トップページ研究会活動
「中東・イスラーム諸国の民主化」研究班・研究会報告
新谷美央(東京大学大学院・総合文化研究科修士課程)

 概要

  • 日時:2015年6月20日(土) 14:00-18:00
  • 会場:東京大学東洋文化研究所大会議室
報告
  1. 吉岡明子氏(日本エネルギー経済研究所中東研究センター)「イラク・クルディスタン出張報告:「イスラーム国」の進撃とクルドの将来」
  2. 松本弘氏(大東文化大学)「イエメン・ホーシー派の展開」

 報告

吉岡氏の報告では、最初に、「イスラーム国」侵攻後のクルディスタンの状況を、各勢力が支配するエリアや国内外アクターの関係を元に示した。領土を巡る争いとして、シーア派民兵への懸念や、クルド政党間の争いが挙げられた。次に、2015年3月にスレイマニヤでイラク・スレイマニヤ・アメリカン大学(AUIS)が主催したSuleimani Forum 2015への出張(http://www.l.u-tokyo.ac.jp/tokyo-ias/nihu/report/2014/yoshioka/index.htm)について、イラク政府、クルディスタン地域政府や国外のフォーラム参加者による発言や、2014年以降、悪化している治安及び経済状況を報告した。最後に、クルディスタン地域の「独立」として考えられるオプション及びその課題を指摘した。質疑応答では、イラクにおける対PKK観、クルディスタン地域内の第3党や宗教政党の動向、クルド人意識の地域間格差、自治政府に向けられた不満、対サウジアラビア関係等、活発な議論が交わされた。

松本氏の報告では、イエメン北部を拠点とするホーシー派の展開を示して、関連する諸勢力の意図、イエメン政治の態様及び今後の見通しを分析した。ホーシー派が2014年2月以降、首都や諸州に進出しているのは、連邦制導入に向けた自治権・勢力圏の拡大・確保を企図したものと論じた。さらに、決定的対立や一方的勝敗を忌避するイエメン政治の性質により、必要な政治変化が貫徹されないと指摘した。イランの関与やサウジアラビア主導の空爆を含め、すべてのアクターには具体的な目的や計画がないように見えるとして、情勢が好転する要素は見受けられないとまとめた。参加者からは、ホーシー派が戦略的に時期を選んで一連の行動を起こしたように思える旨や、各勢力間の関係が変化していくことはイエメン政治の柔軟性とも評価できる旨コメントがあった。質疑応答では、今後のシナリオ、対ソマリア関係、サウジアラビアの対イエメン政策や国連の対応等について幅広く議論された。
Page top