21世紀COE研究拠点形成プログラム 生命の文化・価値をめぐる「死生学」の構築
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べてるに学ぶ ―― 《おりていく》生き方

日時2004年11月5日(金)13:00-15:30
場所 東京大学医学部 鉄門講堂
講演者 早坂潔(べてるの家代表)
河崎寛(べてるの家爆発救援隊隊長)
渡辺瑞穂(べてるの家メンバー)
向谷地悦子(べてるの家看護師)
川村敏明(浦河赤十字病院)
向谷地生良(北海道医療大学看護福祉学部 浦河赤十字病院ソーシャルワーカー)
伊藤恵理子(浦河赤十字病院ソーシャルワーカー)
田口ランディ(作家)
市野川容孝(東京大学)
司会上野千鶴子(東京大学)
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べてるが東大にやってきた!COE死生学プロジェクトのおかげで、夢の企画が実りました。  当日はべてる側が総勢7名のオールスターメンバーズ。新築なった医学部鉄門講堂は、立ち見まで出る盛況ぶりで、400名を超える参加者で埋まりました。うち東大関係者は半数ほど。学外者の関心も高かったことがわかります。開催場所のわりに医学部の関係者の参加が少なかったのが残念でしたが。文学部のプロジェクトとは言え、死生学は理科系にもっとアピールしてもよいかもしれません。

 べてるは北海道浦河で、統合失調症の患者さんたちがつくりあげた仕事と暮らしの自助組織。当事者性を大切に、病気と共存していく「おりていく生き方」を実践しています。かたや東大および東大生は「のぼっていく生き方」の実践者と見なされています。東大とべてる、この出会いから、どんな化学反応がおきるか?当日のドキュメントのさわりをお伝えしましょう。

 まず壇上のスピーカーから。当日も「べてる名言集」が次々にとびだしました。
「自分の病気にはさからえない」河崎寛(べてるメンバー)
「分析は終わった。でもそれで?」渡辺瑞穂(べてるメンバー)
「そばにいるだけで安心する関係」早坂潔(べてるメンバー)
「医者には畏れとわきまえが必要。仕切って、やりすぎてはいけない」川村敏明(浦河赤十字病院精神神経科部長)
「ドクターのプライドとつきあうのはたいへん」伊藤恵理子(浦河赤十字病院ソーシャルワーカー)
「やけくそで信じる」向谷地生良(浦河赤十字病院ソーシャルワーカー、北海道医療大学助教授)
「当事者の家族が抵抗勢力になっている」田口ランディ(作家)
「研究とは何があったかをきちっと書き留めること」市野川容孝((東大総合文化研究科助教授) 会場の参加者の反応についても、アンケートから一部、ご紹介しましょう。
「実に異色なシンポ!!!」
「2時間半あっというまでした。」
「こんなに楽しいシンポジウムは初めてでした。」
「歌を聴いて涙が出ました。仕事を休んできたかいがありました。」
「当事者が自分たちのことを公言する姿に感動した。」
「病気は決して悪いことでも不幸なことでもない、と少しでも多くの人が思えるといい。」
「『のぼりたい』と『おりたい』のはざまにいる私。」 

 

会場にはべてるのおっかけをやっているディープな参加者も。そのおひとりから、あとでメイルでご感想をいただきました。 「べてるの講演会を聞くたびに、いつも浦河に行くしかないのか、と向谷地さんのカリスマに無力感を抱いて帰ったものですが、今度のシンポは違いました。自分の足元でべてるをつくろうという気分になったのは初めてです。」

 これは、コーディネーターのわたしがひそかにねらっていたとおりの感想でした。べてるはこんなにもてはやされるのに、なぜ各地に拡がらないのか、抵抗勢力はあるとしたら何なのか…に問いを立てて、食い下がりましたから。  プログラムになかった出演者、べてるの木林美枝子さんのべてる替え歌の熱唱から始まり、ふたたび木林ソングでクロージングを決めた進行は、笑いと感動を呼びました。あらかじめ用意したシナリオは、最初の数分でふっとび、飛び入りあり、徘徊ありのハプニングの連続。その一端は朝日新聞(2004年12月1日付)でも紹介されています。シンポの全貌はいずれ刊行される報告書をおたのしみに。

シンポジウムの様子 シンポジウムの様子 シンポジウムの様子

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