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2015年度第2回パレスチナ研究班定例研究会報告
細田和江

 概要

  • 日時:2015年6月27日(土)13:00〜18:00
  • 会場:東京大学本郷キャンパス 東洋文化研究所 3階 大会議室
報告1
  • 報告者:エフラート・ベン=ゼエヴ(Efrat Ben-Ze'ev)(関西学院大学客員講師)
  • 報告タイトル:"Why do maps matter? The British Mandate Cartography of Palestine"
報告2
  • 報告者:鈴木隆洋(同志社大学グローバルスタディーズ研究科博士後期課程)
  • 報告タイトル:"The Bantustan system: Pass Laws, Labour Reservoir, Whiteness"

 報告

エフラート・ベン=ゼエヴ(Efrat Ben-Ze'ev、関西学院大学客員講師)氏による第一の報告は、同氏の著書の内容をもとにしたものである。報告では、ある土地の地図に記載されるもの/されないものによって、ある特定の風景を表象することについて、具体的には英国委任統治政府がパレスチナの土地をどのような意図で地図に示したのかを、地図に記載されている項目などから考察した。また、そうした様々な地図がどう活用されたのかについても言及した。そして、こうした地図を用いることで、シオニズムによるユダヤ人国家の建設が「奇跡的な偶然」によるものではなく用意周到に進められていたことを1930年代に地図作成に関わったユダヤ人からの聞き取りから明らかにした。さらには、アラブの指導者たちが地図を利用するのは1940年代に入ってからで、ユダヤ人勢力に遅れをとったことがその後の歴史を決定づけたのだとも述べた。質疑応答では、ディアスポラのユダヤ人にたいしてパレスチナの魅力を伝えるツールとしての地図利用の有無や、現在のオスロ合意以降の分離政策における地図利用についてなど、各質問者の専門に引きつけた興味深い質問が多数あった。

鈴木隆洋(同志社大学グローバルスタディーズ研究科博士後期課程)氏の報告は、自身の博士論文で扱うイスラエルの経済政策と比較するものとしての南アフリカのバントゥースタン政策に関して、パス法、労働力、白人主義という項目ごとにその内容を歴史的に概観したものであった。

今回の報告は自身も言及した通り、論文の準備段階のものであり、特に論点がはっきり提示されている訳ではなかった。そのため質疑応答では、鈴木氏の博士論文への展望として、イスラエルと南アフリカを比較対象とする意義を問うもの、これをふまえた上での今後の方向性について確認するものが多数あった。
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