トップページ研究会活動
2014年度第3回パレスチナ研究班定例研究会報告
清水雅子(上智大学博士後期課程)/南部真喜子(東京外国語大学博士課程)

 概要

  • 日時:2014年7月23日(水)14:00〜18:00
    会場:東京大学本郷キャンパス東洋文化研究所 3階第一会議室
【報告】
  1. 武田祥英(千葉大学大学院人文社会科学研究科博士後期課程)「パレスチナにおける英国の石油政策の展開について:英帝国の通商・石油政策の要としてのハイファ」
  1. 今野泰三(日本国際ボランティアセンター パレスチナ事業現地代表/大阪市立大学院 都市文化研究センター研究員)「パレスチナ・ガザ地区における国際援助とNGOの機能」

 報告

武田祥英氏報告「パレスチナにおける英国の石油政策の展開について:英帝国の通商・石油政策の要としてのハイファ」

本報告の目的は、委任統治領パレスチナ開発政策の中でも重要な位置を占めた石油資源政策を、第一次世界大戦以前から継続する英国の石油政策との連続性のなかで検討することであった。第1部では、英国の石油政策および委任統治領パレスチナの形成と第二次世界大戦期までの現地開発に関する先行研究とその課題が概観された。続く第2部から第4部では、外務省および海軍省の文書に基づく形で、第一次大戦後まで継続する中東石油利権確保の基本計画策定、第一次大戦と拡大する石油資源利用、ハイファ石油精製所建設計画と石油産業優遇政策がそれぞれ検討された。

質疑応答では、英国の石油政策の動機が商業よりも軍事にあったという解釈を本研究から引き出すことの妥当性、英国パレスチナ統治の石油以外の動機、英国支配下の諸都市の中でのハイファの重要性などが問われた。本報告は、これまで第一次大戦中の政策として捉えられがちであった英国の石油政策の起源を見直す機会として示唆に富むものであった。

文責:清水雅子(上智大学博士後期課程)

今野泰三氏報告「パレスチナ・ガザ地区における国際援助とNGOの機能」

今野報告は、封鎖に伴う人道危機が続くガザ地区での実地調査をもとに、国際援助機関とNGOがいかに機能し、台頭するイスラーム主義運動との関係を構築すべきかといった問題を提起した。調査結果からは、軍事占領に加えハマースとファタハ政府による弾圧、ハマース系受益者を排除しがちな欧米系ドナーからの制圧による「恐怖の文化」、そして利権をめぐる党派間対立による「差別の文化」がうまれつつある現状が提示された。質疑では、1993年オスロ合意前後の対パレスチナ国際援助をめぐる動きの変化や、党派主義の社会的役割、自治政府によるNGO法の制定、また市民社会論の概念を適応することの是非など包括的な議論が交わされた。

文責:南部真喜子(東京外国語大学博士課程)

Page top