21世紀COE研究拠点形成プログラム 生命の文化・価値をめぐる「死生学」の構築
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広瀬巌氏講演研究会
個人間集計とその制限
(Aggregation and the Individualistic Restriction)

日時2005年4月8日(金)16:00
場所東京大学文学部哲学研究室
講演者 広瀬 巌
(オックスフォード大学フェロー)

・資料

去る2005年4月8日、東京大学文学部哲学研究室にて午後4時より、広瀬巌氏講演研究会・「個人間集計とその制限(Aggregation and the Indivilualistic Restriction) 」が開催された。新学期早々に、さまざまな分野から30人ほどの人々が参加した。広瀬巌氏は、スコットランドのSt Andrews大学で学んだ後、現在は英国Oxford大学University Collegeのフェロウの職に就き、倫理学・正義論を研究している若き日本人研究者である。

さて、広瀬氏は、今回、多数の個人の道徳的な価値を合算することによって道徳的判断の是非を決めるという考え方を「個人間集計」として主題化し、それに対する反論を検討する、という筋道の話をしてくれた。直ちに明らかなように、「個人間集計」の考え方に反対するということは、功利主義を批判することにほかならない。しかし、広瀬氏は、個人間集計批判は功利主義批判になるが、その逆は必ずしも成立しない、と論じる。そうした視点から、ロールズとスキャンロンという現代の二人の倫理学者の議論を取りあげ、丁寧に反駁していき、個人間集計の考え方を道徳的配慮から排除する理由はない、と結論づけた。アップ・トゥー・デイトな論争にコミットした、きわめて刺激的な講演で、質疑の時間にも議論は大いに盛り上がった。

まことに内容の濃い、有意義な時間であった。講演後、出席者の何人かが広瀬氏と夕食をともにして、さらに議論を続けた。同じ日本人として、Oxfordで活躍する広瀬氏に、学生諸君は大いに啓発・刺激されていたように思える。「死生学」の活動がまた一つ深みを増したことが大いに実感された。(一ノ瀬正樹)

シンポジウムの様子 シンポジウムの様子

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