1. トコロチャシ跡遺跡群の概要
北海道北見市常呂町にあるトコロチャシ跡遺跡群は、常呂川の河口から約600mさかのぼった地点の、標高約15〜30mの常呂川東岸台地上に拡がる遺跡群である。遺跡群は台地の全面に拡がっているが、台地の北と南には竪穴住居跡などの遺構が集中する地点がある。このうち、台地の北端にあるアイヌのチャシ跡を中心とする地点は「トコロチャシ跡遺跡」、チャシ跡の南西隣にあるオホーツク文化の集落跡は「トコロチャシ跡遺跡オホーツク地点」、台地の南縁に位置する竪穴群は「トコロチャシ南尾根遺跡」と呼ばれてきた。トコロチャシ跡遺跡群は、これらの地点とそれ以外の台地の全面を含めた遺跡群の総称となる。
この遺跡群では、縄文早期からアイヌ文化期に至るまで、各時期の遺構や遺物が確認されている。中でも特徴的なのは、18世紀前半頃に構築されたアイヌ文化期のチャシ跡と、16軒以上の竪穴住居跡が残るオホーツク文化の集落跡である。ほかにも、縄文早期の石刃鏃石器群の遺物集中、縄文中期・後期、続縄文、擦文の各時代の竪穴住居跡、オホーツク文化の土坑墓などが発掘されている。
遺跡群の調査は1960年に東京大学文学部考古学研究室によって開始されている。その後、2009年までの間に、東京大学および北見市(旧・常呂町)による学術調査や事前調査が計25回にわたって行われた。2002年には遺跡群全体が国指定史跡「常呂遺跡」に追加指定されている。
トコロチャシ跡遺跡群 関連文献(年代順)
- 駒井和愛編1964『オホーツク海沿岸・知床半島の遺跡 下巻』東京大学文学部
- 東京大学文学部考古学研究室編1972『常呂』東京大学文学部
- 藤本 強編1976『トコロチャシ南尾根遺跡』常呂町
- 武田 修編1986『トコロチャシ南尾根遺跡−1985年度−』常呂町教育委員会
- 東京大学大学院人文社会系研究科考古学研究室・常呂実習施設編2001『トコロチャシ跡遺跡』東京大学大学院人文社会系研究科
- 宇田川洋・熊木俊朗編2003『居住形態と集落構造から見たオホーツク文化の考古学的研究』東京大学大学院人文社会系研究科附属常呂実習施設
- 武田 修2006『日本の遺跡13 常呂遺跡群』同成社
- 常呂町郷土研究同好会編2011『ところ文庫27 常呂町の遺跡と遺物(2)』常呂町郷土研究同好会
- 東京大学大学院人文社会系研究科考古学研究室・常呂実習施設編2012『トコロチャシ跡遺跡オホーツク地点』東京大学大学院人文社会系研究科
- 東京大学大学院人文社会系研究科考古学研究室・常呂実習施設編2015『トコロチャシ跡遺跡(史跡常呂遺跡群)整備に伴う発掘調査報告書』東京大学大学院人文社会系研究科・北見市教育委員会
- 熊木俊朗2016『ところ文庫32 トコロチャシ跡遺跡群の発掘』常呂町郷土研究同好会
- 熊木俊朗・中村雄紀2019「第一編 先史時代とその文化」『北見市史 上巻』北見市:7-249