21世紀COE研究拠点形成プログラム 生命の文化・価値をめぐる「死生学」の構築
HOME活動報告(21世紀COE) > リオーラ・バトニツキ準教授講演会

リオーラ・バトニツキ準教授講演会
"Levinas’s View of Death and Its Relation to Judaism"

日時2006年7月21日(金)17:00〜19:00
場所東京大学法文1号館 113教室
主催DALS(東京大学21世紀COE
「生命の文化・価値をめぐる死生学の構築」)
共催UTCP(東京大学21世紀COE
「共生のための国際哲学交流センター」)
発表者リオーラ・バトニツキ準教授 (プリンストン大学)
コメンテータ小林康夫教授 (東京大学)
司会市川裕教授* (東京大学)
poster
*事業推進担当者

 東京大学21世紀COEプログラム「生命の文化・価値をめぐる死生学の構築」・「共生のための国際哲学交流センター」の共催で、7月21日(金)、本郷キャンパスにてプリンストン大学準教授リオーラ・バトニツキ氏による講演“Levinas’s View of Death and Its Relation to Judaism”が行われた。講演は、死をめぐるレヴィナスの思索を、存在論・キリスト教との対立軸から分析後、ユダヤ教の死の捉え方との類似を探るという、結論を含めた五部構成であった。
 西洋哲学では、死が自らの存在に区切をしるすものとして捉えられてきたが、レヴィナスは、主体自身の死でなく、殺人における死に注目する。死を存在論の問い、即ち存在の無化と捉えると、殺害された人々は無いことになる。生き残った者のみを肯定する、かかる意味付与的な歴史に抗して、レヴィナスはそこからはみ出す「内部性」という次元をきりだす。
 レヴィナスは、感受性と享受の分析を通して、主体を、他者への責任の中で唯一無二と規定される、ほかの何者でもない「私」として描き出した。外部へ負債を負う、唯一無二の単独な「私」が内部性を可能にし、無神論的な自我と名づけられ、倫理の必要条件におかれる。20世紀初頭のユダヤ人神学者F・ローゼンツヴァイクは、無神論的な自我と神との非対称的な応答関係を、啓示と記述したが、レヴィナスは「善」と呼び、啓示を倫理的な理論に読み替えたといえよう。
 レヴィナスの死の見解とユダヤ教の伝統は、繁殖を強調する点で一致を見る。レヴィナス、そして広義のユダヤ教では、死は人間の実存の価値や欠如を決めるのではなく、人生での人間の正しく責任ある位置を確認するものといえないだろうか。講演後、内容の抄訳が読み上げられ、COE「共生の哲学」の責任者、東京大学教授小林康夫氏がコメントし、フロアとの活発な質疑もあった。まさに二つのCOEプログラムにふさわしい内容の講演であった。


講演会の様子 講演会の様子


HOME活動報告 > リオーラ・バトニツキ準教授講演会