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フェルガナ調査報告
河原弥生(イスラーム地域研究東京大学拠点特任研究員)

 概要

  • 調査者:河原弥生(イスラーム地域研究東京大学拠点特任研究員)
  • 日程:2010年3月19〜27日
  • 用務地:ウズベキスタン共和国(タシュケント・フェルガナ盆地)
  • 用務先:ウズベキスタン共和国科学アカデミー東洋学研究所、フェルガナ盆地

 報告

ナウルーズのスマラク作り 雪のナウルーズ
(宿泊ホテルにて)
調査者は、上記の日程でウズベキスタンのタシュケントおよびフェルガナ盆地で史料調査を行った。日程の大半は、フェルガナ盆地での民間所蔵史料の調査に費やした。フェルガナ盆地ではナウルーズの季節にしては珍しく積雪があり、寒さに耐えながらの調査となった。

今回の調査では、4件(計9点の文書および1点の書物)の新たな史料の発見があり、また、これまでの調査において発見しつつも高精度に複写する機会が得られなかった史料1件(31点の文書)を複写することができた。

このうち最も大きな成果は、19世紀前半から半ばにかけてコーカンド近郊のカッタ・ケナガス村でナクシュバンディー教団ムジャッディディーヤの教団活動をしたと考えられているナビーラ・ホージャについて書かれた作品(174葉)である。カッタ・ケナガス村近郊のフェルガナ州バグダード郡パフタ村に居住するナビーラ・ホージャの子孫の一人が所蔵するこの作品には、韻文でナビーラ・ホージャの系譜や偉績が綴られており、これまでに収集されてきたナビーラ・ホージャ関連文書と併せて、コーカンド・ハーン国期のフェルガナ盆地のムジャッディディーヤの活動の解明に役立つ史料となるであろう。

民間所蔵史料調査
この他の新発見史料は、同州同郡カラウルテパ村に所蔵される、ナビーラ・ホージャに関係する系譜書を含む3点の文書、同州同郡チェク・ヒタイ村に所蔵される、アブド・アルカーディル・ギーラーニーの子孫であることが記された1点の系譜書、同州コーカンド市に所蔵される、ナクシュバンディー教団ムジャッディディーヤの免許状1点とカーディリー教団の免許状4点である。いずれも19世紀に書かれたと考えられるもので、当時のフェルガナ盆地の教団活動を知る上で重要な発見と言えるであろう。

これらの史料はスキャナーを用いて精度の高い複写を行うことができたので、今後は史料の解読と研究に励みたい。

この度のフェルガナ盆地における史料調査では、フェルガナ州文化財保護利用管理局歴史考古学研究員のアブドゥルアハトフ氏および上述のナビーラ・ホージャの子孫にあたるマスタノフ氏の多大なるご助力を賜った。また、ナビーラ・ホージャに関する作品をスキャンした際、風雨のために停電しており、夜間であるにもかかわらず所蔵者の隣人宅で発電機を拝借して3時間にわたって作業させていただいた。この場を借りて調査に協力して下さったすべての方に感謝を申し上げたい。
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