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JCAS次世代ワークショップ「折り重なる境界、揺れ動く境界――比較の中のパレスチナ/イスラエル複合紛争」報告
阿久津正幸(イスラーム地域研究東京大学拠点特任研究員)

 概要

  • 日時:2012年1月21日(土)〜22日(日)
  • 場所:早稲田大学 早稲田キャンパス 7号館414号室
  • 主催:地域研究コンソーシアム 次世代支援プログラム
  • 共催:
    • 北海道大学GCOEプログラム「境界研究の拠点形成」、
    • 人間文化研究機構(NIHU)プログラム「イスラーム地域研究」早稲田大学拠点
    • 人間文化研究機構(NIHU)プログラム「イスラーム地域研究」東京大学拠点
本ワークショップの趣旨
パレスチナ/イスラエル紛争は、何をめぐる紛争なのだろうか。文化的差異や歴史観の違いから生まれたものなのか。それとも、宗教やナショナリズムに原因があるのか。はたまた、植民地主義やオリエンタリズムが本質的な要因なのだろうか。 パレスチナ/イスラエルでは、民族や宗教、国家や軍事、さらには文明論的なものまで、様々な〈境界〉がせめぎ合い、また、重なり合いながら紛争を形作ってきた。本ワークショップでは、ユーゴスラヴィア、チェチェン、中国青島、地中海の移民収容島など、パレスチナ/イスラエル地域と同様の問題をもつ境界地域の研究者を交えながら、パレスチナ/イスラエル紛争の〈境界〉を考える。

 報告

一方の側は、数千年前の神の命令を根拠に、自らの土地の権利と生活を主張する。他方の側も、同様に神の名の下に非合法活動を行う者もいれば、一見するとちっぽけかもしれないが、生活に根ざした公的活動を、信仰に基づいて着実に拡大しつつある私的グループもある。

民族、信仰、国家、そして各国の思惑を巻き込んだ政治……錯綜するパレスチナ問題を考えるにあたって、同じく複雑な紛争や歴史的な背景に根ざした軋轢を抱える他の地域の研究者との協同によって、新たな研究上の視点や方向性を生み出したい。

そんな企図から行われたワークショップだったが、報告者各氏、特に企画立案側の力不足が露呈していたようだ。目に見える明らかな境界、他方で明確になっていない境界が、各人の研究対象のなかにどう絡み合っているのか、紛争にかかわりあるいは苦しむ当事者たちにとっても、それらの複雑な層をなす境界を解きほぐす一歩は何か?

むしろコメンテーター側からいくつかの提案があったものの、それを次のステップへとつなげるべく積極的に取り上げられることは残念ながらなかった。今後、ワークショップの内容を文字化して公表する予定があるために、企画立案側の奮起を期待したい。
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