10月20日 第3回
題材:園田茂人(中央大学教授)「中間層の台頭とその国家─社会関係に及ぼすイン パクト」
担当:佐藤 隆(東アジア思想文化修士課程1年)

 トウ(登+おおざと)小平が指導した「改革・開放」政策により、最近目だった台頭をして来たのがいわゆる中間層と呼ぱれる階層である。この中間層は具体的には「私営企業家」「外資系ホワイトカラー」「国有系ホワイトカラー」の三種の階層であり、それぞれ固有の特徴を有して、現在の中国の政治・社会・経済・文化等あらゆる分野に深い影響を及ぼしている。その階層の具体的な考えや行動パターンを上記の三つの群に分け、天津で行った調査をもとに分析をしている。その内容はそれぞれの群の所得、貯蓄額、職業選択の理由、政治理念、学歴、言論等に関する政府の政策に対する満足度等についてのものである。これについて著者は結論のひとつとして「私営企業家が国家との新たな共生関係を取り結ぼうとする姿は、中国の伝統社会における士農工商秩序の中の『商』のイメージを彷彿とさせるからである。そしてこれが西洋社会が経験してきた市民社会のイメージと一致しないことは指摘するまでもない」と断じている。

 担当者は、これに対して、その結論を敷衍して上記に至る理由として、現行の中国社会が、(1)近代資本主義の精神、(2)近代法の精神、(3)近代民主主義の精神の三つが三位一体的(三つのうちどれひとつ欠けても他の二つは成立しえないという意味)に未成熟であるとした。以上のように現代中国のこの階層に対する批判も多く討議の俎上にのぼったが、それは討議参加者の多くが新しい中国を未来に導くこの階層に対していだく期待の大きさの証左ともとれるであろう。
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