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2011年度第4回(通算第15回)パレスチナ研究班定例研究会報告 
成田矩子(お茶の水女子大学)

 概要

  • 主催:NIHUプログラム・イスラーム地域研究 東京大学拠点(TIAS)
  • 共催:京都大学地域研究統合情報センター(CIAS)地域研究における情報資源の共有化とネットワーク形成による異分野融合型方法論の構築研究会(2011年度第4回)
  • 日時:2011年10月23日(日)13時00分〜17時00分
  • 会場:東京大学本郷キャンパス東洋文化研究所3階大会議室
  1. 西園知宜「パレスチナ・ナショナリズムをめぐる考察――1936年アラブ大反乱を事例に」(仮)
  2. 大岩根安里「ハダッサの抱いたアラブ人観の重層性―1930年代後半からイスラエル建国にかけてのH・ソルドとthe Committee for the Study of Arab-Jewish Relationsの見解を中心に―」

 報告

2011年度第4回(通算第15回)パレスチナ研究班定例研究会では2つの発表がなされた。以下、両氏の発表の内容と会場からの反応、報告者のコメントを挙げる。

前半の西園氏からは「パレスチナ・ナショナリズムをめぐる考察――1936年アラブ大反乱」と題し、これまで1948年以後、とくに抵抗運動期を中心に語られることの多かったパレスチナ・ナショナリズムについて西洋のナショナリズムの枠組みにとらわれぬ視点から、1936年大反乱をひとつの題材としながらその構造を考察する試みについて発表がなされた。
発表に対して会場からは、固定化することのできないパレスチナ・ナショナリズムについて検証する際には、具体的な事象から歴史を追う必要性があり、議論の展開としてはナショナリズムという形のないものに対してどう語ることができるのかという議論を提起するコメント、革命のアラビア語訳がサウラであることから用語を訳する際に抜け落ちる本来の意味について考えさせられるコメントが寄せられた。

後半の大岩根氏の発表は「ハダッサの抱いたアラブ人観の重層性―1930年代後半からイスラエル建国にかけてのH・ソルドとthe Committee for the Study of Arab-Jewish Relationsの見解を中心に―」の題で、アメリカ・女性シオニスト機構=ハダッサとAJR委員会のアラブ人観の相違をあげられ、またアラブ/ユダヤ問題に関するハダッサ内部の見解の多様性について示された。パレスチナで諸事業を行ったハダッサのこれまでの論じられかたはこれまで積極的ではなかったというが、アメリカのシオニストの中でもユダヤ人であり女性であるという二重のマイノリティ状態に置かれたこの組織は周辺的であるが、アメリカのシオニストの中での特徴的な位置づけについて等、ハダッサをめぐる議論は会場でも活発に行われた。

質疑応答では前半・後半ともに「なぜこの研究をするに至ったのか」という研究動機を追及する質問があった。なぜその研究に意義があるのか、また自分の論を展開する上ではなぜそうすることになったかを主張する強さと、自身のこだわりは失えないものだと、今回の発表を聴衆としていながら再認識させられた。
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