21世紀COE研究拠点形成プログラム 生命の文化・価値をめぐる「死生学」の構築
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公開シンポジウム
生死を超えて――ふたたび仏教を問う

日時2006年4月24日(月)18:00〜19:30
場所東京大学駒場キャンパス学際交流ホール
主催UTCP(東京大学21世紀COE
「共生のための国際哲学交流センター」)
DALS(東京大学21世紀COE
「生命の文化・価値をめぐる死生学の構築」)
発表者 末木文美士 (人文社会系研究科教授)
小林康夫 (総合文化研究科教授)
ディスカッサント中島隆博 (総合文化研究科助教授)
竹内整一* (人文社会系研究科教授)
司会門脇俊介 (総合文化研究科教授)
*事業推進担当者
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 人文社会系研究科を中心とした「死生学の構築」(DALS)と、駒場の総合文化研究科を中心とした「共生のための国際哲学交流センター」(UTCP)の二つのCOEの協力が現在進行中である。その第一弾が4月24日、駒場キャンパス学際交流ホールで共催されたシンポジウム「生死を超えて――ふたたび仏教を問う」であった。これは、昨年度UTCPが主催した5回にわたる「現代仏教セミナー」の総まとめで、新入生歓迎も兼ね、新たな展望を示す試みであった。発表者は、現代仏教セミナーの進行役、末木文美士氏(DALS)と小林康夫氏(UTCP)、ディスカッサントは竹内整一氏(DALS)と中島隆博氏(UTCP)、司会は門脇俊介氏(UTCP)が担当した。

 末木氏は、倫理と倫理を超える超・倫理の関係について説明、異なる価値観を調停する倫理の重要性とともに、価値の根拠の理解不可能性から、倫理を超えた問題への展開を論じ、「生死を超える」のではなく「生死へ超える」、生死を、隠蔽ではなく露呈する必要性を説いた。小林氏は、仏教研究者・僧侶の及川真介氏であっても甥の不慮の死を仏教の理論では解決できなかったことを取り上げ、仏教に何ができるか、という問いを立て、倫理に回収されない仏教のプラクシスを考えるべきと論じた。

 これに対し、竹内氏は、末木の倫理と超・倫理の区別を一応は認めつつも、日常の中では両者が一体であることを指摘し、そこから倫理に戻り得るのではないかと論じた。中島氏は、自然死でない死者に対する供養の問題と、超・倫理的な仏教の領域が現実に顕われる戒、特に殺生戒の問題を取り上げ、仏教の可能性を問いかけた。会場からも多くの問題が提起され、熱気のうちに閉会した。今後、二つのCOEがより密接に協力してプロジェクトを推進すると同時に、両研究科間の積極的な協力に向けて資することが期待される。

シンポジウムの様子 シンポジウムの様子 シンポジウムの様子

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