動検出が実際に行われているか。(b)周辺視野において運動定義運動に対して、逆転運動知覚が得られるかどうか。 シフト量と偏心度を操作し知覚された運動方向を調べた。その結果、実際に「線」に基づく非極性依存の運動検出から予想される方向への運動が知覚された。一方、周辺視野では逆転運動知覚が得られた。これから運動定義運動においても極性依存の運動検出機構が存在することが示唆された。
本吉 勇,西田眞也(NTTコミュニケーション科学基礎研究所人間情報部)
テクスチャ,方位,要素反転ディスプレイ,時間周波数
要素の方位が90°異なる二枚のテクスチャ画像を交替提示する方法で、テクスチャ内の異質な方位を検出する機構の時間分解能を検討したところ、その時間分解能は、方位自体を符号化する前処理段階の時間分解能よりもむしろ高いことがわかった。
矢島 彩子(聖心女子大学)
crowding effect, central and eccentric vision
幼児(8歳以前)、弱視者の視力測定に見られるcrowding effect(こみあい効果)は、中心視より周辺視で起こるとされている。視覚健常者を用いたLeat , et al.(1999)の研究をもとに、それぞれ異なる方位のスネレンE視標を@中央、その左右、A中央、その上下左右(crowding)、に並んだ刺激を中心視、周辺視でそれぞれ提示し、中央の視標の向きを判断する課題を行った。中央視標と周囲の視標との間隔は4段階設定した。その結果、視標の向きを応答する反応時間から、Aの刺激を周辺視で提示したときに、crowding effectが見られた。視標の並びやディストラクターの要因がどのように影響しているか、crowdingを考える上でさらに検討が必要と考える。
北岡 明佳,佐藤孝行(東京都神経科学総合研究所)
運動視,錯視,Pinna-Brelstaff効果
Pinna-Brelstaff効果は実際の運動とは別の方向に運動が知覚される錯視である。彼らのオリジナル図形以外にもこの効果を生じる刺激配置が多数認められたので、報告する。Pinna-Brelstaff効果とOuchi illusionとの関係および眼球運動との関係も考察する。
東山 篤規(立命館大学)
大きさ,距離,姿勢,視野,正立・倒立
大きさと距離の知覚に身体の方向(正立位,叉のぞき)や視野の方向(正立視,逆さめがねによる上下逆転視)が効果をもつといわれてきたが,過去の実験結果は必ずしも一貫した結果を与えていないので,改めて組織的に実験を行った.実験では,1)正立位・正立視,2)叉のぞき(倒立位・逆転視),3)叉のぞきをしながら逆さめがね(倒立位・正立視),4)正立位・逆転視などの条件を比較した.被験者は,戸外でマグニテュード推定法を用いて,さまざまな大きさの二等辺三角形の高さと距離の推定を行った.