16  イスラム学

1.研究室活動の概要
 イスラム学専修課程は、イスラム地域の思想・文化を研究する独立した学科として、1982年わが国で初めて設置された。一口にイスラム学といってもその対象範囲は広い。地理的には、中近東はもちろん東は中央アジア、インド亜大陸、東南アジア、東アジア、西は北アフリカ、スペインまでにも及び、時代的にはイスラム発生期から現代のイスラム思想の動向までも含んでいる。2008年現在の教員数は、教授1名、准教授1名、助教1名。それぞれ近代より前の古典期イスラム思想文献研究を専門にしているが、それに加え古典研究をもとにした現代イスラム理解を念頭に置きつつ研究をすすめている。上記の広大な研究領域をカバーし、また歴史分野や現代研究との共同研究の可能性を探るために、東南アジア研究、パレスチナ問題、近現代イラン研究、アラビア語の領域に関して非常勤講師の協力を仰いでいる。
 本専修課程に対応する大学院人文社会系研究科の専門分野はアジア文化研究専攻(西アジア・イスラム学)イスラム学専門分野である。大学院では特に同じコースに属する西アジア歴史社会専門分野と連携しつつ、さらには東洋文化研究所ならびに駒場大学院総合文化研究科の教員4名の協力を得て、より包括的なイスラム理解を求め研究・教育活動が行われている。
 教養課程から進学する学生は例年3名前後で、現在の在籍数は6名である。過去の例からみると他大学から学士入学してくるものもかなりの比率で存在する。授業は基本的にアラビア語・ペルシア語の文献読解を通じて、神秘主義・法学・神学・哲学などの学問分野の理解を深めるという方向で行われる。だがその枠組みにとらわれず学生が主体的にイスラム理解の視座を新たに設定し研究することが奨励されており、言語にかぎっても、必ずしもアラビア語・ペルシア語に自らのフィールドを限定する必要はない。また近年、トルコや韓国からの留学生を受け入れ、より広い範囲での教育活動を目指している。
 本専修課程から大学院人文社会系研究科イスラム学専門分野に進む学生は毎年、1、2名程度。それ以外にも他大学から2名ほどが入学する。現在、大学院生は14名在籍している。
 各教員による通常の研究・教育活動のほか、研究室では、イスラム思想文化研究会を運営している。この研究会では、月例会を開催しており、研究室在籍者による発表や、学外から研究者を招いての講演を行っている。

2.構成員(専任教員)・専門分野
     教授 竹下政孝
        専門分野 イスラーム神秘主義

     准教授 柳橋博之
        専門分野 イスラーム法

3.助手・外国人教師などの活動
 (1) 助手
 仁子 寿晴
  在職期間 2004年4月~2007年3月
  研究領域 中世イスラム哲学、中国へのイスラム思想の伝播

 (2) 助教
 青柳 かおる
  在職期間 2007年4月~現在
  研究領域 イスラーム思想史
  主要業績(2007年度)
       「スーフィズムからみた結婚と性の問題」『多民族社会における宗教と文化』第10号、2007年、1–23頁。
       「ガザーリーの「婚姻作法の書」にみられる妻と子供」『駒澤大学佛教学部論集』第38号、2007年、47–62(490–475)頁。
       (翻訳)「イスラームにおける生命倫理」『生命倫理百科事典』丸善, 2007年, 第1巻, 57–65頁(Abdul Aziz Sachedina, “Bioethics in Islam, ” Encyclopedia of Bioethics, 3rd ed., New York, 2004の翻訳)。


4.卒業論文等題目
 (1) 卒業論文題目一覧
  2006年度
   小幡潤平 「『宗教諸学の再興』における禁欲概念」
  2007年度
   大宅千明 「イスラーム銀行の理念的基礎について」
   狩野希望 「イブン・ハズムの虚言論」

 (2) 修士論文題目
  2006年度
   近藤洋平  「信仰者と不信仰者―マートゥリーディー学派における人類の二分化の理解」
       <指導教員>竹下政孝

  2007年度
   矢口直英 「ガレノス医学としての預言者の医学」
       <指導教員>竹下政孝




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