近藤代表者をつとめる/研究助成(遡及一覧)

2005. 7. 2 保守


 

03.国際交流基金 短期招聘プログラム ジョン・モリル教授(ケインブリッジ大学)

 平成15年度(2003)9月7日〜14日に実現

 招聘責任者:近藤和彦    事後報告書(2003年9月)より抜粋

2.被招聘者の滞在中の主な活動

 9月8日(月)午後、東京大学にて British Composite Monarchy 研究会、研究者と懇親。 10日(水)午後、京都市国際交流会館で開催された日英歴史家会議(AJC)にて基調報告 Rethinking Revolution in 17th-Century Britain、討論、懇親。 11日、12日、ひきつづき日英歴史家会議に出席、討論、研究者と懇親。 13日(土)午後、近代史ワークショップ(MHW)にて若手研究者の指導、懇親。

3.事後評価

イ.招聘の有効性          所期の目的は十二分に達成された。イギリス近世史の牽引者、モリル氏が来日するのは初めてである。研究会・学会におけるペーパー報告は2回、ワークショップにおける指導は1回であったが、そのフォーマルな発言ばかりでなく、前後の討論、懇親においても日本のイギリス史および歴史研究者と精力的に話し合い、かつ本人も交換の実をたいへん喜んでいた。とりわけ20代、30代の研究者にあたえた激励効果は計り知れない。

ロ.招聘の発展性          モリル訪日の成果を定着させるために、日英歴史家会議における基調報告は英文プロシーディングズにて公刊し、またこれを東京の研究会報告とあわせて翻訳し(計2本)、岩波書店刊行の『思想』に掲載する予定である(国際交流基金による招聘であることを明記します)。日英間の歴史研究者交流における一つの飛躍点、記念碑となるであろう。

なお、今回のモリル訪日には特筆すべき副産物もある。京都における日英歴史家会議に参加した韓国の歴史家とのあいだで、英韓・日韓の歴史家交流の深化にむけての話し合いが行われたのである。

4.プログラムの評価

 今回の招聘は、時期的にたいへん好都合であり、受け入れ側の準備と被招聘者の積極性とがうまく噛みあって、理想的な招聘プログラムとなった。感謝申しあげます。

 ただし多忙なモリル氏には8日間の滞在が限度であった。今後のことを考えると、短期招聘の場合、期間を7日〜13日の間で調整できるようにするのも一案かもしれない。また、航空料金について(モリル氏のように British Academy 副会長のような要職者の場合)ビジネスクラスという可能性も考慮していただきたい。

 

02.科学研究費・基盤研究A(1)「近世・近代のヨーロッパにおける政治社会」

 平成14年度(2002)より4年間  遂行中

 代表者:近藤和彦 ほか研究分担者19名   研究計画調書(2001年10月)より抜粋

@何をどこまで明らかにするのか

 この研究は、第1に最新のリサーチにもとづく広域ヨーロッパの歴史研究であり、明治以来の外国研究にとって試金石のような意味をもってきたヨーロッパ像を、より具体的なものとして構築しなおす。研究組織に属して常時プロジェクトに参加する者にくわえて、必要に応じて海外の研究者にも助言やセミナーの形で協力をお願いする。第2に、歴史学の方法としても、経済史・社会史・政治史といった細分化をこえて、かつての進歩主義的なグランド・セオリーに支えられた世界史観とは別のものを呈示できるようにする。望むらくは、21世紀のわが政治社会のありかたにも展望をえたい。第3に、この共同研究の成果を学術的な出版においては言うまでもなく、ウェブサイトなどいくつかの方法で、より広く共有できるようにする。

A学術的な特色・独創性・意義

 近現代史において決定的な役割をはたしてきた国民国家あるいは国民経済について、それを批判する観点からの議論が盛んである。近年の歴史学では、一方で広域世界システムの経済史的研究、他方ではローカルな文化や人の結びあう形を明らかにする社会史的研究においてめざましい成果があがってきた。しかし、一方の経済システム論と、他方の政治を除外した社会文化史が無関係に並立する歴史学の情況は不幸である。本研究の特色は、上のような諸成果を学界の共有財産として積極的に継承し、さらに別個に進んできた国制史・思想史の蓄積からも学びつつ、とくに政治社会(political society)のダイナミズムに焦点をあてて、16〜19世紀のヨーロッパおよびその植民地の歴史を考察する共同研究プロジェクトである点に特色がある。欧米留学を経験して近世・近代史の実証研究をになう者を中心に、すでにこのテーマをめぐって非公式の研究会をもち、くりかえし討議し、十分に成算ありと考えられるので、ここに科学研究費・基盤研究A(1)として申請する。

