21世紀COE研究拠点形成プログラム 生命の文化・価値をめぐる「死生学」の構築
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ロルフ・ヴェレス教授講演会
希望への超越 −ドイツにおけるスピリチュアルケアの現状−

日時2006年8月29日(火)15:00〜17:30
場所東京大学法文1号館 315教室
発表者ロルフ・ヴェレス教授 (ハイデルベルク大学)
司会島薗進教授* (東京大学)
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*事業推進担当者

 人文社会系研究科・文学部の21COEプログラム「死生学の構築」の主催で、ハイデルベルク大学、ロルフ・ヴェレス教授による講演「希望への超越――ドイツにおけるスピリチュアルケアの現状」が8月29日(火)、文学部法文1号館315教室で行われた。ヴェレス教授は医師、臨床心理士であり、作曲やピアノ演奏やカメラ作品で知られる芸術家でもある。
 多くの末期がん患者のカウンセリングを行い、病院が死に行く患者のケアの体制をどのように整えるかを考察、実践して来たヴェレス教授は、現代医療に必要なスピリチュアルケアを語った。
少しでも長く生きることが、患者の唯一の希望とは限らない。尊厳ある死を迎えること、自らの人生で交わった他者を思い、死への既存の対峙の試みに学ぶことも希望となる。そうした自己を超越する願い、スピリチュアリティの次元に対し、現代医学は心を閉ざしがちだ。「病気と闘う」エートスを持つ医師や科学者は、強く生産的なものを求めることで高い地位を得てきた。しかし、患者は、病気の克服に限らず、静かさ、沈黙、傾聴を求める場合もある。苦しむ者をいたわるシェルターたる病院を、それにふさわしくするにはどうすればよいのか。
 スタッフにこの問題を自覚してもらうため、医師の対応を録画したり、俳優が患者を演じて、スタッフの応対への不満を語る等、患者が普段出来ないフィードバックがなされたり、立場の違う人同士で意見交換も行なわれる。
 ヴェレス教授は主体と客体とを分ける科学の態度を超えて、「共鳴」(resonance)が必要であるとする。意味を見出すには他者が共鳴板となることが役立つ。医師が、患者のいるあらゆる場で、その役割を果たせるかもしれない。人生については患者個々人が専門家だという認識が必要だ。最後に詩が朗読され、ヴェレス教授自身の作曲、即興によるピアノ演奏が行われた。スピリチュアルケア、および、死、生へのさらなる理解の必要性を示しつつ、講演会は無事終了した。


講演会の様子 講演会の様子


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