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2012年度第7回 パレスチナ研究班定例研究会報告 
錦田愛子(東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所)

 概要

  • 日時:2013年3月16日(土)13:00〜18:00、3月17日(日)9:00〜12:00
  • 会場:京都大学 吉田キャンパス本部構内 総合研究2号館4階第1講義室(AA401)
  • 主催:NIHUプログラム・イスラーム地域研究 東京大学拠点(TIAS)
  • 共催:京都大学地域研究統合情報センター(CIAS)「地域研究における情報資源の共有化とネットワーク形成による異分野融合型方法論の構築」研究会(2012年度第3回)

 報告

今回の研究会では、通常のように特定の報告者による研究報告にもとづき質疑を行なうのではなく、CIAS共同研究会としてこれまで実施してきた二年間の成果を踏まえ、異分野融合型の研究方法論をメンバー全員で議論する形式で行われた。

異なる方法論やディシプリンから得られる刺激や、それぞれ方法論の利点・欠点、相互の連携・補完の可能性などについて、記述式で回答する形式のアンケートを事前に参加者に配布し、集計したものを題材に議論を行なった。議論では、各自の専門とこれまで行なってきた研究の経緯に基づき、調査データの共有により異なる専門の研究者が新たな視覚で分析を加えることの可能性や、逆に近似の研究手法の研究者の間で異なる対象地域について行なう研究成果の比較が生み出す成果への期待など、今後の展開への可能性が積極的に提案された。また学問と実社会との関係について、あるべき姿や、実際のあり方がどう理解されるか、といった点についても、様々な意見が交わされた。パレスチナ研究の文脈においては、地域像に関連して、論じられる国家の像が歴史的に大きく変容してきたこと、そうした変化が現実による理念の裏切りに基づくものだったことなどが指摘された。また6月に開催された議論専用会に関連して、日本人としてパレスチナを研究することの意義についても、現地への貢献、日本国内での中東文化についての紹介、など更に広い範囲の内容が議論された。地域研究自体のディシプリンとしてのあり方についても、その来歴についての紹介とともに、研究会参加者各自からの認識が論じられ、欠点を克服するための共同研究のあり方について、積極的に評価する意見が出された。最後に、本研究会の成果を受けて、今後共通で取り組むべき課題の模索がおこなわれ、共通の問題関心として「パレスチナ/イスラエルにおけるコミュニティの変容と国家」について次年度以降、取り上げていくことが合意された。
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