30  次世代人文学開発センター

1.研究室等の活動の概要
 (1) 研究分野の概要
  1966(昭和41)年度に文学部各専修過程研究室や講座を超えて新しい研究を展開するために文学部附設施設として創設された文化交流研究施設が前身であり、改組されて2005(平成17)年度より現在の名称となった。センターは人文社会系研究科・文学部に所属し、研究を主体とした活動を行なう。したがって、センターにはほかの研究室のように学部学生・大学院生定員はない。次の3部門から構成されている。
 a. 先端構想部門(<文化交流>、<東アジア海域交流>)
  旧文化交流研究施設「基礎理論部門」の活動理念を発展的に受け継ぎ、複数の専門領域にわたる研究、複数の地域文化を対象にする研究、あるいは諸地域間の文化交流の研究など、特に領域横断的で国際的な研究を行ない、かつ、それを公開発信していくことを目的とする。平成17年度よりセンター主任として小佐野重利教授のほか、小島毅准教授が兼坦教員、松山聡助教が専任教員である。また本部門には、小島准教授をリーダーとする文部科学省科学研究費補助金特定領域研究(平成17年度発足)「東アジアの海域交流と日本伝統文化の形成──寧波を焦点とする学際的創生」の拠点がある。教育面では、学部の「文化交流特殊講義」(非常勤講師による)、「東アジア海域交流」および「文化交流演習」を開講するほか、外国人研究者による講演会やシンポジウムを開催して古代ローマ考古遺跡に関する発掘成果や、造形資料の電子化媒体による公開のための研究プロジェクトなどを発信している。センター紀要として、『文化交流研究』第19号(2005)と『文化交流研究』第20号(2007)を刊行した。
 b. 創成部門 (<死生学>)
  平成17年度に島薗進教授(宗教学宗教史学)を兼坦教授として設置された。その前段階は平成14年度に21世紀COE研究拠点プログラムの一つとして採用され、5年間23人の教員が事業推進担当者となって進めてきた「生命の文化・価値をめぐる死生学の構築」のプログラムである。平成19年度に本部門に寄付講座として設置された上廣死生学講座と連携して、死生学の将来的な発展に向けて体制を整えていくのが創成部門(<死生学>)の役割である。教育面では、現在のところ大学院を終えて博士号を取得したPD(ポスドク研究員)を中心に博士課程の大学院生が加わり、学際的な研究推進の訓練を受けるとともに、教員とともに新たな学問分野の構築に携わってきている。死生学講座は学科や専門課程とは異なり、当面は本部門に所属する学生、大学院生はもたない。
 c. 萌芽部門(<演劇学>、<イスラーム地域研究>)
  2006年4月に古井戸秀夫教授を専任教員として開設された、新しい研究部門である。目的は、演劇学・舞踊学の確立である。哲学(美学)・文学(国文学)・歴史学(日本史)を中心に展開されてきた研究の成果を基盤として、演劇学・舞踊学という新しい研究分野をどのようにして構想するか、ということが課題になる。教育面では、大学院人文社会系研究科文化資源学専攻において、講座を持つ。日本の演劇・舞踊は、形態資料・文字資料として、いかなる文化的価値を持つのか、その特色はどこにあるのか、ということを究明する。文学部では、啓蒙的な特殊講義「歌舞伎入門」を開設した。
  本部門には、大学共同利用法人人間文化研究機構と東京大学との研究協力協定により、2006年6月にイスラーム地域研究を総合的に推進するための共同研究拠点として創設された<イスラーム地域研究>(別にイスラーム地域研究センターとも呼ぶ)もある。小松久男教授と大稔哲也准教授を兼坦教員とする。早稲田大学、上智大学、財団法人東洋文庫などに設置された研究拠点とともにイスラーム地域研究ネットワークを形成しつつ、2006-2010年度で「思想と政治の動態:比較と連関」をテーマとする研究を展開する。内外の研究者(センター流動教員として長沢栄治東洋文化研究所教授、臼杵陽日本女子大学教授、新免康中央大学教授、センター客員教員としてティムール・ダダバエフ筑波大学准教授)を受け入れ、共同研究を行うとともに、日本学術振興会特別研究員などの若手研究者を本センター研究員として受け入れる。


2.構成員・専門分野
 (1)部門別構成員
  ○ 先端構想部門
  小佐野重利教授、松山聡助教(文化交流)
  小島毅准教授(東アジア海域交流)
  ○ 創成部門
  島薗進教授(死生学)
  清水哲郎教授、山崎浩司講師(上廣死生学寄付講座)
  ○ 萌芽部門
  古井戸秀夫教授(演劇学)
  小松久男教授、大稔哲也准教授(イスラーム地域研究)

 (2)助教の活動
  松山 聡(1995年4月1日~現在)
  研究領域  先史考古学
  主要業績
  (発掘調査)
  2001-2007年 イタリア共和国カンパーニァ州ソンマ・ヴェスヴィアーナ所在のローマ時代別荘遺跡の発掘調査参加
  (論文・報告等)
   “Process and outline of the excavation in 2001”, 『文化交流研究』第18号(2005),pp.21-22;
   G.F. De Simone, Matsuyama, S, “New light on the “dark side" of Vesuvius”, Herculaneum Archaeology 4, 2006, p.5 ;
   Masanori Aoyagi, Claudia Angelelli, Satoshi Matsuyama: “Nuovi scavi nella “Villa di Augusto” a Somma Vesuviana (NA): campagne 2002-2004”, Estratto dai RENDICONTI della Pontificia Accademia Romana di Archeologia, volume LXXVIII 2005-06, 2007, pp.75 - 109

 (3)2006〜2007年度の外国人教師の活動  該当なし

 (4)2006〜2007年度に受け入れた内地研究員・外国人研究員
   2007年度 研究員 古橋紀宏(先端構想部門・東アジア海域交流)
            佐藤知乃(創成部門・死生学)
     2006〜2007年度 研究員 濱本真実(萌芽部門・イスラーム地域研究)




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