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生命科学とスピリチュアリティ 生命倫理への新しいアプローチ
趣旨 記事 (2003年12月5日・読売朝刊) スタンフォード大学教授でブッシュ大統領の生命倫理諮問委員会の委員である、ウィリアム・ハールバット教授を招き、2003年10月29日、神田学士会館において、町田宗鳳教授(東京外国語大学)の司会のもと、「生命科学とスピリチュアリティ」をめぐるワークショップが行われた。 まず、ハールバット氏が、現在、世界の生命倫理の焦眉の問題の一つとなっている人の胚の研究利用について、それを慎まなければならない理由について基調講演を行った。 人間生物学(human biology)を専攻するハールバット氏だが神学の学位をもち、障害者の子供を育てて来られた経歴をもっている。現在、イギリスでは人のクローンの胚を作って、きわめて小さい段階ではあれ、人体の形状がおぼろげに浮かび上がってくる(原始線条が形成される)14日目段階の胚を治療目的の研究に利用することを是認している。だが、多くの国ではやがて人となる存在の研究利用に対して反対論が根強い。ブッシュ大統領の生命倫理諮問委員会では、4年間のモラトリアムをもうけ、その間に議論を深めることを提起した。 ハールバット氏は14日目をもって決定的な区切り目とし、それ以前の段階を人ではない、それ以後は人であるとする議論が恣意的なものであるとし、人のいのちは発生の最初の段階から連続的なものであるとする。そして、このように生命の連続性を尊び、研究利用に慎重である立場は、科学的な厳密性を尊ぶことに由来するとともに、人の生命の尊厳を重んじるスピリチュアリティに根ざしたものであるとも論じた。 これを受けて、宗教学や医学を専攻する日本の研究者が、こうした問題を論じる場合にスピリチュアリティがどのように関わってくるのかについて、さまざまな立場から発言を行った。宗教が異なり、文化が異なると生死の考え方も異なってくる。特定の宗教的信仰をもつかどうかによっても判断は変わるかもしれない。人類が共通の倫理的基準を分かちうるかどうかが問われているが、倫理的基準の背景となるかもしれない、スピリチュアリティを想定できるのか、もし想定できないとすれば、どのようにして合意に近付いていくことができるのかが論じられた。フロアからの質問も活発で熱気を帯びた討議となった。 なお、このワークショップは東京外国語大学総合文化研究所と共催で行われた。東京外国語大学の町田宗鳳教授が主宰する「いのちの研究会」のメンバーも多数、参加されたことを付け加えておきたい。 (拠点リーダー・島薗進) HOME > 活動報告(21世紀COE)
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