 周知のとおり、16・17世紀ヨーロッパでは、それぞれ各地の歴史に由来する複合的な法制をかかえる近世国家が君主制・貴族制・共和制・混合国制など多様な国制をとりつつ、主権国家システム(という競合の秩序)の樹立をみた。19世紀に近代ヨーロッパの諸国家は、以前にもまして非ヨーロッパを従属させつつ、その政治文化と市民社会を充実させてゆく。隣接学問における公共性をめぐる議論からも学びつつ、近代文明の普遍性と地域の個性とのかかわりをダイナミックにみることは、本研究のもっとも重視する点である。

B関連研究のなかでの位置づけ

 世界システム論および社会文化史の隆盛のなかで、両者を批判しつつ1985年にアメリカの歴史社会学者T・スコッチポルがとなえた「国家の取り戻し」という主張、また1989年にケインブリッジ大学欽定講座教授に就任したP・コリンスンによる「政治を取り戻した歴史学」という主張は、ともに意味深いものであった。むしろ国家(state)ないし政治(politics)という用語をこうした提唱者よりも広い意味で用いることによって、歴史学の展望が開けるであろう。思想史家J・ポーコクおよび国制史家H・ケーニヒスバーガの先駆的な仕事に刺激されて、広域ヨーロッパ政治社会の研究が、いま各国で盛んになりつつあり、その潮流にわたしたちも参加するのだといえる。

 日本についていえば、本研究は川北稔氏を代表とする世界システム研究、二宮宏之・近藤和彦などの社会文化史を継承する位置にある。また国制史および思想史の蓄積は言うにおよばず、1979年に公刊された二宮宏之「フランス絶対王政の統治構造」(現在は『全体をみる眼と歴史家たち』に所収)で展開されたシェーマのインパクトは大きい。研究組織の担当者は、各々こうした観点からの特殊研究において十分に成果をあげてきた。

 

01.三菱財団・人文科学研究「長い18世紀の連合王国における政治社会」

平成1314年度(20012)   助成金額 2,800千円 完了

研究代表者:近藤和彦  協同研究者:勝田俊輔    途中経過報告より → 三菱財団事業報告書2003)

 近世ヨーロッパ史において同君連合ないし連邦制をとった政体は少なくないが、イギリス(イングランド・スコットランド・アイルランド)もその一つであった。イギリスでは17世紀末〜19世紀初(長い18世紀)という期間に、議会王政・積極財政・プロテスタント寛容を基盤に、対外商業進出と対フランス戦争がうちつづいた。戦争、貿易、課税、貧民対策、防犯、交通網・街路の整備、公衆衛生、そして言論・報道の自由といった時代の切迫する課題に、地域の住民各層、中央の政治家・言論人、そして海外の人々はどう取りくんだのか。イギリスには「多国民の国民国家」multi-national nation state としていかなる国民的コンセンサスがありえたのか。

 政治社会という概念を用いることによって国家を相対化し、一定の広がりをもつ集団・共同体が、政治的磁場において権力的・統合的機能をもち、あるいは解放的・自律的機能をおびる局面を考察している。他の研究者の協力も加わり、これは『長い18世紀イギリスの政治社会』(山川出版社)という共著論文集として2002年には結実する予定である。

 

99.科学研究費・基盤研究B(2)「西ヨーロッパにおけるルネサンス像の再検討」

 平成1113年度(19992001)  補助金額 計 8,800千円 完了

研究代表者:近藤和彦

 分担者:樺山紘一、木村靖二、本村凌二、澤田典子、勝田俊輔 (計6名)

  報告書2002年3月)より抜粋

 ルネサンス、すなわちヨーロッパ文明における中世から近世への移行をめぐる研究は、 19世紀に近代史学が確立して以来、歴史家の試金石のような意味をもってきた。現時点の人文学も、ひろく通有する課題である。

 この研究組織においては、ただ中世後期〜近世史の枠内に議論をとどめるのでなく、最新の研究成果をふまえて、ヨーロッパ史におけるルネサンス像の変遷を考察する。第1には地中海古代の専門研究者が、「再生」ないし「回帰」したとされる古典古代の側から照射することによって、ルネサンスを相対化する。第2には、中世・近世ヨーロッパの非ヨーロッパとの交渉のなかでルネサンスを再検討する。ヨーロッパ人による「世界と人間の発見」は、大航海・人文主義・宗教改革をも経験しつつ、後の啓蒙へと連続し、また非ヨーロッパとの関係のしかたも18世紀後半までに一循環する。こうした近世史・近代史の捉えなおしにもつながる研究である。第3に、現代の知の再編に積極的にかかわっている分担研究者によって、この研究は人類史的・文明史的なパースペクティヴからヨーロッパの歴史を再構築してゆくプロジェクトの一環となる。

       

97.日本学術振興会・国際研究集会「第2回日英歴史家会議」

 1997年9月 於 慶応義塾大学   助成金 計2,250千円 完了

 開催責任者:近藤和彦

       この成果については、『史学雑誌』108-2(1999): 60−68 をご覧ください。


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