12月1日 第8回
題材:坂井洋史(一橋大学助教授)「「解読」という「言説」」
担当:陳 勇(東アジア歴史社会博士課程1年)
小羽田誠治(東アジア歴史社会修士課程1年)
表題のテクストを構成する論文2篇は、いずれも中国の近現代文学史をどのように記述するべきか、個々の作家の文学史上における位置づけをいかに行うべきかという問題について、巴金を例にとって論じたものである。文学史は個々の作家の軌跡をたどる内在的研究と歴史全体の動きから文学を見る外在的研究を有機的に統合することでつくられるが、従来の研究では、政治史・革命史を重視するあまり、前者が後者に隷属する形になりがちであったという。
そして、文学の無力さを常々唱えつつ、後に「文学の肯定」に向かい、両者を矛盾しながら並存させていた巴金を例に挙げ、その「無力さ」の意識は「言語−行為」という二項対立の中での古典的なものに過ぎなかったが、矛盾を「批評者」として直視するという「態度」の確立は現代的意義をもつものであるとする。
また、最近の中国現代文学史で巴金が排除される傾向にあることを見て、「排除」に働く暴力性について考察する。そしてこの暴力性を露出させることが今日の文学研究の一つの目的となっているが、その展望はまだはっきりとは得られていないことを指摘し、「相対化」と「多元性」をもとにテクスト解読の可能性を追求していかなければならないと結ぶ。
当日は、中国文学研究の方法、特に「個」の意識に関する問題が議論され、また文学史の内在的研究と外在的研究の統合について、思想史・歴史の立場と比較した上での検討が行われた。
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