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インドネシアにおける調査報告
調査者:阿久津正幸(イスラーム地域研究東京大学拠点・特任研究員)

 概要

  • 調査者:阿久津正幸
  • 日程:2013年2月24日(日)〜3月4日(月)
  • 用務地:ジャカルタ・ジョグジャカルタ(インドネシア)

 報告

イスラーム的倫理や信仰を出発点に、環境問題や一般教育、地域医療など、現代的課題に取り組む各種組織や団体の聞き取り調査を実施した。

ジャカルタでは、NU(ナフダトゥル・ウラマー)本部を訪問、地域の環境改善運動にNUが積極的な背景として、宗教的・神学的自然観によって最先端の自然科学を摂取するユニークな姿勢を確認できた。こうした点は、環境問題に関する環境省実務官や、初代環境相大臣エミル・サリム氏とのインタビューでも、共通していた。これらを実践する事例として、UIN(国立イスラーム大学)医学部では、地方間格差を解消すべく、伝統的宗教諸学と同時に最先端の医学教育を実施し、文化的かつ技術的にも、地域に貢献できる新しい人材を育成する革新的な試みについて、聞き取り調査を行うことができた。

ジョグジャカルタでは、ムハマディヤ本部と同組織の運営する高校を訪問、ジャカルタの場合のように、現代科学の受容や今日的諸問題への対処に、宗教が効果的な作用を及ぼしていることが確認できた。実際、農畜産業を中心に環境問題に配慮し、伝統的宗教諸学を教育する地方のプサントレンでは、過去のアラブ・イスラーム的遺産とともに科学的精神を引き継いでいるからこそ、厳しい学習環境や学校運営状況にもかかわらず、着実に活動を推進している実態を目にすることができた。

最後に、両市において、上記のような中心的な団体や組織と直接的かつ間接的な連携を維持しつつ、身近な生活環境改善に熱心な住民グループについても、調査を行うことができた。政治的枠組みとは別にして、民主社会の発展に不可欠な各種知識の教育や生活環境などが、イスラームの信仰によって促進されつつある現状は、今後も継続して調査を行うに価することが確認できた。

文責:阿久津正幸、青木武信(千葉大学客員教授)

 
JICAによるインドネシアプロジェクトの一環で建設された、ジャカルタのUIN医学部(阿久津撮影) 
 
ジョグジャカルタ市内、近隣住民の要望で建設された公園、誰が決めたわけでもないが、積極的に清掃活動が行われている(阿久津撮影)
 
 ジャカルタのUN本部訪問の様子(阿久津撮影)
 
 ジョグジャカルタのムハマディヤ本部訪問の様子(青木撮影)

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