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ラバト調査報告
中川恵(羽衣国際大学現代社会学部・教授)

 概要

  • 調査者:中川恵(羽衣国際大学現代社会学部・教授)
  • 日程:2013年2月22日(金)~3月3日(日)
  • 用務地:ラバト(モロッコ王国)

 報告

ラバトでは、モロッコ外務省およびUSFP党首、NGO活動家などにインタビューを行い、モロッコの民主化の状況等について詳しく話を伺うことができたほか、市内の書店を数件まわり、文献の収集をおこなった。

モロッコは、いわゆる「アラブの春」において、大きな混乱は見られなかった国である。1999年に現国王が即位して以来、すでに過去の人権侵害への公式謝罪や補償、女性の地位の向上、貧困撲滅などの諸分野で改革をすすめ、2011年3月には、国王は包括的改革として、選挙で選ばれた議会に対する国王自らの権限の縮小、権力分立の強化、個人の自由と人権の尊重、両性の法的な平等、地方分権、文化の多様性の尊重などを盛り込んだ憲法改定を呼び掛け、7月1日の国民投票で圧倒的多数の賛成を得て、新憲法が採択された。

その後の2011年11月の議会選挙では、イスラーム主義政党の公正発展党が勝利し、同党党首が現在の首相をつとめている。それから約1年が経過しており、現在のモロッコの、広い意味での民主化の進捗状況、とりわけ10歳から24歳までの人口が国民の30%を占めており、他のアラブ諸国同様に社会の安定化や民主化の行方に大きく影響する若年層の状況、一連の「アラブの春」において成功例とも評されるモロッコの今後などについて、インタビューによるヒアリングをおこなった。またUSFP党首に対しては、特に2011年の憲法改定内容が実際に実行に移されているかどうかについての評価、現在の政権に対する評価等についてもヒアリングをおこなった。

これまで何度もラバトは訪問しており、街の中心部にある国会議事堂前では、様々な抗議デモが恒常的に行われている。今回も同様に小規模な抗議デモが連日見られた。高学歴失業者による公職要求のデモで、要求の内容は、高学歴に見合う職を公的部門で政府が確保し、就職試験なしで採用するものであった。能力ある若者が失業していることについては、問題であると認識されているものの、公的部門のみでそれをすべて吸収することの困難さ、そして職への適性などを見極めるための試験を実施せずに採用を希望している点については、否定的なコメントが多く見受けられた。

2011年の憲法改正で、アマジグ語(ベルベル語)もアラビア語と並んで国語となったことから、街のなかでアマジグ語での表記も以前より多くなった印象を受けた。


 
 1.国会議事堂前での高学歴失業者による抗議デモ
 
 2.同抗議デモ参加者の旧情報省前の広場での集会
 
 3.アマジグ語による表示
 
 4.ラシュガルUSPF党首へのインタビュー
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