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2013年度第2回パレスチナ研究班定例研究会
臼杵陽(日本女子大学)

 概要

  • 日時:2013年5月19日(日)13:00-18:00
  • 会場:東京大学本郷キャンパス・東洋文化研究所 3階大会議室
  • 報告
    1. 南部真喜子(東京外国語大学大学院総合国際学研究科 博士後期課程)「パレスチナの抵抗運動における暴力と非暴力−第一次インティファーダとアル=アクサー・インティファーダの比較から−」
    2. 江崎智絵(防衛大学校人文社会科学群国際関係学科准教授)「オスロ・プロセスの政治過程分析―和平交渉の挫折とそのインパクト」

 報告

オスロ・プロセスの政治過程をスポイラーの要因から分析した江崎智絵報告と二つのインティファーダを暴力と非暴力の観点から比較した南部真喜子報告は広い意味での政治学的な研究の新たな世代の登場を予感させる報告だった。そもそも、日本におけるパレスチナ研究にしろ、イスラエル研究にしろ、政治学的な分析は若干の先行者を除いてこれまで相対的に弱体であった。しかし、江崎報告はスポイラーという分析概念を使ってモデル化にそれなりに成功しており、さまざまな事例への適用の可能性を示唆するものであった。また、南部報告は抵抗運動というコンテクストにおける武装闘争を含む暴力の政治的な意味を再考させてくれる絶好の機会を提供してくれた。インティファーダ研究は若手研究者の間で徐々に盛んになりつつあるが、これまで一テーマ=一研究者という、ある種の「独占」状態が崩れつつあり、いい意味で競争の原理が導入されることになり、パレスチナ研究自体の深化を感じさせる。いずれにせよ、両報告は政治学的なアプローチからの現代パレスチナ研究の最前線を示す刺激的なものであったし、また活発な議論からも多くのことを学ぶことができたことを最後に特に記しておきたい。
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