12月 2日 濱下武志「現代中国と近代史研究」
<コメント:松沢一成>
中国社会をいかに捉えるかという課題に対して、「合股」という民間経済活動史上長い歴史を持つ共同出資行為に着目し、それが現代中国の底流をなすということを歴史的連続の中で捉えようと試みる。
それぞれの社会には固有の“合理性”、“均衡性”があり、そこに社会及び社会史研究の出発点がある。その“合理性”は、社会を構成する人間集団とその相互関係の中にその特質を見出すことができ、いわば当該社会に固有に通用する価値判断規準の問題である。そうした価値判断規準とは、必ずしも政治史的な区分によって断絶されるものではなく、むしろ状況に応じて前進・後退を繰り返す歴史的連続性を有するものである。このため、近代史とりわけ社会経済史の領域と現代史とは同一の視野のもとで検討する必要があり、現在の社会経済の実情を分析することを通じて近代史をよりいっそう深く認識する契機が得られるのである。
郷鎮企業の活況などの現在の中国社会の状況も、社会経済史的に見れば、中国社会に脈々と歴史的に連続する経済活動の特色を、その内に見出すことができるのである。
<自由討議>
中国社会を理解するための手掛かりとして、「股」という概念が著者自らによって提示され、その理解の様々な可能性について多角的に話し合われた。