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UAE及びイラク調査報告
吉岡明子(日本エネルギー経済研究所中東研究センター)

 概要

  • 調査者:吉岡明子(日本エネルギー経済研究所中東研究センター)
  • 日程:2012年5月15日(火)〜25日(金)
  • 用務地:ドバイ(UAE)・エルビル(イラク)

 報告

イスラーム地域研究東京大学拠点「中東・イスラーム諸国の民主化」班の予算を頂いて、ドバイ(UAE)及びエルビル(イラク)に出張する機会を得た。往路に立ち寄ったドバイでは、駐在日本人の方々を中心にイラクの金融、経済、及びエネルギー産業などについてのインタビューを行った。その後、エルビルでは4日間の滞在の間に、クルディスタン地域政府関係者、クルディスタン民主党関係者、学術関係者、ジャーナリスト、企業関係者などへのインタビューを行うことができた他、市内の書店を数件まわって地図や文献の収集を行った。書店を概観した感じでは、クルド語の書籍がメインであるものの、アラビア語の書籍もかなり多く見受けられた。インタビューでは主として、連邦政府とKRGとの関係や域内政治状況、近隣諸国対外関係について、またクルディスタン地域の投資及び貿易状況などについてヒアリングを行った。それらを通じて、今のクルディスタン地域を形成するに至った出発点として、2003年のイラク戦争もさることながら、1991年の旧政権軍撤退による自治区形成の重要性を改めて認識した。

今回は初めてのエルビル訪問であったため、現地の治安状況や生活インフラの状況などについて情報を得ることも出張の目的の一つであった。治安面に関して、市外に通じる道には検問所が多数あること、外国人が雇う民間警備会社の社員が武器を携帯していること、空港への車両侵入を制限していることなど、他国との違いは感じられるものの、市内の治安状況は極めて平穏であった。イラク国内の危険地域から100kmと離れていないという地理的環境を勘案すれば、引き続き十分な注意が必要なことは言うまでもないが、クルディスタン地域政府の治安管理はうまく機能しているという印象を受けた。オープンエアのレストランも夜遅くまで賑わっていた。また、(数年前からということだが)電力供給はほぼ24時間確保されており、携帯電話の電波も問題なく繋がる他、外国人ビジネスマンを対象とした大規模ホテルの建設・開業も相次いでいた。物価の高さは想像以上だったが、外国人にとっても訪問や滞在が可能な状況になってきていると感じられた。

なお、今回のエルビル行きに関しては、ロジのアレンジやインタビュー先とのアポイント等、JICA(国際協力機構)の方々に多大なご支援を頂いた。この場をお借りして厚く感謝を申し上げたい。



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