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近年の中東イスラーム諸国では、既存の国家や国際社会の枠内でイスラームの倫理や理想を実現していこうという「穏健イスラーム主義」勢力の活動が目立っています。その代表例として、2002年以来トルコの政権を担い、高い経済成長を実現してきた公正発展党があげられます。また、エジプトにおいて、2011年の革命後の選挙で第一党となった自由公正党も、やはり、「穏健イスラーム主義」政党に分類されています。 こうした「穏健イスラーム主義」勢力は、商店主や中小企業経営者といった中間層を主な支持層とすると言われます。こつこつと働いて財を蓄えてきた中間層は、公正さといった倫理に敏感な人々であり、倫理の源泉としてイスラームを重視し、それ故に、イスラームに根ざした公正な経済と社会の実現を訴える「穏健イスラーム主義」勢力を支持してきたと考えられています。また、イスラームの規範に則った金融、すなわち、イスラーム金融の発展にも貢献してきました。さらに、権威主義体制下での経済的・社会的不公正に対する彼ら中間層の強い不満が、「アラブの春」と呼ばれる政治変動の背景の一つであったと指摘されています。 以上の認識に基づき、本シンポジウムでは、「穏健イスラーム主義」政党の下で高い経済成長を続けるトルコと、革命後の経済再建が急務とされるエジプトを取りあげ、現地出身の研究者・実務家を招いて、「穏健イスラーム主義」とそれを支える中間層の経済活動、ならびに、イスラーム金融について講演して頂き、日本の研究者との討論を行います。そこから、「穏健イスラーム主義」と中東イスラーム諸国の経済が抱える課題と展望を議論していきたいと思います。 |
9:55 開会の辞 野上義二(日本国際問題研究所理事長) 10:00-12:00 第1パネル 中東諸国の経済の現状と課題:エジプト、トルコを中心に 講演:
13:00-16:10(休憩14:30-14:40) 第2パネル 「イスラーム経済」と「穏健イスラーム主義」 講演:
16:30-18:00 第3パネル 「穏健イスラーム主義」の倫理と経済発展と民主化 講演:
18:00-18:15 閉会の辞
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本シンポジウムでは、トルコとエジプト出身で、欧米でも活動する5人の研究者・実務家が報告した。第1パネルでは、トゥールク氏がエジプトの近代化を日本のそれと比較した報告を、バジュク氏が「アラブの春」以降のトルコ経済に関する報告を行った。第2パネルでは、マルズバーン氏が「アラブの春」以降のエジプトにおけるイスラーム金融について、カヤオウル氏がトルコのギュレン運動について報告した。第3パネルでは、オズチュルク氏がトルコのイスラーム的事業家の活動を引きながら、資本主義に代わる新たな経済発展の倫理と制度を模索する現状の報告を行った。討論では、「穏健イスラーム主義」という枠組みの設定そのものの妥当性や、それと「経済発展」「民主化」を並列して議論することの是非についても踏み込んだ議論がなされた。 |