トップページ研究会活動
第28回中央ユーラシア研究会・特別講演会報告 
河原弥生(イスラーム地域研究東京大学拠点・研究員)

 概要

  • 会場:東京大学本郷キャンパス法文1号館2階212番教室
  • 日時:2011年12月16日(金)16:00〜17:30
  • 講師:Aftandil Erkinov氏(日本学術振興会外国人研究員(東京大学)/ウズベキスタン国立東洋学大学)
  • 演題:The political context of the compilation/production of the Muhabbat-n?ma in early nineteenth-century Kokand[英語・通訳なし]
  • 司会:小松久男氏(東京大学教授)

 報告

アフタンディル・エルキノフ氏は前近代中央アジアの文化史研究を専門とする気鋭の研究者である。日本学術振興会外国人研究員として東京大学に滞在中であったため、今回の特別講演会をお引き受けいただいた。

本講演では、『ムハッバト・ナーマ(愛の書)』と題されるチャガタイ語のアンソロジーが紹介され、分析された。本作品は、19世紀初頭のコーカンド・ハーン国最盛期の君主ウマル・ハーンによって編まれ、オスマン帝国のスルターン・マフムードII世に贈られたもので、現在はイスタンブル大学図書館に所蔵される。作品は、アリーシェール・ナヴァーイー、アミーリー、ルトフィー、フズーリーの詩集から成るという。このうちアミーリーとはウマル・ハーン自身の雅号であり、他の3名はティムール朝期前後の著名なチャガタイ語詩人である。氏は、本作品の構成や、本作品をオスマン帝国皇帝に贈ったウマル・ハーンの行為そのものを、ティムール朝の宮廷を模した彼の熱心な文芸復興活動と関連付け、ウマル・ハーンの文化的”Timurid mannerism”の姿勢として描き出した。

質疑応答では、イスタンブルでの反応、コーカンド・ハーン国におけるペルシア語による文芸活動、他のウズベク・ハーン国における状況などについて質疑応答が交わされた。本講演は世界でも数少ないウズベク三ハーン国時代の文化史に関する最新の研究成果に触れるまたとない機会となった。
Page top